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(詩)洗濯物

一日中
きらきら
弾けるような
光を浴びて

びしょびしょに
濡れていた
洗濯物たちが
ゆっくり
ゆっくり
乾いてゆく

繊維の中に
住んでいた
水分たちが
光の中の
熱と溶け合って
やさしく
大気中に
姿を変え
蒸気をあげて
放たれてゆく
瞬間
瞬間

水分たちは
柔らかな
繊維に
別れを告げ
ひとかけら
ひとかけら
夢見るように
別れを
惜しみながら
水分の子供たちは
もっとねていたいよう

大きな
あくびをしながら

この広い
空気中へと
旅立ってゆく

そして
泣きながら
水分たちを
見送った
洗濯物たち
下着が
靴下が
ワイシャツが
タオルが

やがて
泣き止んだ
午後の
日差しの中で
晴れ晴れと
きらきら
ほほえみあっている

よかったね
今度は
いつ
人肌の
ぬくもりに
触れられるだろう
いっしょうけんめい
生きていて
流す
汗や
涙を
やさしく
やさしく
吸い取ってあげたい

生まれてから
ずっと
ぼくのにおいを
しみこませて
生きてきた
せんい
という
生き物たち

涙のにおいを
一番知っている
生物たち

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