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#ネタバレ 映画「エリカ38」

「エリカ38」
2018年作品
赤かった風船
2019/7/1 18:29 by さくらんぼ (修正あり)

( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。)

タイトルからネバダ州の「エリア51」を連想し、あらすじからは映画「後妻業の女」を連想してしまいました。

さらに、映画「後妻業の女」のヒロイン・大竹しのぶさんを、浅田美代子さんだったと記憶の書き換えも起こっており、似たような映画かも、との先入観の中で鑑賞しました。

でも、これは、良い意味ですべての先入観を裏切る作品。

おじさんたちのアイドルだった浅田美代子さんは、最近、ヤなおばさんを演じることが多いですが(失礼、でも、まだまだ美女役で稼げる年齢なのに、アイドル時代を知っている者にとっては、少々辛くもあります)、この映画はそれを一歩進め、ヤを演じることに役者魂をかけているようにさえ思いました。

そんな女の決意を感じる中で、コーヒーブラウンな純文学を読みたい方に、おすすめします。

★★★★☆

追記 ( 赤かった風船 ) 
2019/7/2 8:32 by さくらんぼ

「色温度」と言うのか、「ホワイトバランス」と言うのか、私にカメラの趣味は無いのでよく分かりませんが、映像はコーヒーブラウンでした。そして粒子も少々粗いです。

その不正常な空気感が、たとえ札束をばらまくようなシーンであっても、観る者に「犯罪の穢れ感」を感じさせていたのかもしれません。

追記Ⅱ ( 時間ですよ ) 
2019/7/2 9:12 by さくらんぼ

印象的なシーンがありました。

学生時代のエリカ。ちょうど反抗期だったのかもしれませんが、晩酌中の父から説教をされていました。

父は暴力をふるうわけでもなく、どこのお父さんでも言いそうな、常識的な説教をしていたようにも聴こえましたが、もし毎晩のことなら嫌でしょうし、それ以前に、反抗期の娘にとっては説教自体が鬼門なのでしょう。

父の「味噌汁おかわり!」という声で立ちあがったエリカは、台所の母の元へ行き、鍋の側にあった「ネズミ駆除剤」の缶をつかむのです。横で止めようと手を出す母。「早くせんか!」と父。

その時、手がすべって缶が鍋の中に落ちてしまいました。薬剤も溶けだして。

そうしたら、さっきまで必死で止めていた母が笑いだしたのです。つられてエリカも笑いだしました。

「何を笑ってるんだ!」と父の声がします。

あの味噌汁をどうしたのかは描かれていません。

しかし、「この世は、この家庭のようなもの。人生の歓びは、こんな悪意の刹那にしかない」。

そんな人生観をエリカが持ったとしても不思議ではありません。

映画の中のエリカのお仕事は、人々にお金を出させ、刹那の喜びを与えること。

しかし、それは打ち上げ花火のようなもので、その前も、後も、暗闇しかないのです。

追記Ⅲ ( 醒めた目 求める手 ) 
2019/7/2 9:30 by さくらんぼ

だから、エリカ自身も、自分の幸せが永遠に続くとは思っていませんでした。

ひょんなことから、彼女がタイで拾ったタイ人青年。エリカはその青年に豪邸を買ってやり、愛人として囲います。

エリカは自分の年齢を38歳と偽っていましたが、青年は60歳ぐらいだという事に気づいており、金づるとしてエリカを逆利用していました。そして、エリカが留守の時には、若い本物の恋人と遊んでいたのです。

エリカは若い恋人の事までは知らなかったでしょうが、この幸せも刹那のものだと醒めていたようです。恋人に抱かれている時の醒めた目がそれを物語っていました。

それでも、エリカが逮捕された時、青年が書いた偽りのラブレターに心が揺れるシーンは、彼女もまた、どこかで真の愛情を探し求めていた証なのでしょう。

追記Ⅳ ( 「フリーランス」と「人を見る目」 ) 
2019/7/2 22:34 by さくらんぼ

実際の育児放棄事件をモチーフにした映画「誰も知らない」は、親を悪く描いていません。育児放棄が主題ではないからでしょう。

同様に、この映画「エリカ38」も、主人公のエリカをあまり悪く描いていないようです。

エリカは最初一人で仕事を始め、その仕事ぶりが描かれます。この時点ですでに犯罪だったのかもしれませんが、映画で観る限り、才能もありそうで、なぜ悪事をしているのか、微妙でした。

そして、偶然エリカの才能に目を付けた女から「あなたに良い人を紹介する」と言われ、紹介された男から「私の所へ来ないか」と勧誘されるのです。フリーランスの人なら、このような話は日常的にありえるのではないでしょうか。

ところがその男が曲者だったのです。私は怖いと思いました。事業の成長のために良き人との出会いは欠かせないと思います。しかし、出会う人すべてが善人だとは限らない。人を見る目がないと、知らないうちに犯罪に加担させられる危険もありそうですね。

そして映画のラストには、実際の被害者の方のインタビューが流れます。その内容も、考えさせられるものになっていました。実際の被害者がいらっしゃるので、軽々なことは言えませんが。

(  私はあくまでも映画のレビューを書いています。これは実話へのコメントではありません。)

追記Ⅴ ( 映画「アドルフの画集」 ) 
2019/7/3 6:42 by さくらんぼ

「 アドルフは画家になりたかった。彼は売れる画家になるために、画商のアドバイスもあって演説で自己表現の訓練をした。

しかし、それが皮肉な結果を招く。

その優れた演説が軍部の目にとまり、生活費稼ぎの軍部のアルバイト演説をするようになる。

この頃、アドルフはまだ歴史に名を残すような罪人ではない。ユダヤ人に対する反感を、アドルフだけが特別強く持っていたようには描かれていないように観えた。まるでそれは多くのドイツ人たちの中に漂っていた時代の空気の様だった。

しかし、アドルフが演説をする事で、漂っていた反ユダヤ人の思想がブレイクしてしまうのである。そして彼も自らの演説に自己暗示を強くし、陶酔し、やがてリーダーの階段を上り始める。

これはどこか陰に隠れている悪に、知らぬ間に時代の空気を利用される事への警鐘を鳴らした作品だったのだろうか。」

(  映画「アドルフの画集」 2004/3/6 9:49 by さくらんぼ より抜粋  )

追記Ⅵ ( 人気TVドラマ「時間ですよ」 ) 
2021/2/17 9:56 by さくらんぼ

今は汚れ役も見事にこなす浅田美代子さんですが、デビュー当時はぴかぴかのアイドルでした。その人気はAKBのセンターに勝るとも劣らなかったのです。

彼女は人気TVドラマ「時間ですよ」に、銭湯の従業員としても登場していました。

ある回の事です。

船越 英二さん扮する銭湯の御主人と、浅田美代子さんが並んで歩いていました。ちょうど映画「ALWAYS 三丁目の夕日」における、堤真一さんと堀北真希さんみたいな関係でした。

どんなセリフがあったのかまでは詳しく覚えていませんが、おそらく、寂し気な浅田さんに対して船越さんが、「私の事をお父さんだと思っていいんだよ」みたいなことを言ったのだと思います。

そうしたら、浅田さんが船越さんの方を見て、「あっ、白髪…」と言いました。

船越さんは、自分の子供に言うように、「抜いてくれる?」とやさしく言いました。若白髪が出始めた頃は、皆抜いていましたね。

そうしたら、浅田さんが無邪気に「汚い!」と言い放ったのです。汚らしいからあんたの頭になんか触りたくないという事です。

その瞬間だけ、船越さんの顔がアップになりました。すごい演出です。目には驚きや哀しみの感情が宿っていました。

浅田さんは自分が何をしたのか分かっていないようでした。

当時、子どもだった私ですが、その時、「汚い!」というセリフが、船越さん同様に刺さったのです。

あのシーンは何だったのでしょう。

もしかしたら、チャップリンの映画が悲喜劇であるように、「時間ですよ」もそうだったのかもしれません。

大人の目で確かめてはいませんが。

追記Ⅶ ( 人生には覚悟が必要だ ) 
2021/2/17 10:09 by さくらんぼ

40歳ごろに同僚たちとハワイへ行きました。

今は亡き上司からも、「俺も、連れてってくれんかなぁ」と言われたので、喜んで来てもらいました。

ワイキキビーチでのことです。

上司は自分の浮き輪を膨らませようと、息を吹き込んでいました。

半分ぐらい入れたところで疲れたらしく、「○○君代わって」と私を呼んだのです。

一瞬「間接キッス!」と思いました。しかし、私には男性とキスする趣味はありません。

でも、断れば「なんで?」と言われます。「汚い」などとは口が裂けても言えません。いつも可愛がってくれる上司ですから。

だから、覚悟を決めて、少し微笑みながら、浮き輪を受け取りました。

追記Ⅷ ( 「口噛み酒」 ) 
2021/2/18 14:27 by さくらんぼ

そう言えば、映画「君の名は。」には「口噛み酒」が出てきますね。

大昔はああして酒を造ったのでしょう。

旅番組でアフリカあたりの未開の村へ行くと、歓迎してくれるのですが、歓迎のしるしとして「口噛み酒」みたいなものが出て来ることがあるようです。

100歩ゆずって美女の「口噛み酒」ならともかく、それが地元のおじさんたちの渾身の作だったりするわけです。

それを知っていても、飲まなければ取材は出来ないので、覚悟を決めて飲むシーンをTVで観たことがあります。

やはり、そういう結論になりますね。

少なくとも、新型コロナ前なら。

追記Ⅸ 2022.5.12 ( お借りした画像は )

キーワード「出会い」でご縁がありました。清潔感のある、美しい花嫁さんと花束ですね。少々上下しました。ありがとうございました。



( 最後までお読みいただき、ありがとうございました。 

更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)


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