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約4,000円のスマートウォッチが解消してくれたADHDの「生きづらさ」

発達障害の人間は、「定型発達」の「他者の支援」がないと非常に「生きづらい」らしい。

「生きづらい」

発達障害に付き物のこの言葉を見ると、私はついイラっとしてしまう(理由は後述する)。
発達障害だからといって、支援を目的に他者と付き合うわけではない。友達は私を助けてくれるが、助けてほしいから友達なのではない。
だが、相変わらず一人だとできないことが多く、他者に迷惑をかけてしまう「生きづらい」私は、お金を払って機械からの支援を得ることにした。

中国製スマートウォッチ 「Xiaomi Mi Band 4」

▲中国では既に後続機「Mi Band 5」が出ているらしい。どちらにせよ安価なので、わざわざ5の輸入や日本販売は待つことはしなくていいと判断。

最近、私は不眠症になったり運動を始めたりと、良くも悪くも身体に変化が多い。主治医への相談のためもろもろ記録をとっておいたほうがいいと思い、スマートウォッチの導入を検討した。
調べてみると中国のXiaomi(シャオミ)が販売しているMi Band 4(日本での正式名は『Miスマートバンド4』らしい) が、安価な割に評判がよさそうだったので、すぐさま購入した。Amazonが公式の代理店になっているので、販売元を吟味するまでもなく安心して購入することができた。

ちなみに購入にあたっては下記のレビューを参考にさせて頂いた。


6/14から記録が始まっているので、一か月と少し使用したことになる。
Mi Band 4 そのもののレビューは探せば沢山出てくるので、本稿では私が個人的にADHDの支援として役立っていると感じる機能を中心に紹介する。

一日中身に着けていても気にならない快適さ

腕時計を自宅にいるときも含め24時間つけっぱなしにしているというのは、Mi Band 4 が初めてである。どちらかというと感覚過敏気味で、可能なら腕時計をつけたくない私が、これを毎日ストレスなく身に着けられている主な理由はいくつか考えられる。

● シリコンバンドが柔らかい。ディスプレイが細く、手首を曲げても手の甲に当たらないので、装着していて不愉快に感じることがほぼ無い

完全防水のため、手洗い、風呂、洗い物をする時など外さなくてよい(手洗いの際は少々ずらして手首を洗う)

● 充電がかなり長持ちする。週に1回程度、入浴の間に充電しておけば問題ない。

特に完全防水という点がこんなに快適であるとは思わなかった。「手洗いのしやすさ」はこのご時世では必須ではないだろうか。

ひとつ不便な点を挙げるとすれば、ディスプレイは常時表示されているわけではなく、時計を見ようとする手の動きを感知しないと表示されない。これが意外と不便なため、時間確認にはあまり使っていない気がする。
それでも、私はこれまでスマホも腕時計も忘れて丸腰で外出してしまう事が何度もあったので、ウェアラブルデバイスがあるだけで時間確認の点は安心とも言えよう。

見失ったスマホを探せる

これが一番助かる機能だった。私は本当によくスマホを見失う。家の中にしかいなくても無くす。スマホ捜索はPC/タブレット/AIスピーカーなどでも可能だが、ウェアラブルデバイスのいいところはある程度の距離なら外でスマホをなくしても使用可能な点だ。

私はよくイベントやテーマパークなどではしゃぎすぎて、スマホがどこにあるのかわからなくなる事がある。
先日も友人とケーキ屋でエキサイトしたあとにスマホを見失なったが、Mi Band 4 の「スマホを探す」機能により、リュックの奥底にまで潜り込んだそれを無事発見したのだった。奴は一瞬にして死角に逃げ込むことがあるので本当に油断できない。

正直、この機能だけでも約4,000円払った価値があると感じる。

過集中を防げる「座りすぎ通知」

発達障害の人間によく起こる「仕事や趣味に熱中しすぎて気が付くと数時間経っている」という事象だが、あまりにも見くびっていると生活リズムが乱れすぎて自律神経がグチャグチャにイカれるので極力防いだほうがいい。我々が過集中で昼ご飯を食べ忘れたりしている間に、自律神経は着実に蝕まれているのである。

Mi Band 4 は1時間連続で座っていると(※)バイブレーション機能で「座りすぎです」とお知らせしてくれる。
このタイミングでトイレに行くようにし、用足し後には水を1杯飲み軽くストレッチするのをルーティーンとすると、忙しいときでも体調を崩すことなく乗り切れることを最近発見した。働きすぎてよく寝込むような人にはおすすめだ。

※ 少し動いても座り続けていると見なされるので、ある程度歩かないと座りすぎ判定されるのかもしれない。

本当はこちらの記事のようにイベントリマインダーで毎日のルーティーンを通知させて規則正しい生活を…と思っているのだが、今のところ多忙すぎて寝る時間等がまちまちなので試していない。

音が苦手な人に快適な振動によるアラーム

子供の頃から「朝に音楽のなるアラームをかけてもステレオが起動した音だけで目覚めて速攻OFFにしてしまう」という性質がある。
目覚めがいいわけではないが、「大きな音によって起こされる」「寝起きに大きな音で音楽を流される」等が本当に苦手で、異様に心拍数が高まり、朝っぱらからどっと疲れてしまう。

数年前から耳に不調があり検査をしたところ、私はどうもかなりの聴覚過敏らしい(その話はまた後日詳細を記す)。そんな私にとって、Mi Band 4 の淡い振動で時間をお知らせしてくれる機能はものすごく有難かった。
振動でふわっと目覚めたあと、アレクサ(※)に今日の日付やゴミの予定を教えてもらいながら徐々に覚醒し、自分の意思で朝っぽいプレイリストをかけるのが毎朝のルーティーンだ。
ただ、アラームでも起きられないような人はこの振動だけで目覚めることは難しいかもしれないので、その点は注意すべき。

※ アレクサはつい最近購入し、照明と連動させた。この件も後日改めて紹介する。

終わりに:発達障害に優しい=みんなに優しい

※ここから下は何故私が「生きづらい」という言葉が嫌いかについて書いたものなので、必要のない人は読まなくで大丈夫です

主治医には「あくまでグレーゾーン」と言われるが、私は典型的ADHDである。しかも気づいたのは30代過ぎてから。それまで「せっかち、そそっかしい、テンションが高すぎる、何事も雑でミスが多い」等、親兄弟や教師から何度も怒られてはくやしい思いをしていた。

そんな私がある程度普通に仕事をできるようになったのは、新卒のときに制作会社と間違えて入ったシステム会社の新人研修で、プログラミングやプロジェクト管理を教わったことがきっかけだ。
文系学部出身の私がその後プログラミングをマスターすることは一切なかったが(途中からweb運用に異動した)、物事を遂行するにあたりスケジュールを立てることがいかに大事かだとか、間違いに気づきやすい流れでタスクをこなすことで大幅にミスを減らすことができることなどを教わった。当時研修を担当してくれたSEの先輩たちには一生ものの生きる智慧を授けてもらったと今でも感謝している。

その後ずっとweb制作やコンテンツ編集の仕事をしているが、その会社で教わったことは「当たり前ではない」と何度も痛感させられた。大半の会社のヒトは、平気で間違いやすいフォーマットの書類を作り、ミスが多いことを自分のせいだとは思わず、その責任を記入者に押し付けてくるのだ。定型発達の人はそういったものを平気で処理できる、または「わかりにくいな」と思っても考えればちゃんとこなせるらしい。

私がいちばん困るのはお役所関連の申請だ。以前、免許更新のために送られてきたハガキの内容が全くわからず、炎天下のなか間違えた場所に向かってしまった事がある。そこの従業員から馬鹿にしたように正しい場所を告げられた、ようやくたどりついた正解のお役所でも、どこに並べばいいのかわからず、何度か役所の従業員に怒られたり呆れられたりして、いっそ逃げ出したいような気分になった。それ以来、お役所へ行くときにはヘルプマークをつけるようにしている。

「私にわからない書類、フロー」が自分の働いている会社で発生した場合は、自ら提案してそれらを修正するようにしている。記入する部分をなるべく選択肢にしたり、記入項目がそのままチェックシートになるよう工夫する。
そうすると、自分以外の従業員のミスも確実に減る。おそらく定型発達の人たちや、うまくやっている隠れ発達の人もうすらぼんやりと「わかりにくいなあ」と思っているらしい。

人の脳は一日に判断を行える数が限られているという説がある。ADHDの自分は、他の人より圧倒的に判断回数が少ないのではという気がする。だがこれは私が「生きづらい」のではなく、みんな本当は「わかりづらい」「めんどくさい」と思っており、それを我慢してやっているだけなのではないだろうか。

ADHD基準で作られた書類やフローは誰にでも優しい。やることが多いリーダーにも、タスクが多すぎて混乱している新人にも、疲れているすべての人にも。だとしたら発達障害が「生きづらい」のではなく、「生きづらい」のはこの社会だし、「生きづらさ」を作っているのはそれを感じない鈍感な人間だ。

先日ケーキ屋でスマホを見失い Mi Band 4 で無事見つけた際、私のADHDを理解してくれている友人に申し訳なくて、俯きながら「いやー毎度毎度騒いですいません…。っていうかスマートウォッチ使わなくても最初から無くすなって話だよねアハハ」と頭を掻いていたが、友人は「ううん! 道具使って楽になるならどんどん使うべきだよー! 今日だってすぐ見つかったし、その時計マジ便利じゃん!? 技術の進歩サイコーだね!」とこれ以上ない前向きな言葉をかけてくれた。私はソーシャルディスタンスを保ちながら、心の中で彼女を抱きしめつつ「そうだね、よかった! 便利は素晴らしい」と前を向けたのだった。

以前、オタク活動をしている際、とても年下で口の悪い人に非オタクアカウントをつきとめられ、裏アカウントで「メンヘラババア乙 今日はおくすりのめた? 生きづらい(笑)かわいそう(笑)」等と悪口を言われていたことがある。その子は養護教諭として働いていた。「支援が必要な子どもたちって、天使のようにかわいい」と言っていた人間が、同じ脳から「だが大人は許されないからな、役立たず」的な言葉をアウトプットする理由が、私にはどうしても理解できなかった。人間の心の機微というやつだろうか? 残念ながら発達障害の私には一生わからないことなので、彼女とも一生わかりあえないだろう。disられたことよりも、彼女のようなタイプの人間が全く理解できない自分の特性が悲しい。

それでも、彼女のような人間も含めて、これからは誰しもがイージーに暮らせる世の中になってほしいものである。

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