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(詩)最後の夜に、戦場を後にして

いつからわたし
ここが戦場だという
ことばに慣れて

たまにいいことあっても
すぐにまた
いやなことが
やってくるんだから
百パーセントそうに
決まっているから、ねえ

そんなに
はしゃがないでいてよ
ねぇ、だってわたし
生まれつき、
生まあれつき、わたしは
不幸せなわたし
なんだからさぁって

いつからわたし
ここは戦場だから
わたしにとって
ここは
そしてどこへも
逃げてゆくあてなどない

わたしはそんなふうに
心いいくるめて
ずっとやってきたから

あなたがわたしの前に
あらわれた時も
気付かなかった

あなたのことにしたって
たまにある、数えるほどの
いいことの中の
ひとつにすぎないと

だから
またいつふいに
どこかへ
いってしまうか
わからないのだから

ねぇ、はしゃがないでよ
お願いだから
人前でも
あなたの前でも
ひとりの時も

ここは戦場なんだから
うれしがらないでよね
あんまり、ねぇ

「きみに会えて
 うれしかった
 きみはあんまり
 うれしそうでは
 なかったけれど
 ぼくは
 うれしかったなぁ

 たとえここが
 どんな
 たたかいの場所でも
 きみとめぐり会った
 ここがぼくには

 天国だから

 だからもう
 せんじょう、
 ということばは
 使わないよ」

だからわたし
気付かなかったの
ずっとわたし
だまされていたことに
せんじょう
ここは、せんじょう
ということばに
だまされていたから

いつからかすっかり
忘れて、いたらしいの、わたし

ここはてんごく、
ここが天国、だったこと

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