送信履歴#1 昨日は時間を作ってくれてありがとう。

都心にあってあの高台には人の気配が微塵もなくて、煩わしさやしがらみからすっかり離れられたような思いに包まれたよ。
さすがに地平線近くの星は街のネオンに肩身を狭くしていたけれど、彼らには彼らの世界があって、ぼくらにははかり知れないあちら側で遠慮なく光を放ち続けているのだと思った。
ただ、地上の光がおよばない頭上では、どの惑星も恒星も衛星も銀河も、遠慮というものを知らなかったね。

君に連れていってもらって、あの場所で時間を過ごして、そして家に帰ってから、ふとあの時に感じたこと、そしてそれを紡いだ情景とを独りで思い返していました。
まさか、とは思ったけど、ぼくにとって貴重な“切り取られた時間”でもあったんだ。

実はこの2年、あることにとらわれていて、1日たりとも離れなかった重く切なく、考えるととてつもなく億劫な心の内壁にこびりついた足かせ--今はまだ話すための順列がばらばらで、うまく伝える自信がありません--が、気弱な物の怪が「さよなら」を告げたあとみたいにすうーっと消え失せたていたんだ。
あれほど、すっかり忘れ切ることができなかった重荷が、奇跡のようにみごとに引いていた。
ぼくにとってそれは“切り取られた”ようなものでしたが、文章にしてみると、なんだか覆い被せたみたいなニュアンスになってる。

うまく伝えるのって難しいね。

いずれにしても、この2年間での、いや2年経ってやっと顕れたといったほうがいいのかな? 光明でした。

君のおかげ? 

おそらく。

取り急ぎ、昨夜のお礼まで。

(続く)

この道に“才”があるかどうかのバロメーターだと意を決し。ご判断いただければ幸いです。さて…。