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【随筆】色物って言うのは簡単だが、なかなかできることじゃねえ2

というわけで、この記事の続きだ。本当は、一週間前に書くべきだったが、すぐに書けなかった。でも、書かないままでいることはできないと思ったので、時間は置いたが、やはり書くことにした。

短い記事だ。できればそちらから読んで頂きたい。



昼に投票に行って、夜、結果を確認した。彼は、負けた。そのことはどこか予想の範疇だった。まだ難しいだろうな、と。もちろん応援していた、期待していた。何かが変わるかもって。だが、議会局はビクビクしていたのかもしれない。「あの人、本当に当選するんじゃないか」って、そんな感じに、正直焦っていたはずだ。とか、それは杞憂かもしれない。でも、何が多様性だ、クソくらえだ。彼は色物として、判断された。開票結果を確認すれば、彼がけっこう惜しいところまで票を集めていたことがわかった。だが、振るわず。実に残念だ。

そういえば、前の記事を書いてからアト、投票一週間前になった頃だ。立候補者の何人かが、朝、駅の改札前で挨拶をしていた。小さな声だった。隣の彼は、相も変わらずにバカでかい声で、笑顔で、元気だった。

正直、今更感があった。「もう、遅せーよ」とか。いや、これが普通かもしれない。でも、ならあのスタートダッシュは何だった。半年は前から、彼はいたぞ。そんなんじゃあ全然だよ。彼を、凌駕できない。なんて、気持ちがあった。


それで、れいの翌日。開票日の次の日、月曜日の朝だ。彼は負けた。もう、彼はここに来ない。彼の、あのバカでかい、下手したら迷惑な、そして笑顔を、もう拝めない。それは寂しい。そう思っていたところ。

彼は、いた。いつものように、またあのバカでかい声で、笑顔で、挨拶していた。そして、「応援ありがとうございました! 期待に応えられなくて、申し訳ございません!」と言っていたんだ。いや、叫んでいたんだ。

心を、打たれてしまった。僕は近づいて「残念でした。惜しかったですね」と、とても物書きのはしくれとは思えない、普通なことしか言えなかった。感極まっていた。僕は気がつくと右手を差し出していた。固い握手をした。彼は「いつも、ありがとうございます。ありがとうございました! 元気、もらっています。もらいました! 期待に応えられなくて、申し訳ございませんでした」と言った。それに僕は、うまく返せなかった。できなかった。ほんの、一瞬だった、僕は改札に向かった。後ろから聞こえた。

「行ってらっしゃいませ! 本日も、最高の一日でありますように!」と、彼は、いつものように言った。叫んだ。うるっときて、思わず振り返った。




普通、翌日に来れるか?
すげーよ。

そもそもだ、逆だよ。当選者が来い。「みなさまの応援、ご支援のおかげで当選することができました。ありがとうございます!」てな具合によ。の、一言もなく、現職が当選して、とか、いい経歴で、人畜無害そうな、きっと金持ちで、さして魂のねえ、声も小さいやつ(言い過ぎか)。そんな候補者ばかりが当選する。これじゃあ既得権益だろ。

政治家は、マイク一本で成ってこそだと思う。
って、これは綺麗ごとか?

とにかくだ、本当に残念だ。
一人の本物の政治家が、政策を行なえないで、本物じゃない、偽物とは言わない、だけどそんな政治家が跋扈する市政だ。残念、極まりない。

もう、ノーサイドだと言って、過ぎた話だが、個人的にはね、色々な意見があった方がいいと思う。流行りだろ? 多様性。な、なら、色物がいたっていいじゃないか。それに、なんと言ったってな、そいつは、魂を揺さぶるんだよ。

な、考え直してくれよ。とか、言ってみたり。
そして、あの日を最後に、彼は居なくなった。


僕はまた、彼に会いたいな。
思い出される、
あのバカでかい朝の挨拶を。


そしてここからは違う話。僕もいつか立候補してみようと思った。何をするのかって、彼と同じことをするつもりだ。日課のように、毎日朝の挨拶をする。健康にもいい。それに、僕は彼みたいに色物じゃない。僕なら、正統派の僕なら、余裕だろうww 嘘嘘ww というか、色物だってわかっていても、いや、色物だからこそだろうか、この作戦には心を打たれた。

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