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「そんな昔のじいさん、知らないし」 大谷ファンの少年の言葉にハッとした件

 エンゼルスとオリオールズの試合を取材した際のこと。
 エンゼルスのTシャツを着たかわいらしい少年たちに出会い、岩手日報で記事にした。

 大谷を史上初の2刀流というグレイソンくん。記事では柔らかい口調で正しく書いたけど、言い方はなんとなく「そんな昔のじいさん、知らないし」みたいな感じだった。
 
 その言葉にハッとした。

 11歳の彼は「今」を生きていて、数年前のことはすべて過去。そして10年、20年前の自分の記憶にないことは「歴史」で、もしかしたら、というかおそらくオバマ大統領の時代も記憶にないかもしれない。ということは100年前、1923年頃の大統領だったハーディング(29代大統領)やクーリッジ(30代大統領)なんて「誰、それ、何した人?」みたいな感じなのだろう。ベーブ・ルースが活躍した100年前とはそういう時代なのだ。

 2刀流の比較対象がいないので(大谷選手は絶対数が少ない、という表現をする)、ことあるごとにベーブ・ルースが引っ張り出されて比較されるけれど、ベーブももしかしたら「いやー、もう大谷が1人目でいいんじゃない?」と思っているかもしれない。

 大人の中にも「大谷が史上初」と思っている人がいても、なかなか口に出すことは難しい。言っちゃいけないような、とりあえず口には出さないほうがいいのかな、みたいに空気を読んでしまう。

 だからグレイソンくんの発言はすごく新鮮で、爽やかな風が吹いたような気分にさせられた。 

 大谷の挑戦は本当に史上初で、彼はメジャーの常識を破っている。そこに子供たちは憧れと敬意を持つのだと思う。

 もちろんベーブ・ルースに敬意を持つことも必要だし、過去の偉大な選手の功績を讃えることも必要だけど、でも大谷は大谷と考える子供たちの意見もとても大切にしないといけないな、子供の発想ってすごいな、と思わされた。

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