文章を書くのが好きなだけの人間です。自閉スペクトラム症です。役者をしたりしています。

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最近の記事

できるできない人間

私は私のことをできるできない人間だと思っている。できるとできないは並列ではなく「できる」が「できない」にかかっている。 21歳でASDの診断がついた私は、子どもの頃から勉強ができた。勉強ができるという理由だけで数多くのことが見逃されてきた。今考えたらASDの特性じゃないかと思うあれやこれやも問題言動も、勉強ができたから許されてきたしそんな疑いがかかることもなかった。つまり、周りからはできる人間だと思われたできない人間なのである。これは別に必ずしも悲観的な意味ではなく、単なる

    • 掃除の哲学

      人生で8年間ラグビーをしていた。そのうち3年間は高校ラグビーだった。ラグビーの試合というのは命懸けで、怪我といっても腕や足の骨折くらいで済めばいいが靭帯を断裂してスポーツができなくなったり半身麻痺が残って生活に支障が出たり最悪の場合には死に至ることもある。実際そのような事例もある。ただこれは試合に限ったことではなくてラグビーというスポーツの特性によるものであるから練習でも同じことなのであるが、こと試合となるとお互いがお互いの命を懸けて闘っているわけなので練習よりも気持ちが入り

      • 春のせい

        一気に暖かくなり春を感じた今日であったが、春というのは難しい季節だ。出会いの季節や別れの季節と言えば綺麗だが、内実そんな簡単に出会いや別れと向き合えるわけでもなく、環境の変化や人間関係の変化に振り回される季節である。 私は環境の変化も初対面の人も大変苦手なので春は好きではない。これはASDの特性なのか私自身の特性なのかよくわからないが、とにかく初めてのモノというのが苦手である。人も場所も音も匂いも味も全てだ。 そんな私にとって春というのはあまりきてほしくない季節であって、別

        • アナログ人間のデジタル化紀行vol.2

          みなさんAdobeというアプリはご存知でしょうか。私は恥ずかしながらついこの前まで存じ上げておりませんでした。 困りごとが発生したのはあるワークショップ前のこと。台本を印刷しようと思ったら135ページもあるではないですか。それもB5縦向き想定の。私の家にある印刷紙はA4ですし、135ページも片面印刷しようものなら稽古中に手が限界を迎えます。両面印刷も手動なので毎回間違えますし、打つ手なしといったところでした。 そう。両面印刷ができないんです。手動で紙を後ろのところに入れ直

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          舞台美術のロマン

          舞台美術が好きです。大がかりなセットから小さなセットまでとにかく広く舞台美術が好きです。 元々場面転換のない舞台が好きで(回転舞台を除く)、芝居とは「ないものをあるように見せる行為」だと思っているので、極論大道具も小道具もいらないと思っています。 ただその中で世界を作るものが舞台美術です。 仕込み現場に足を運べばわかることですが、どんなに複雑な舞台美術も単純な平台や角材、蹴込みからできています。 まず舞台を作るとなれば測定から始まります。チョークラインで線を引いたりパンチ

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          グレープフルーツジュースが飲みたい

          グレープフルーツジュースが飲みたい。ふとそう思うことがある。 子どもの頃からグレープフルーツジュースが好きだった。ラグビーを始めてからも筋肉の疲労回復に良いと知ってよく飲んでいた。 ところが。ある日を境にグレープフルーツジュースを飲めなくなった。 抗うつ剤である。 グレープフルーツをはじめ、夏ミカンやはっさく、きんかんなどの柑橘類は小腸のCYP3A4という酵素の活性を落とし、薬の吸収率を高めすぎてしまうため、私の服用している抗うつ剤とは併用禁忌となっている。レモンや温州みか

          グレープフルーツジュースが飲みたい

          バランス

          心と体のバランスはとても大切です。「やりたい気持ちはあるのに体がついてこない」とか「体は元気なのに気持ちが乗らない」とかそういったことは皆さんもあるんではないでしょうか。私は定期的に訪れます。 それが体の不調によるものだったり心の不調によるものだったりとどちらかの不調によることもありますが、往々にして相互作用的なものがあると考えています。 例えば発熱したとして、その場合は体の不調ですが、ただの発熱であれば心は元気で、「やりたい気持ちはあるのに体がついてこない」状態になりま

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          春の人生設計’24

          もうすぐ春ということで、1年の設計と現時点でのその後の人生設計を考えようと思う。 過去のnoteを読んでいただければ分かる通り、とにかくやりたいことは演劇であり、かつ、人よりも普通に生きることが難しい性質であるので、これはそれを考慮した上での設計図であって、今後変動する可能性は大いにある。(私の性質については詳しくは「針に糸を」を読むことを推奨する。) まず4月からの1年間ですべきことは学業と俳優活動の二つである。 学業については、大前提として4年ないし5年で学部を卒業

          春の人生設計’24

          アナログ人間のデジタル化紀行vol.1

          私は根っからのアナログ人間でして、スマホもパソコンも持っておりますが上手く扱えませんし、そのあたりの電子機器はおろかテレビ番組を録画するとかなんらか設定をするとかそういうところから得意ではありません。基本的になんでも紙に書けばいいと思っているし、紙に文字を書くのも大好きです。そんな私が急速に最近デジタル化しています。誰が喜ぶのかわかりませんが、その様子をシリーズにしてお届けしてみようと思います。 あれは2月中旬のこと。iPadを購入しました。舞台役者をしているのですが、次々

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          針に糸を

          広汎性発達障害。自閉スペクトラム症やASDとも呼ばれます。これは発達障害の一種で、社会性の困難やコミュニケーションの困難、こだわりの強さといった特性を持ち、そのほか感覚過敏や感覚鈍麻、運動機能の低さ等の特徴もあります。睡眠に障害がある場合も多く、二次障害として抑うつやパニック障害等を発症することも多くあります。 21歳になった数日後、広汎性発達障害と診断されました。自分が発達障害だなんて考えたこともなかったので驚きはありました。でもそれ以上の感情はなく、むしろ納得できました

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          4.お芝居の嘘

          お芝居の嘘 お芝居の世界でよく言われることの一つに「お芝居の嘘」という話があります。お芝居自体が作り物の虚構だと言われればそれまでですが、そういうことではなく、お芝居の中でついてはいけない嘘がある、という話です。お芝居の嘘とはざっくり言うと、演者自身が舞台の上に作っている世界を壊す芝居をすることです。描いている時代や国・文化、その役の年齢・身分・性格、存在するはずの大道具小道具などが、一瞬にして崩れてしまい、お客さんに違和感を与えることになります。お芝居の嘘をつくことはお客さ

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          4.お芝居の嘘

          3.歌う

          「歌う」 ミュージカルをミュージカルたらしめるもの、それが歌です。ミュージカルは歌とダンスと芝居で話が進んでいきます。ミュージカルをストレートの芝居として上演するとしたら、歌の歌詞は台詞になります。歌詞=台詞なのです。綺麗なハーモニーも音を外さないことも当然大事だけれど、1番大切なことはその歌も歌詞も物語も知らないお客さん全員に歌詞を伝えることです。ここではそのための練習方法とその意図を書いていこうと思います。

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          2.聞く

          「聞く」 舞台に立ったとき、ついつい自分の動きや台詞に注目しがちですが、実は「聞く」芝居というのが1番大切で1番難しく、「台詞を話していない時の芝居が役者の真価を物語る」、と言う役者さんもいるくらいです。 しかし、実際には聞く演技というのは伝わりにくく、不自然にもなりがちです。ここではその「聞く」芝居のポイントを少し書ければと思います。

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          1.話す

          「話す」 ミュージカルにおいて、お客さんに話や感情を伝える方法は大きく3つ。台詞、歌、ダンスです。そのうち、言葉を介するものが台詞と歌、動きを介するものがダンスです。ここではその台詞について書きます。 まず台詞にも色々あって、会話もあれば語りもあり、特定の聞き手がいる場合もいない場合もあります。しかしながら、どの場合にも共通する聞き手は不特定多数のお客さんです。しかもお客さんはその会場内で唯一、舞台上にいる人間が次に何を喋るのか、この先どのように話が進むのかを知りません。つ

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          人という字

          「人という字は二人の人が支え合ってできています」有名な言葉です。そう言われればそんなふうにも見えます。 が、本当にそうでしょうか。支え合ってるか?明らかに2画目の人の負担が大きくないか?と思うのです。よく見ると1画目の人が2画目の人に寄りかかっているようにも見えますし、むしろそう見えます。 しかし、それが正解なのかもしれません。長い目で見てお互いに支え合っている、つまり、誰かに寄りかかりながら違う誰かに寄りかかられているのではないかと。 そう考えると、私は明らかに1画目側

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          死ぬは怖い?

          死ぬのは怖いですか?私は怖くないです。それが年齢からなのか諦めからなのかはわかりません。 死ぬのが怖くなくなったのは高校2年生の時でした。もう少し詳しく言うなら、人生に「死ぬ」という選択肢が加わったのが高校2年生の時です。 小さい頃から優等生と言われてきました。確かにテストの点数は良かったし人見知りでおとなしい子でした。でも集中力がなかったりずっと指をいじっていたり蛍光灯を嫌がったり言葉で気持ちを伝えるのが苦手だったり変なこだわりがあったり、少し変わった子どもでした。でも、

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