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父と娘


「娘の初恋の相手は、父親だ」という話も聞く。

私の場合は、まさにそうだ。

私は完全な「パパっ娘」だったと思う。

私達はとにかく仲が良かった。

母も「お父さんにとって、Mは小さな恋人のようだ。」とよく言っていた。

ケンカも幾度か大きいのをしたが、なぜか父とはあとくされなく、仲直りができたし、お互いに根に持つことも無かった。(母とは確執が残ったが。)

何となく同類、というか、お互いの気持ちが分かり合う感じだったから、余計に父も私が可愛かったんだと思う。

私にとって私の父は、父親であり、先輩であり、ちょっと悪いことをする友達であり、ちょっと手のかかる可愛い弟でもあった。

そして、父の存在は後々の私の恋愛に、かなり大きな影響を与えていく。


父との思い出


父は私を、赤ちゃんの頃から小脇に抱えて、いろんなところに連れて行っていた。

多分、ちょっとぬいぐるみというかペット感覚だったんだと思う。(苦笑)

父の職場に連れて行かれることも多く、子供心にいろんな大人がおべっかのような感じできゃっきゃしながら「可愛い子だね~」と言っているのを、すごく冷静な目で「この人の目は、本当にそうは思っていないんだろうなぁ・・・」と眺めていたのが記憶にある。(多分、2歳頃)

そして、もっと大きくなってきても、相変わらず父と二人で出かけることが多かった。

母は、手のかかる兄弟の世話でなにかと忙しかったり体調がすぐれなかったりしたので、気ままに動きたい父とあぶれた私が何となく一緒に行動、というのが多かった。

父はどちらかと言うとのびのびした感じの人だった。

自分のやりたいことは必ず実行するというタイプで、今思うと私もなんとなく似ているのかもしれない。

父と私は、「母に内緒」ということも多く二人で共有した。

母があまり好きじゃないタイプの父のお友達のところに、私を連れて行ったりしたし、仕事で困った場面にも、なぜか私を連れて行ったこともあった。

私が場を和ますのを期待されていると感じた時には、子供らしく大人を和ますように意識して振る舞っていたのも覚えている。

パーラーでフルーツパフェを分け合ったり(父に6割取られる)、父のちょっとした趣味の無駄遣いに付き合ったり。

・・・そして、それらの父との秘密は今も守られている。

大学受験の際にちょっと遠い大学を受けることにした時には、「本当に行っちゃうのか?やっぱりもっと近所の大学じゃダメなのか?」と何度も言われた。

結局、私の意思も尊重してくれて、大学受験の時には2泊3日で私に付き合ってくれて、二人での小旅行になった。

試験が全部終わった夜に、父が「祝杯だ!」と、おしゃれなレストランでワインで乾杯した。(私は中学生から、実は家でも晩酌に付き合っていた。苦笑)

それが私の父との、最後の思い出になった。


恋愛における父の影響


大学に入るとすぐに、父が事故でなくなった。

被害者側だった。

加害者の家族の方が、お葬式に泣きながら縋ってきたが、私は何も言わず厳しい目で見ていたらしい。

正直、その頃の記憶はあまりない。

あの父がもういない…ということで、かなり投げやりに暮らしていた。

そして、そんなところからうっかり、年上の彼氏と「多少」問題のある恋愛を繰り返してしまうことになった。

父はよく、「お前が結婚する時は駆け落ちしてくれ。結婚式とか父への手紙とか、俺には無理だ。でも孫は見せに来てくれ。できれば近所に住んでくれ。時々一緒に今まで通り遊べるように。」と言っていた。(駆け落ちの意味が分からない。すごい都合よすぎ。笑)

父にそんなことを常々言われていたから、「ああ、私はいつか結婚するのか」ぐらいの認識だった。

父が亡くなった後は、私の中で結婚へのプライオリティがさらに下がったので、結婚する予定さえなくなってしまった。

が、予期せぬ人生のいたずらで、私は夫と出会い結婚。

恋に落ちている間は気付かなかったが、後からよく考えると、趣味やら様子やら好みやら、夫はすごく父と合うタイプだ。

父が好きだったことや父が理想としていたことを実現しているのが、夫だ。

父と仲が良かった叔父が「お父さんが生きてたら、Mちゃんのお婿さんのこと、ものすごく喜んだと思うよ。ほんとに、お父さんの好きなタイプの人を見つけたんだね。(笑)」と言われた時に、初めて気が付いた。

私は無意識のうちでも、ずっと父を意識していたんだということに。


子供にとって父親の存在は特別か?


・・・こう書くと、「娘には父親がいたほうがいいのか?」ということになるが、そうとも思わない。

とある知人は「自分の父のことを憎んでいる」という人もいたし、「父がいたから、私は早く自立しなければならなかった。」という人もいる。自立した後は、50代になっても没交渉だったり・・・人それぞれだ。

私にとってはあの「私の父」がいてくれて良かったと思うが、もしそうじゃない父親がいたとしたら、多分また違ったと思う。

ちなみに私の兄弟にとっての父の存在は、ちょっと薄め。

なぜなら、私と父は関係が濃すぎた。

だから、それぞれのケースバイケースなんだと思う


アラフィフになっても、叶うことなら今も父に会いたい。

昔のように馬鹿なような真面目なような話を、ドライブしながら話したい。

そして私の夫にも会わせたい。

言葉が違っても、二人で話が盛り上がるのが目に浮かぶ。

父はきっと、はしゃぐだろうな。

孫は無理だったけど、この夫と結婚しただけで十分、親孝行ができた気がする。


もし、娘さんがいるお父さんがいたら、「娘に、こんな風に思われることもあるんだ」という視点で読んでもらえたら嬉しい。

そして、ちょっと私と似たような関係の娘の立場だったら、生きているうちにちょっとでも、会いに行ってほしい。

会えなくなってからでは、遅いから。



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