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「お客様っ、ここは六本木ではございません!ニューヨーク行きの機内でございます!」

これは私が実際にお客様に若干キレながら叫んだ言葉である。
今までに言ったことないし、多分これからも言わないセリフだろうと思う。

CA3年目の頃、私は当時NY路線を担当していた。3年目といえばまだまだペラッペラの若手で、搭乗しているクルーの中で下から数えて2番目くらいのヒヨッコ。エコノミークラスにそろそろ慣れてきたかという頃の話です。

・心霊現象?機内で奇声が聞こえた

お客様が寝静まった暗い機内、2~3時間ほど機内の見廻り担当だった私は、起きている方に飲み物を配ったり、時折座りながら、「早くNYつかないかなぁ〜」なんて時間を持て余していた。

そんな暗闇に包まれた機内で、突然、黒板をフォークで引っ掻いたような、あの嫌な「キー!」と言う音が急に聞こえた。。。 気がした。

(え、いま何か聞こえたよね、、?)と動揺しながら機内を歩き、音の原因を探すも見付からず。。
人が騒音と感じるのが40〜50デシベルくらいの音の大きさと言われているが、巡航中の機内は常に70~80デシベルくらいで実はかなりうるさい。

すると、もう一度、「kキャい〜ッ!!」という、幼児が叫ぶような奇声が聞こえた。

「いや、絶対聞こえた。」そんな確信を持った私が機内を見回すと、お客様がCAを呼ぶコール音がポーン!と鳴った。

すぐさまそこに駆けつけると、日本人女性のお客様が迷惑そうな顔をしながら「あの、後ろの人が変な声をあげるんです。あと、時々椅子を押して困ります。」と仰ったのだ。
後ろの席を見てみると、そこには中年の小柄な日本人男性がビールを片手に映画を見ていた。

・現行犯で身柄を確保。

すぐに声をかけるのも失礼だと思い、彼のことを注視しながら、次に奇声をあげたら即注意に行こうと思った矢先、「キャッ!」という野太い声を私は聞き逃さなかった。

その中年男性のところへ駆けつけ「お客様、どうされましたか?」と声をかけると、そのオジさまからものすごいお酒の匂いを感じた。もう一度「お客様、大丈夫ですか?」と声をかけると、大声で「。。。あ?!なんか言った??!」とキョトンとしてたけれど、呂律が全く回っていない状態。

完全に酔っ払いだった。

周囲のお客様を驚かせてしまうので、「お客様、お化粧室にご案内しましょうか?」と半ば強制的に客室後方へ案内しようとするも、まず、自力で立てない。立とうとしても足に力が入らない様子だったのだ。

仕方なく小柄なオジさまを私が支え、オジさまの身柄を確保。駆けつけた先輩と共に他のお客様に見えないようにギャレー(CAのキッチンみたいな場所)に連行した。

・オジさまへの事情聴取

ギャレーにつくなり「ここわぁ、d、どこダァ〜!」と叫びながら地面にヘロヘロと座り込んでしまったオジさま。「ここは機内のキッチンです。お客様、こちらをお召し上がりください。」といいながら私が水を差し出すも全く意思疎通が出来ない。

志村けんさんの酔っ払い男のギャグかよ、と思うようなヘロヘロの状態で「おい!ここわぁ、どこダァー!!六本木かーー!!!!」と絶叫。
ちょ、終電前の新橋でもないのに、機内でこんな酔っ払い方する?!と動揺を隠し切れないながらも、

「お客様!ここは、六本木ではございません!ニューヨーク行きの機内でございますー!」とお客様の耳元で大きな声で伝えると、

「お、オレは、家に、帰るゥーー!!!!」とまた絶叫。

「お客様!飛行機はもうニューヨークに向かっているので、おうちには帰れません!」と至極真っ当なことをいうも、初めてこんなヘロンヘロンのおじさんの介抱をすることになり動揺を隠せないヒヨッコの私。

そこへ颯爽と先輩が現れ、手慣れたように酔っ払いに水を半ば強制的に飲ませながら事情聴取を始めた。(と言ってもオジさんは途中で寝落ちしてしまうため1時間くらいの時間を要した)

どうやら酔っ払いオジさまは1人で休暇を使ってニューヨークで野球観戦にいくところだったんだとか。普段飲めないけど、機内でビールを1本(え、1本であんなになる?!)飲んだところこんな状態になったそう。

長くなったので、続きは次の投稿で。

オジさんはそのあとどうなったのか、そして機内で過ごすコツなんかも書き留めています。


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