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川上弘美「某」(ネタバレ有)

読了しました。

僕が感じたのは、愛を知ると死ぬのだろうか、ということ。
結局、作中で某たちの生態の全貌は見えなかったまま終わってしまったし、人間とは相容れないのかな?という表現もそこはかとなくあった。でもそこに触れることなく、徹底して主人公の「某生」(人生)を淡々と追いかけた末、みのりの章で終わった。
それはなんつうか、解説ではSFと書かれていたが、終始して「人との関わりかた、恋情を抱くこと」に疑問を抱えていた主人公が、最終的には愛する相手を得て、不本意ながら死に至る、という「ひとりの産まれてから死ぬまで」を見送った気分にさせられた感じが強い。

言語化する能力低くてすいません。

結局シグマとアルファも「変化」できなくなってしまうし、「犠牲を払う」という事が愛すると同義なら、ひかりになった主人公はずっと疑問に思っていた「情」みたいなものを手に入れて、某は人間になれる。=人間とは、愛を知っている者、と......少し考えてみたり。

川上弘美ismというか、会話が相変わらず好みです。

ラモーナになった主人公が、老婆に家族がいない事で憐れまれるシーンがありましたが、そのときの

「これをあげる」
「なんですか、それは」
「翡翠だよ」
「そんな高価なもの、いりません」
「だいじょうぶ、にせものだから」
「ますます、いりません」←これが好きです(笑

ますます、いりません。なんて言葉は僕は使ったことが無い言葉ですし。多分今後も口にすることはないと思うけど、いっぺん言ってみたい。

小柄な女の子が話すと大人の色香があったり、小説家のような妙ちきりんな仕事があったり、
二つに分離してしまったり、
と思えば産まれたのに「なんか、生まれた」と説明する親だったり、
この辺は川上弘美っぽくて好きです。

全部自分のくせに色んな主人公から文夫が嫌われてたりするところは笑えますが、ナルシストな自分が嫌い、っていうのは多分色んな人にも感じたことのある感情なんじゃないのかなぁ。

ともかく面白かったです。ようやく読めました。長らく積読だったので......。


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