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【評】色気・色香とは(雑誌ANAN NO.2226を読んで)

色気・色香とはなんだろう。

人と身体的距離が際立つ現代。『色気』・『色香』なんて、薫り立つような、空気に存在が滲み出るような概念が、より一層必要とされているんじゃないかと思う。空気に滲み出るようなものの源泉は、いったいどれくらいの濃度であるのか。想像してしまった時点で、もうその人の毒牙に係っているような気がする。色とは、そういった類のものだろう。

さて、とはいえ、以前ほどの薄暗い・ねっとりした夜・また、女性的、などのステレオタイプのイメージはやはり似つかわしくない。もうこんな対比を用いる時点で前時代的と思われるほどに、現代は多様な価値観で溢れている。

わたしにとっての『色香』はそう、パリッとした日光に照らされたさわやかな香りと、海を嗅ぐと鼻に残る塩味のようなムスクの余韻である。湿度を残した夕闇の、太陽と雲によって暗さと明るさが乱れる様である。星空には色気を感じないが、太陽には感じる。河川には色気を感じないが、海には感じる。健康的で、芯があり、強く、しかし優しくある彼女。
わたしの世界では女性の方がより強力な色気を纏っているようだが、それはわたしが精悍な男性を好みとするからだと思う。わたしから見て、その人の色香が強くその身の周りを漂うのは、揺れ・悩んでいる瞬間であるから。精悍な男性の瞳にも色気を感じるが、色香としてより魅力的なまま印象に残るのは、女性が含み、発するエネルギー・滑らかに変化するビロードのような空気感だ。

色に対し、様々な好みがあるように、色気にも好みがあるだろう。認知する方法が同じでも、好きな色香は違うだろう。一人一人の歴史を元に、編み上げられ、立ち上る空気は、その人そのもののようで、それを感じ取る人が手に取ってもっとよく眺めたいと願うその行為によって、色気や色香へと変わるのだ。

あなたにとっての色気・色香はなんですか。
それはどんな色をしているだろうか。

私が育ったのは、海も空も近い町でした。風が抜ける図書室の一角で、出会った言葉たちに何度救われたかわかりません。元気のない時でも、心に染み込んでくる文章があります。そこに学べるような意味など無くとも、確かに有意義でした。私もあなたを支えたい。サポートありがとうございます。