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今日はアロエゼリーが冷えている。本日の思春期#04

絵を習ってみない?絵画教室へ通うのはどうかな?他の習い事を増やしてもいいし。DVDを借りて映画を見てみるのは?気分転換に本屋とかへ行くのもいいかもよ。

年明けから学校を休みがちになった中学二年生の娘に、私はいろいろと提案したと思う。二年生になってから何かと張り切っていたけれど、プツンと糸が切れたように家で過ごす時間が増えた。学校に行かないのはいい。でも「とにかく、やる気が出ないんだ」という娘に、元気を出してほしかった。何かきっかけがあれば、気持ちも動くかなと期待したのだ。

でも、そんなに簡単ではなかった。学校を休んだからって決して楽にはならない。やる気が出ないのは当たり前なのだ。

学校へ行ったり休んだりを繰り返しつつ、でも徐々に欠席の方が続くようになってきたある日。私は給食のおばちゃんをやり終えて、夕方近くに帰宅した。

「ゼリーがどうしても食べたくなって、作ってみた」と娘が言う。冷蔵庫をのぞくと、缶詰のミカンが入った透明のゼリーがガラスの器に作られていた。作り方を調べて、材料を買いに行って作ったのだという。「100円ショップには売ってなかったからドラッグストアまで行った」のだそう。なんと!その行動力たるや!

少し前に、娘が初めて占いをしてもらったことがあった。

タロットカードを触りながら占い師の女性は向かいに座る娘ではなくその隣の私を見て言った。「お母さんはすごく計画的な人だから、それだと娘さんは壊れちゃいます」と。私のことも占ってたのかと驚きながら、あ、そうか、と思った。

確かに私は計画的だ。家にいるのなら、いっそ学校へ行っていたらできないようなことをやればいい。いや、やって欲しい。頭の中で勝手に、学校へ行かないことがマイナスにならないように”計画”していた。娘が何もせずに家にいることが不安だからだ。占い師の言葉にギクリとするように、そんな自分の気持ちが見えた。

見守ることが大切だと頭では分かっている。今は、身体も心も休める時だと。でもなかなかどうして、やっぱりいろいろと提案してしまう。でもそれはただの空回り、いやそれどころか、娘をじわじわと追いつめかねないのだと自分のほっぺをたたきたかった。

そこへ、ゼリーである。

ラップされた器の中のゼリーは、きっちりとした娘らしくちょうどきれいに半分食べた形跡があって「半分残しといたから、あとは食べていいよ」と言われて、遠慮なくいただく。固さもちょうど良い。たっぷり入ったミカンが甘くて美味しかった。レシピに忠実に作ったのだろうなと思わせる、初挑戦にしては上出来なデザートだった。

買ってきたゼラチンがまだ余ってるからと、その数日後にはナタデココ入りのゼリーを作っていた。透き通った小さな四角が詰まったその新作をじっくり味わいながら思う。これは、「何もやる気がしない」と涙をぽろぽろとこぼしていた娘に少しだけ芽生えた、やる気の種だ。大丈夫だよ。誰に言われなくたって、人はやりたいことがあれば勝手に動くんだから。そんなことを言うように、透明のゼリーもナタデココもキラキラとしていた。

今日の冷蔵庫には、アロエ入りのゼリーが冷えていた。ゼリーの中身といえばミカンやパイナップルとかしか思いつかない私には、ナタデココもアロエも新鮮な発想で面白い。次はどんなゼリーを作るんだろう。引き続き、刮目していきたい。


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