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小説詩集「ちいさい地図みつけた」

おおきな地図をかいて、旅にでたの。

「旅に、」

どこまでも行ってみたくって、雲のむこうとか。

「雲の、」

飛ぶことがすきだったから、ジャンプばかりしていたんだれど、ママにもほめられて雲をめざしたの。

「それでどこまで?」

どこまでも行ったよ、地図をなぞってね、ここかしらあそこかしら、てキョロキョロして。

「迷わなかった?」

まよったよ、気がついたらママがいなくって、ママの励ます声だけこだましてた。目的地がわからなかったの。描いてもなかったから。そもそもジャンプするんだから、平面図なんか役に立たないのにも気づいたの。

「気づいたのはいつごろ?」

夕闇が窓からみえるころ、蜘蛛の巣みたいなあやとりが町の空を覆うころ。

「あやとりが、」

みんなの生きる生き方が、あやとりみたいに行き交って、そこをハラハラしながらくぐってた。それでもジャンプして黒雲に近づいた。するとぽっかり浮かんだ月にだって手がとどくみたいに思えたの。

「でも、とどかなかった?」

とどかなかったの。だって鳥たちが寝静まるころ、送電線が遊ぶ、みたいな縄跳びがはじまって、時を刻むみたいにジャンプしてたから。心がヒリヒリなっても飛び続けてたの。

「外れる方法は?」

大縄を素早くぬけて、一瞬でね、ポケットに隠し持ってたマイ縄で飛びはじめるの。少しヒリヒリが治ったころに、遠くの方から汽笛が聞こえたみたいな気がしたの。だから。

「だから?」

だから、犬たちが交わす遠吠えをみちしるべに、この草むらに降りてきたんだよ。

「草むらはいいだろ、」

うん、草むらはいいね。草むらにあなたがいたんだし、こうやって3センチぐらいジャンプして追いかけて、リンリン鳴いて、鳴き続けられるんだから。

「なんて鳴く、」

目的地は争奪戦じゃなかったよ、て鳴くの。そうして力いっぱい鳴いて、3センチぐらいジャンプするんだけれど、それがどこよりも遠くつづいていくの。

おわり


❄️わーシステムメンテナンスの時間がせまってくるー、とか言いながら、うまく書けないのはそのせいよ、みたいに逃げる秋です。
窓のガラスにはりついた緑のバッタさんみたいな紳士がやってきて、自分をたいせつにね、みたいな幻覚をみせてくれたから、的妄想です。
秋なのに寒くない、虚しいのにひとりじゃない、悲しいけど不幸じゃない、みたいな反転な秋がつづきます。だからまた書きます。ろば



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