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1日が3時間に感じる。 20240413sat(394字)


一日が三時間に感じる。
二○一七年
京都にいた。
秋から春まで禅寺の寺男をやった。
三時半。真っ暗。廊下の濡れ拭き。足先は凍傷になった。
坐禅。読経。裏千家。軸。漢詩。初釜。
数年ぶりにフェイスブックを覗く。写真があった。
ネットに残る。時代だ。
当時は落語とジャズが僕の娯楽のすべてだった。


五畳間一万八千円。
風呂なし。トイレなし。
月初め。家主の家に、家賃を携える。
「君は若い」
「すぐに不惑です」
「私は八十過ぎだ」
「先日の山手の烏骨鶏はすごかったです」
「趣味だ。鹿や猪にやられる」
「出るんですね」
「熊も出るよ」
 間。
「まだまだ若い」
 僕は笑う。
「私ね一年が三日に感じるんだ」
 その家主の言葉。いまだに僕の頭に刻まれている。

僕にジャズを教えてくれた女。
岸和田の女で大阪弁がきつい。
毎日が狂うほどの同衾。
「ウチら、大学生みたいやね」

歌で思い出を弔う。

もう行くね
チュウでよがって
狂おしく
男女の余韻
八年が経つ

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