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羊飼いの夜想

崩れたバランスのなかの
特異な均衡
坂道だらけの不均衡でも
居るためには
それくらいでなくちゃ
いけないのかもしれない
見上げると前髪にぶつかる
睫毛が見えた
睫毛の向こうの天井のシミは
スモーキーな歌声のようであった
大きなこえで泣く赤子は
せかいを朝に連れてゆくし
小さなこえで泣く猫は
安心して夢が見られるように
してくれる
大人然としてちっとも泣かないで
いることは大層不均衡で
目が覚めた時から疲れているのは
そのせいかもしれない
と少しだけ思って
苦いコーヒーのなかに
まだ柔らかい土でも探すみたいに
想像を泳がせている

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