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続* 「お客様っ、ここは六本木ではございません!ニューヨーク行きの機内でございます!」

エピソード1を先に読んでね。↓

・ズボンがアレで、ビショビショ

その後、オジさまの監視役を頼まれた私は、座席に座れるくらい普通の状態になるまで、ギャレーで水をあげたり、オジさまの介抱することとなった。

「トイレ、、、行く。」と言うオジさまの肩を支え、トイレまで案内した。トイレの鍵は自分で閉められるようだったけど、不安だったからトイレの前で様子を伺うことにするも、5分たっても出てこない。
 胃の内容物をお戻しになられているのか、ウンをイキんでいらっしゃるのか、中の様子が分からないので、「お、お客様、大丈夫ですか?」とドアをトントンと叩くも、返事はない。

(まさか、体調不良で倒れたりしてないよね?!)と焦った。
機内での体調不良者や転倒は80%くらいの割合でトイレで発生するからだ。「お客様、大丈夫ですか?ドアをあけますよ!よろしいですか!!」と聞くも、返事がない。

(やばい、、!)と思った私は、外からバッ!とトイレのドアを開けた。(機内のトイレの扉は安全の観点から外側から開けることができる。コツがあるけど。)

そこには、地面に小さく丸まった、オジさんが座り込んでいた。
ズボンをはいたまま、ビショビショの地面の中で。

私は匂いで気付いた。
そう、オジさまは、トイレにつくなりズボンも下ろさずトイレにもたれ掛かりながら、そのまま放尿して、自分のおしっこプールの中でスヤスヤ寝ていたのだ。

飛行機は水平のように感じるけど、物凄い速さで進んでいるから、少し機首が上を向いている関係で、機内後方が下がり、オジさまが寝ている場所のおしっこプールは水位2センチくらいになっていた。

新聞紙、マジ使える。

ズボンビシャビシャなおじさまは、もちろん着替えなど持っていない。仕方がないのでビジネスクラスのパジャマをオジさまに貸し、着替えてもらった。オジさまは目を離すとすぐに死んだ魚のようにクテンと倒れて寝落ちしてしまうため、ギャレーで少し横になって休んでもらうことに。

その間、私はおしっこプールの清掃と、オジさまのビショビショズボンを乾かしたりした。汚いけど、仕方がない、誰かがするしかない、ヒヨッコの私以外に誰がやる、と心の内で叫びながら。(CAがキラキラな仕事してると思っている人がいたら大間違いよ!)

乾かすコツは、ズボンの中に新聞紙を詰め込み、新聞紙の上に置だけ。新聞紙は水分をとてもよく吸ってくれるし、インクには消臭の効果もある。(先輩の知恵袋。)乾いた機内では、4時間もすれば自然と乾く。

トイレも、まずは吸水シートで水分を吸収させて、新聞紙でとにかくゴシゴシふく。アルコールスプレーをこれでもか!というくらいまき、また新聞紙でゴシゴシふく。それだけで、匂いも気にならなくなり、ピカピカになった。(まぁ20分くらい頑張ったけどね。日系エアラインのトイレの綺麗さはデヴィ夫人お墨付きレベル、らしい。)

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・機内で飲みすぎない方がいいよ、まじで。

何が言いたいかというと、本当コレに尽きる。

コレだけは覚えておいて欲しい。
「機内はサハラ砂漠より過酷なくらい乾燥しているし、機内は富士山5合目と同じ高度である。だから酔いやすい。」

機内の湿度って5~15%くらいしかないの、あのサハラ砂漠ですら湿度30%なのに!ほんとみんな、お水飲まないと、ミイラになるよ。 (機内でお顔のパックをしたことがある人ならわかると思うけど、パックがすぐカラッカラになでしょう。)アルコールを飲むと脱水症状が加速するよ。

そして、上空にいるから機内は与圧(人体が普通に過ごせるよう圧を加えてる)されてるんだけど、それでも富士山5合目と同じ高度。ペットボトルだってパンパンになるし、ポテトチップスの袋もパンパンでしょう。身体の毛細血管も膨張するから血の巡りがよくなって、アルコール分も体中を駆け巡る。

以上のことから、機内は本当に酔いやすいのです。

機内あるあるだが、ツアーとかでヨーロッパを旅する優雅なご高齢の団体のお客様方は、普段地上で飲まないのに、機内では「せっかくだから」と普段飲み慣れていないアルコールを飲み、意識を失いかける人が続出する。
(ご高齢の方の意識が飛ぶ様子を見るのは、ほんとうに怖い。)

・その後のオジさまは、、、

数時間して酔いが冷めたのか、オジさまは自分の服に着替え直し大人しく席に座っていた。元気になったのか、ニューヨーク着陸前の食事サービスの時も、ペロリと全部食べていた。

最後にもう一度様子を確認しようと「お客様、体調はいかがですか」と私が聞きにいくと、「え?はい?、、なにか、、??」と、ほんとうに何事もなかったかのように、あんた誰?と言わんばかりのキョトン顔で言った。いや、多分本当にこの人何も覚えてなかったのかもしれないけど。

オジさまは覚えていない。あなたの履いているズボン乾かしたの、私です。

あなたのおしっこプール、汚掃除したの、私です。

何時間も一緒に過ごし、あなたの安否を心配していたのは、私です。

届かない。この想いは。

彼はお礼も言わず、ニューヨークに着くとサッサと飛行機を降りて行った。

皆様、本当にお酒を飲むのは注意した方がいいですよ。


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