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【TXT】The Killa 歌詞の和訳と詩の解釈

制作陣の顔ぶれから「Tinnitus」(アルバム TEMPTATION 収録)の姉妹曲ではないかと、リリース前からモアたちの間で沸き立っていた「The Killa」。
同じアフロ系ではあるけれど、大人っぽさ&色っぽさ際立つヒョンライン(ヨンジュンとスビン)の歌声が、この曲のセンシュアルな雰囲気をグッと引き立てていて、曲の世界へとグイグイひきこまれていきます。

そして、狂おしいほどの恋の病を歌ったこの曲ですが、いざ和訳をしてみると、意味の解釈が悩ましいところも多く、人によっていろんな受け取り方ができる曲なんじゃないかなぁと感じました。そんな違いも楽しみながら、読んでいただけたらうれしいです。


The Killa (I Belong to You) 

Produce: Dystinkt Beats, uv killin em
Songwriting: Tomislav Ratesic(Dystinkt), Yuval Haim Chain(uv), Ebby, Ari PenSmith, "hitman" bang, 나정아(153/Joombas), 1월 8일, 김보은, 황유빈, TAEHYUN, YEONJUN, 조윤경, 김 인형, 4계절(153/Joombas), danke, 송재경
MINOSODE:3 TOMORROW 収録(2024.4)

飼いならしてよ

どんどん渇いていくんだ
ねぇ、君が恋しくてたまらない
あわれんでくれよ
偶然から強くかれた運命は
目と目が合った 瞬間に

今すぐ手なずけてよ
笑顔で気のないそぶり、でも僕は夢中なんだ
何言ってるのと笑う君
ただ君に服従するよ この身をささげる
どうか僕をとりこにして

The killa
心も魂もぜんぶ 君のもの
君は僕を苦しめる熱病
最後は僕を救って欲しい

シャンパンのように
甘すぎる君が 僕の心を支配する
狂おしいほど君に首ったけさ
愛してるなんて、ありきたり
むしろ 僕は君のものなんだ

The killa
手なづけて 僕を君でいっぱいにしてよ
とろけて僕は酔いしれる
まるで君の一部になったみたいに

The killa
飼いならしてくれたら もっと幸せに
これは僕だけの愛のささやき
君のものにして欲しいんだ

ただ君だけが
僕の空っぽな魂をすべて満たしてくれた
僕を支配し
熱中させてくれ

君は僕が望むたった一人のひと
この瞬間 君の手に抱かれた
僕の魂は
The killa 君の、永遠に君のものだ

ねぇ、君は
罪悪感なんて持たなくていい
罪はすべて僕のものだから
ただ僕を手に入れてよ

愛しい人、今はもう
そうさ、僕は君のもの
生まれ変わっても君を愛するよ
永遠を君に捧げる 僕はこの身を
どうか僕をとりこにして

The killa
心も魂もぜんぶ 君のもの
君は僕を苦しめる熱病
最後は僕を救って欲しい

シャンパンのように
甘すぎる君が 僕の心を支配する
狂おしいほど君に首ったけさ
愛してるなんて、ありきたり
むしろ 僕は君のものなんだ

The killa
手なづけて 僕を君でいっぱいにしてよ
とろけて僕は酔いしれる
まるで君の一部になったみたいに

The killa
飼いならしてくれたら もっと幸せに
これは僕だけの愛のささやき
君のものでいたいんだ



’Killa’とその他の関連ワード

曲名になっている killa とは、’殺人鬼’の意味から派生し、いまでは「死ぬほどカッコいい」「最高」などの意味で使われることが多いようです。あえて訳しませんでしたが、ここではひとまず、「(それほどまでに)僕を夢中にさせる人、僕をとりこにする人」の意味だろうと捉えました。 

戸惑うのが、歌詞の中には他にも「나를 죽여:僕を殺して」「날 제거하길 빌어:僕を削除することを願う」や「녹아내려 나는 다 없어져:溶けて僕はすべて消える」などの否定的なワードがちらほら入っていること。

けれど、曲名の意味や前後の文脈を踏まえると、おそらくどれも肯定的な意味で書かれたに違いありません。そこで、同じ意味の英単語に置き換えて、派生する意味から、以下のように意訳してみました。

・나를 죽여 (僕を殺して)⇒ 僕を夢中にさせて僕をとりこにして

・날 제거하길 빌어 (僕を削除することを願う)
 ’削除する’を英語の delete に置き換えると
 「天にも昇るほど素晴らしい」 の意味で使うこともあることから
 ⇒ 僕を救って欲しい

・녹아내려 나는 다 없어져 (溶けて僕はすべて消える)
 ’消える’を英語の bubble に置き換えると
 「喜びで沸き立つ、はしゃぐ、興奮する」などの意味もあることから
 ⇒ とろけて僕は酔いしれる

スペイン語の te quiero から考察するアニッタさんの存在

Like champagne
너무 달콤한 너의 reign on me
내가 미쳐 널 위해 나를 give up
흔하디흔한 말 te quiero
대신 I belong to ya

シャンパンのように
とても 甘い 君の 僕への支配
僕は 気が狂って 君の ために 僕を ささげる
ありふれた 言葉 君を愛してる
代わりに 僕はきみのもの

ここで添えているのは直訳です

ここでは突如、「アイ・ラブ・ユー」の言葉がスペイン語の「te quiero」で表現されています。スペイン語と言えば、そう、ブラジルの大スター、アニッタさんとコラボした楽曲「Back for More」が思い出されますね。

アニッタさんパートには、スペイン語の歌詞が散りばめられておりました。ということは、この曲でいう Killa とは物語上、アニッタさんが演じた女性を指しているのではないでしょうか。

「Back for More」では、歌詞の内容などからてっきり、ネバーランドで一時的に彼らを誘惑の罠にかけた悪女だと思っていた女性ですが、どうして再び登場することになったでしょうか。歌詞と過去の楽曲から考察してみます。

reign on me のフレーズの元ネタは

まず注目したのが歌詞の reign on me。これは映画『Reign Over Me 』(愛の支配/邦題「再会の街で」)がモチーフとほのめかしているのでは。映画は、亡くしてしまった家族への愛が心を支配し、現実逃避から抜け出せずにいる主人公チャーリーの心情が題名に表現されています。

ちなみにこのタイトル、The Who の『Love, Reign o’er Me』が元になっており、空から落ちる涙のように、愛だけが雨を降らせてくれると歌う曲。昨年9月に披露された「Back for More」VMAs ステージでは、冒頭に雷雨の演出がありましたが、ひょっとしたら、モチーフとしてこの曲の存在も示唆しさされていたのかもしれません。

Good Boy Gone Bad と ETERNITY に隠されたモチーフ

さて。愛する人を失ったと言えば、やはり「Good Boy Gone Bad 」を思い出さずにはいられません。そして、トゥバたちが今年の冬パリに行っていた頃の彼らの幾つかの投稿写真からは、GBGBの曲名には映画『Gone Girl』が隠されていたのではないかと推測しています。この映画は、ある日突然、愛する妻が失踪し、ふたりの関係に立ち込めていた暗闇が徐々に明らかになっていくというもの。

また、アルバム「THE DREAM CHAPTER: ETERNITY」のコンセプトトレーラーでは、丸テーブルの上に野球ボールと、バットの形をした白黒の望遠鏡が置かれていました。このオブジェや、0x1=LOVESONG の「連れてって your hometown」や「たぶん僕はダメさ 天国には行けないや」 などの歌詞から、亡くなった初恋の女性の面影を求めて故郷へと向かう、映画『君がいた夏』(原題:Stealing Home)もモチーフとして暗示されていただろうことがうかがえます。

さらにさらに。GBGB日本語ver. のMVではムービーの前半には、素早く切り替わる謎の画面が幾つか差し込まれています。暗号をひもといていくと、ボストンバッグの持ち手部分がフォーカスされていたことからハンドバックを意味するPurse(パース)、そして札束の脇に置かれた携帯電話(Phone)。これらから、彼らの恋人として登場していた女性は Purse + Phone ⇒ Persephonē(ペルセフォネ)=春の女神ではないかと見ています。

このペルセフォネ、実はもうひとつの顔を持っているんですね。それが冥界の女王。冥界とは死者の国。神話でペルセフォネは、冬(もしくは夏)の間、冥界の王ハデスの妻として地上を離れなければならないのです。

これらのパズルの断片を組み合わせていくと、「Back for More」で登場したアニッタさんは、ペルセフォネの冥界(死者の国)での姿を象徴していたのではないでしょうか。

しかし、ここでひとつの疑問が生まれます。
ということは、彼女はもうこの世にはいない人ではないかと。

けれど、ペルセフォネがエレウシスの儀式による仮死状態によって冥界へと旅立つように、トゥバの物語に登場するペルセフォネも、亡くなってしまったのではなく、彼女もまた、失恋の痛手や何らかの事情によって、心の冬、心の死を迎えていたということではないでしょうか。

そして、「Can't We Just Leave The Monster Alive?」の和訳記事や、今アルバム「TOMORROW」の考察記事では、春の女神(エオストレ)がモアではと書きましたが、ここでの春の女神ペルセフォネも、やはりモアを示していたのだろうと考えます。

だからこそ、The Killa の歌詞にある「*生まれ変わっても君を愛するよ/永遠を君に捧げる」、タイトル曲「Deja Vu 」歌詞の ”永遠の回帰”につながっていくのではないかと。長い冬の後には必ず春が復活するように、ずっとモアを愛し続けるよと。そんなメッセージが込められているのかも。

歌詞原文は 희열 속의 죽음 round 2 で、直訳では「喜びの中の2度目の死」となりますが、君のためなら喜んでもう一度死ねる。つまり、何度生まれ変わっても君を愛するよということではないかと解釈しました。

また、以前にテヒョンがカバー動画として、そして音楽番組「リムジンサービス」で Nathan Sykes の「Over And Over Again」を披露してくれていましたが、5年前からもうずっと、”何度でも愛するよ” と、モアに伝えてくれていたのかもしれませんね。

※Over And Over Again の歌い出し部分からクリップしています。

Killa からつながる 0X1=LOVESONG の意味

さて。もう一度、曲名のKilla に戻ってみます。どうして”Killa” だったのか。
気になるのが、「minisode3: TOMORROW」のコンセプトトレーラーでスクーターに乗っていたヨンジュンの姿です。

かぶっていたヘルメットに貼られたステッカーに注目してみると。

ドクロと2本の骨が描かれた真ん中のステッカー、映画などでもよく見かけるこのシンボルはジョリー・ロジャーと呼ばれ、海賊旗として使われます。

これね、シンボルを左に倒していくと「0X1」の文字に見えてきませんか。

となれば、曲名のなかに”亡骸なきがら”が隠された「0X1=LOVESONG」は、すでに愛する人を失った後のラブソングだったということになりますね。でも、なぜドクロと2本の骨のマークのジョリー・ロジャーなのでしょう。ここからは推察を広げてみます。

このジョリー・ロジャーのシンボルのルーツは諸説あるのですが、そのひとつに、古代エジプトで冥界の王とされたオシリスの神話からではないかという説があります。

神話では、太陽神ラーから王位を譲り受けたオシリスが、弟セト神のくわだてにより、騙されて棺に入ってしまい、そのまま蓋を閉じられて川に流されてしまいます。

このくだりは Killa(殺人者)のイメージにそのまま重なりますし、「Good Boy Gone Bad 」冒頭の「永遠って言葉に釘打って閉じる棺」(日本語ver. より)の歌詞も頭をよぎります(殺人者としての killa が誰だったかについては後日、別途記事にてまとめます)。

同じ一昨年、イアン・ディオールとコラボした「Valley of lies」(偽りの渓谷)の歌詞にも「僕のサイズにぴったりの棺が見える/僕の目は糸で縫われ開けることができない(公式日本語訳)」と、ここでも棺が登場しています。さらに、先にふれた「THE DREAM CHAPTER: ETERNITY」のコンセプトトレーラーでスビンが叩いていたガラスの囲い、そして今アルバムのコンセプト「ROMANTIC」で、彼らが見つめていたガラスのケースも棺を象徴していたのでしょう。

さて。棺に閉じ込められてしまったオシリスを助け出そうとしたのが、妻のイシスです。彼女は見つけ出した棺を秘密の場所へ隠しますが、それに気づいたセト神が、今度は棺をバラバラにしてエジプト中にばらまいてしまいます。イシスはパピルスで作られた船によって、あちこち探し求め、彼女の活躍によってオシリスは冥界の王として復活します。

ここから、骨、死後の世界、イシスの船などが、海賊旗ジョリー・ロジャーに隠された”復活”の意味へとつながってゆきます。また旗に描かれたクロスする骨は、オシリスを象徴する絵に、エックスのシンボルが古代から使われていたからだと考えられています。

そう。大事なのは、0X1に見える骸骨がいこつのシンボルに、”復活”の意味が隠されていたことだったのではないでしょうか。そこには、愛の復活や、苦悩からの開放への祈りが込められていたのかもしれません。

また、「Tinnitus」 の和訳記事にて、"rock 'n' roll (ロックンロール)" という言葉は、もともとは17世紀頃、船が航海で揺れ動く様子を "rocking and rolling"と言っていたことが由来だとご紹介しましたが、海賊旗をタイトルに織り込んだ「0X1=LOVESONG」の曲調がロックだったことは必然だったと言えそうですね。

*****☆**

ここではご紹介しませんでしたが、『Reign Over Me』以外にも楽曲には幾つかの引用ストーリーが見え隠れしていて、輪廻、永遠の愛、愛が起こす奇跡といったモチーフが散りばめられているように感じました。それにしても、アルバムテーマのひとつである”再会の約束”は、愛の復活も意味していたのですね。GBGB日本語ver. でモアたちをやきもきさせた女性がモアの象徴でもあったのは驚きです。

そして。先だって公開されたレコーディングビハインド第2弾。Killa では、ニュアンスの変化をたくさん加えながら、試行錯誤してレコーディングを重ねていく過程が映し出されていましたね。見えない努力と、アルバムごとに成長し、いつも私たちモアを音楽の新しい景色に連れて行ってくれる彼らの姿には学ぶことも多く、リスペクトしかありません。

最後まで読んでくださり、どうもありがとうございました。

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