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壁を超える3つの方法(夢の学び35)

■想像力の翼を広げること

ある人がこんなことを言っています。

「壁を超える方法には3つある。
1.よじ登る
2.ドングリの上に座る
3.大きな鳥と友だちになる」

「壁」とはもちろん、目の前に立ちはだかった「解決すべき課題」のことでしょう。
その課題を解決する方法には3つある、というわけです。
「1」は、ある意味「体力・気力」勝負で、体にも心にも汗をかいて、ひたすら頑張る、ということでしょう。
「2」は、ドングリが壁を超える高さの巨木に育つまで辛抱強く気長に待つ、ということでしょう。これは、壁のことは忘れ、のんびり構えて、「その時」がくるまで待つ、という意味にとれますが、その裏には「人生の壁を超えるには、その壁が高ければ高いほど、自己成長が必要である」という含意があります。自分の力を蓄えたうえで、「その時」を待つ、という意味でしょう。
つまり、「1」と「2」は、違うようで、実は「時間がかかる(時間をかける)」という意味で似ています。
「3」は、おそらく「想像力」のことを言っているのでしょう。「発想の飛躍」といったことです。確かにこの方法は即効性のある方法ですが、残念ながら、この手の「想像力」を発揮できる人とできない人に大きく分かれるようです。言い換えるなら、想像力を獲得するにも、それなりの努力や時間が必要だ、ということです。大きな鳥と友だちになるのも簡単ではない、ということです。

■「意識レベルが低い」とは?

アインシュタインがこんなことを言っています。

「問題を作り出したのと同じ意識レベルで、問題を解決することはできない」

つまり、「今のあなたの意識レベルを(少しでも)上げない限り、あなたの目の前の問題は解決できない」ということです。では、どうしたら意識レベルを上げられるのでしょう。
それを考えるにあたり、まず意識レベルが低い状態のままであるために、問題がまったく解決できていない例をご紹介しておきます。これは極めて重要な前提です。
LGBT(Q)の問題や、同性同士のパートナーシップ制度といった問題に対して、様々な見解が提示されているようです。中でも物議を醸しているのは、現職議員たちの次のような発言です。
○「同性カップルは非生産的」
○「LGBTは、生物学的に間違っている」
○「(同性愛は)後天的な精神の障害、または依存症」
○「LGBTの差別解消に取り組む人たちは『お花畑的な正義感』の人たち」
○「(LGBTの人たちは)できたら静かに隠して生きていただきたい。その方が美しいし、社会に混乱が起きないと思う」
これらの発言はどれも、自分の意識レベルの限界を超えた現象に出くわした人間が、脳内パニックを起こし、それを隠すために、自分の認識範囲に何とか現象を収めるか、例外として排除することで辻褄を合わせようと涙ぐましい努力をしている、つまり自分の狭苦しく不自由な意識レベルにあえいでいると、私には思えてなりません。

■「防衛機制」は成長を妨げる

心理学的に言うと、これらの発言はどれも「防衛機制」という心的現象としてとらえることができます。「防衛機制」とは、自分の自我(あるいは価値観・世界観)の存続が脅かされる事態に直面したとき、自分の自我を護ろうとして人が発動する心的メカニズムのことです。もちろんこのメカニズムが働いている間は、問題は解決しませんし、人間として成長もしません。この状態が嵩じると「病理」にまで発展する危険性も秘めています。上記のようなものの考え方をするのは勝手ですが、結局は自分に降りかかる火の粉となって返ってくるわけです。
こうしたものの考え方に共通するのは、自分の思考パターンがどれほど「常識」あるいは現行の一般的な「パラダイム(規範)」に依存しているかを知らない人たちが、そうした「常識」や現行の「パラダイム」にうまく収まらない現象に出くわしたとき、常識やパラダイムの方を拡大する必要はなく、現象の方を例外・範疇外として隅に追いやるべきである、という種類の「防衛機制」を働かせている、ということです。その方が、より科学的であり、道徳的であり、美的でさえある、というわけです。もちろん、自分たちが例外・範疇外として隅に追いやったものは、非科学的で、不道徳で、下劣で、醜悪であるとみなさなければ、辻褄が合わなくなります。
この人たちが、こういう思考パターンでいる限り、意識レベルが上がることはあり得ません。
冒頭に挙げた「壁を超える3つの方法」のいずれも試す気はない、という態度です。

■意識レベルを上げる4つのステップ

さて、それではどのようにしたら現状の意識レベルを上げられるのでしょう。
「意識レベルを上げる」とは、まず第一に「現在の自分の意識状態の外に出る」ということです。自分が依存している「常識」や「パラダイム」を直ちに手放すことができるなら、即座に一段階上のものの考え方を獲得することができるかもしれません。しかし、人間なかなかそうはいかないようです。
「旧い考えを手放して、新しい考えを獲得する」、あるいは「旧い自分を手放して、新しい自分を獲得する」、あるいは「旧いアイデンティティを手放して、新しいアイデンティティを獲得する」(他にも様々な表現が可能ですが)には、ある共通のプロセスが必要なようです。
ケン・ウィルバーは、このプロセスを次のような4つのステップに分けて説明しています。(参考:「インテグラル理論を体感する」コスモス・ライブラリー)

1.Unearthing(掘り起こす、明るみに出す)
2.Noting(注意を向ける)
3.Videotaping(録画する)
4.Letting go(去るに任せる、手放す)

もちろん、こうしたプロセスは、LGBTQのような社会問題を、他人事ではなく自分事、他人のものの考え方の問題ではなく、自分のものの考え方の問題であると認識するところからしかスタートしません。「他人が変われば問題は解決する。自分が変わる必要はない」と思っているうちは、人は壁をよじ登りもしないし、ドングリの上に座る気も起きないし、大きな鳥と友だちになるつもりもない、ということです。この点は重要です。
「問題を自分事としてとらえる」ということは、言い換えると「自分の意識の在り方を、自分の観察の対象にする」ということです。「自分の意識状態の外に出る」と言ってもいいでしょう。もっと簡単に言うなら「自分で自分を観る」ということです。もちろん、物理的に自分を客観的な観察対象にすることはできません(自分のクローンを作るか、あるいは年中ビデオカメラを持ち歩いて、自分の一挙一動を録画して観るなら別ですが)。したがって、上記の4つのステップは、瞑想、観想、内観といった方法によって行う作業になります。つまり、自分自身に対して想像力を働かせる、ということです。ところが、これがすんなりできる人とできない人がいるようです。ある意味これは、自己成長・自己変革のための「覚悟を決めた修行」ととらえた方がいいかもしれません。
いずれにしろ、その覚悟を決めない限り、人は壁を超えることも発想を飛躍させることも意識レベルを上げることもできない(現状のまま成長できない)ということです。こうした態度は、科学的で、道徳的で、美的でしょうか。
こういう人は、心の中でこう言っているのかもしれません。
「自分の無意識の中身を掘り起こす必要などない。それを明るみに出し、注意を向け、それをよく記憶にとどめ、さらにそれを手放す必要がどこにあるのか。結果的に手放すなら、それをわざわざ見詰めて意識にとどめる必要などないではないか」
こうした考えは、物事を自分事としてとらえる力の欠如、成長し続けようとする意志の欠如、そして想像力の欠如です。こういう人は、自分の言動で知らず知らずのうちに人を傷つけるか、あるいは「病理化」というかたちで自分で自分を傷つけるかのどちらかになります。

■ドリームワークの4つのステップ

最初に戻ります。
もうお気づきかもしれませんが、壁を超えるための3つの方法とは、まったく異なる方法のように見えて、実は同じ一つの方法の異なる3つの側面を表しているのです。
1.よじ登る(意識的に努力する)
2.ドングリの上に座る(時間をかけて辛抱強く取り組む、自己成長する)
3.大きな鳥と友だちになる(想像力を働かせる)

確かに、意識して努力し、時間をかけて物事に辛抱強く取り組む人はそれなりにいるでしょう。それでも「想像力を働かせるのは苦手」という人がいるようです。「想像力の開発」というテーマはなかなか学校で教えてくれない、という事情もあるかもしれません。
ウィルバーが指摘している上記の4つのステップは、すんなり実行できる人とできない人に分かれるかもしれません。
では、もっと親しみやすく、誰でも今日から取り組める問題解決法、自己成長法、意識のレベルアップ法、想像力の開発法はあるでしょうか。
私がお薦めするのは「ドリームワーク(夢の意味の読み解き)」です。
ドリームワークのプロセスを、ウィルバーが指摘する4つのステップになぞらえて説明するなら、こうなります。

1.Unearthing(掘り起こす、明るみに出す)→みた夢を記憶し、記録に残す。
2.Noting(注意を向ける)→記憶(記録)した夢に思いを馳せる。
3.Videotaping(録画する)→夢をドリームワークし、意味を読み解く(夢を客体化する)。
4.Letting go(去るに任せる、手放す)→夢のメッセージに従って行動し、その結果にこだわらず、次の夢に対してステップ1に戻る。

ドリームワークで重要な点は、まず夢をみること自体が人間の想像力のなせる業である、という点です。夢の想像性(創造性)においては、誰しもがオリジナリティ豊かな作家であり芸術家である、ということです。次に、夢の意味を読み解く作業は、理性・論理性、想像力、象徴を読み取る力、具象力・抽象力など、様々な「人間力」を鍛える効果がある、ということです。
また、自分がみた夢に全幅の信頼を寄せることで自己信頼が養われ、夢のメッセージを実行に移すことで行動力や積極性も身につく、ということです。

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