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身勝手だけど、今だけは [前編]

起業家という道を経て、今は二作目の出版を目指して執筆活動に明け暮れる橋本なずなです。

夜のガスト、私はトモくんを呼び出した。
話すことはただ一つ、パートナーができたということ。

「 よっ! 」
『 どうもどうも 』

いつもと変わらない、軽い居心地。
仕事がどうだったとか、今日は何をしていたとか、何気ない会話でジャブを打って、食事を注文したら一息をつく。

「 さぁ…  話があるんやけどさ 」
『 彼氏できた? 』
「 えっ、なんでバレてんの 」
『 わざわざ呼び出して話すことなんか、それくらいしかないやん 』

「 そ、そうか… 」

SNSや共通の友人など、他者から私にパートナーができたと耳に入るのは、それは違うだろうと思った。
だって、私にとってトモくんは “親友” だから。

彼がどんな人で、どんな流れで、交際に至ったかを説明した。

けれど、私は早々に気が付いた。
話の最中、トモくんの人差し指が机の上で小さく貧乏ゆすりをしていることを。
唇を噛んで、私の話に被せ気味に相槌を打っていることも。

「 ・・・って感じです 」

『 うん…  あのー、ごめん、無理やわ。彼氏できたって言われるんやろうなとは思って来たけど、思ったよりキツいわ 』
『 もう暫く会うのやめよう 』

トモくんは怒っていた。
発する言葉にも棘があって、声量も大きくなって、冷静さを欠き取り乱していた。

地獄の空気。地獄のガスト。
運ばれてきた食事は、全く味がしなかった。

『 それにしても早くないか 』『 1ヶ月後とかやったら違った 』
『 これまで僕が費やしてきたものは何やったんやろうと思う 』とも言っていた。

まぁ、そうなるよな。とは思った。
思ったけれど、他方でこうも思った。

「 私たち、友だちじゃなかったの? 」


だって言ってくれたじゃん、見返りは求めてないって。それでも今は頼ってくれたら良いよって。
僕がなずなちゃんにとって、そういう対象でないことは分かってるって。
最終的には僕なんか必要なくなって、他に頼れる人を見つけられたらそれで良いって。

あれは、何だったの?

言葉ではそんな風に言いつつも、本当はいつ男の面を出そうか時期を伺っていたってこと?
母の一件に際して側に居てくれたのは、所詮、私に取り入る為の手段に過ぎなかったってこと?

なんだよ、それ。

結局あなたも “その他大勢” と一緒じゃんか。


「 ていうか、そんなに怒るくらい好きなんやったら、何でもっとちゃんと言わへんの? 」
「 知らんかったよ、そんなに想ってくれてたなんて 」

『 いやいやっ、だって好きじゃなかったら、時間やら労力やら、色んなことを割いて尽くさへんでしょう? 』


———  はぁー、出た出た。男のソレな。
“これだけしてるんだから分かるだろ?” ってヤツ。


わかんねーーーーーよーーーーーーー!!!!!


そういうのを何ていうか知ってっか?

自己満って言うんだよーーーーーーー!!!!!

言葉にしなきゃ伝わんねぇんだよーーー!!!!!


傲慢だ。
同じ言語を用いて、意味にも齟齬のない言葉を並べても、この世の中には伝わらないことなんて山ほどあるというのに。
自分の意思で起こした行動の意図が、相手に伝わっているなんて何故思う?

それに、私は “言葉属性” の人間でしょう。

長けた言語化力を武器に、noteを書き始め、メディアに出演し、出版にまで至った人間だ。
それほど、私は言葉でお金を稼いできた人間だ。

そんな高純度の言葉属性の人間を相手に行動で想いを示そうとは、水タイプのモンスターに、ほのお系の技を繰り出すようなものだ。
< 効果はいまひとつだ… > ってテロップも、そりゃあ出てしまうよ。

そもそも恋愛云々に関わらず、お仕事のプレゼンなどでも “訴えたい相手の心に刺さるものは何か?” と考えるのは基本中の基本ではないのか。

『 それでも俺は、俺らしさを貫くんだゼ…✨』
みたいな、アーティスティックな方針で行くならそれはそれで良いけれど、相手に伝えたいと思うなら相手の立場に立って考えなk・・・(割愛)


「 まぁ、もういいわ。ごめんね。私も悪かったんだと思うし 」
「 トモくんがまた話しても良いかなって思ったら、連絡してよ 」

『 分かった 』

トモくんはお会計を済ませて先に店を出た。
私もイライラとしていて、トモくんの姿を見送ることはしなかった。

もう暫く、会うことは無いだろうと思った。


———  三日後、トモくんからLINEがきた。

< こないだは感情が先走ってしまったけど、冷静になりました。改めて直接会って話したいと思ってるんやけど、時間もらえませんか? >

これは・・・

刺されるかもしれない、と思った。

痴情の縺れで事件に発展するケースは、いつの世も少なくはない。
私はよく勘違いをさせてしまいがちだし、これまでにもその気の無い男性を怒らせてしまった事は何度かあった。
これまでは “たまたま” 刺されなかっただけで、今回は・・・。

< ごめん、とりあえず電話しない? >

私は身の危険を感じて、一先ず電話で話をすることにした。

後編につづく

● 併せて読みたい ●
涙色のレモンサワー [前編]

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