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それはコロナのせいじゃない

昨日5月17日の日経新聞朝刊に興味深い記事が載っていた。

アパレル激震(上)「トップ不在」 レナウン漂流の末路:日本経済新聞

耳目を集めたレナウンの法的整理の解説記事である。コロナの影響を受けて倒産した初めての上場企業のようにニュースで扱われていることもあるようだ。

しかし、この件はコロナのせいではない。コロナはきっかけにすぎなかった。

記事にはこうある。

・民事再生法適用申請をしたのはレナウンではなく子会社で、親会社はすでに主体性を失って漂流していた。
・中興の祖の元会長の遺言で就任した社長は、バブル崩壊による不振により降格になったが、気心のしれた人物を社長に据え、実権を握り続けた。
・業績不振が続く中、M&Aを模索するも交渉の段階になると「他とも交渉したいから」と時間稼ぎをするという危機感のなさ。

そして、中国企業傘下となりさらに主体性のない経営が行われた挙げ句、法的整理となったのだった。

過去のビジネスモデルにしがみついてなんとかなってきた会社だった。新しい会社を立ち上げて成長していく背景には、優れたビジネスモデルと、会社を動かしていくリーダーの両方が存在している。そして、一旦軌道に乗ればその仕組みを「いかにうまく回していくか」というフェイズがやってくる。

それで問題ない時期はいい。しかし、そんな時代は長くは続かない。

うまく回していくことにしか意識が向かず、「昨日の続きは今日、今日の続きは明日」という仕事をしていては、環境変化に適応できず、衰退しかない。レナウンに必要だったのは、今まで確立してきた商習慣や常識を一旦手放し、ゼロからビジネスモデルそのものを再構築する覚悟を持ったリーダーの存在であった。

この倒産はコロナのせいじゃない。リーダー不在が招いた当然の帰結であった。

残念なことだが、今回の劇的な環境変化に耐えられず事業を継続できなくなる企業もあるだろう。しかし、新しい環境だからこそ生まれる新しいビジネスは必ずある。

自社の強み、弱み、リソースを冷静に見極めて、新しく生まれる世界でどうビジネスを組み立てていくのかを考えるリーダーが、今ほど求められる時はないのではないだろうか。

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