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詩詞評

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詩詞評|『BI』FINLANDS

詩詞評|『BI』FINLANDS

作品紹介当楽曲は2018年の作品です。
アルバム名と同じタイトルをもつ表題曲であり、曲順はセットリストを締めくくる最後です。時代としては珍しく約7分の中長尺で、構成はオーソドックスな展開を聞かせます。

タイトルの『BI』は読みを「バイ」、<両性具有性>を指します。つまり、<一つの個体が二つの異なる属性を有すること>です。英語の接頭辞として「バイリンガル」や「バイセクシュアル」のように他の語と結び

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詩詞評|『Gas Panic!』Oasis

詩詞評|『Gas Panic!』Oasis

作品紹介『Gas Panic!』は<苛まれる罪の意識との葛藤>を描いた作品です。それはどんな罪かというと、作品を吟味する限り、よく分からないというのが妥当だと思います。というのは、主人公自身がはっきりとした心当たりはないと言っているからです。これがネックとなり、この歌はそのストーリーへの具体的な言及が難しいものとなっています。つまり、解釈の余白を多分に含んだ楽曲となっています。

ただ、サビにあた

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詩詞評|『天気予報』羊文学

詩詞評|『天気予報』羊文学

作品紹介歌のあらすじはこうです。
幼い頃、未来は天気予報のように信頼することができた、だから現実を笑い飛ばすことができた。でも、今、未来は天気予報のように信頼することができなくなった、だから現実を笑い飛ばすことができなくなった。

けれど、その懊悩とは裏腹に、歌は聴く者を煽るように問いかけます。「僕らが憧れた未来予想のその先はドキドキするような未来を運ぶかい?」。未来は天気予報のように信頼すること

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詩詞評|『メルヘル小惑星』ナナヲアカリ②

詩詞評|『メルヘル小惑星』ナナヲアカリ②

ひとつの作品としてとてつもない完成度と魅力を持った『メルヘル小惑星』は、『ナナヲアカリ』というアートワークのなかでも非常に重要な役割を果たしています。本稿では、『ナナヲアカリ』というコンテキストを背景にしたときの作品『メルヘル小惑星』を読み解いていきたいと思います。

『メルヘル小惑星』と『フライングベスト』と『ナナヲアカリ』『メルヘル小惑星』が収録されている『フライングベスト』の歌詞カードの表紙

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詩詞評|『メルヘル小惑星』ナナヲアカリ①

詩詞評|『メルヘル小惑星』ナナヲアカリ①

よくこんなことを聞かれます。
「ナナヲアカリは一体何者なの?」
私も最初は同じことを感じていました。

もう知っている人も、まだ知らない人も、
ナナヲアカリが好きになることを願って、
評説を書きたいと思います。

作品紹介ナナヲアカリは何者なのか。
そう思わせるように、彼女にはたくさんの顔があります。それでも、それがナナヲアカリだと分かるのは、いつも同じ通奏低音があるからです。それが最もよく表れて

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