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Books Are Burning (短編小説)

あなたが燃えています
誰からも愛されず、気付いてもらえず、
堆く積まれたマンションのごみ捨て場の
一番下にある可燃ごみ袋のような
あなたと、あなたの文字が
燃えています
染みだらけの手帖に殴り書いた
詩とも小説ともつかない
日々の醤油がこびりついた
剥き出しのあの文字たちは
あなたの最後の抵抗だったのでは
ないのですか
関わり合うことを拒絶した
世界への
遣る瀬ない叫びであり
それでも捨てきれぬ何かを託そうとした
撚れた糸ではなかったのですか
でもあなたは
それを抱えて逝くことを選んだ
これであなたが生きた証しも
世界があなたを知ることも
なくなった
全て灰になるのですね
ふう
もう時間です
この仕事は寄り添い過ぎてはいけない
持っていかれてしまうから
上司の言葉です
灰はこっそり撒いておきます
あなたが好きだった
人気ひとけのない
あの小高い丘にある
古墳という名の喫煙所に


「Books Are Burning」 XTC

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