深夜の公園のトイレから聞こえる赤ちゃんの声

私はダイエットのために深夜にランニングをしている。
その日は夕方にがっつり仮眠を取ってしまったため、変な時間に起き、深夜の3時にランニングに出掛けた。
真夜中ではあるが、都心近くということもあり、外は街灯で明るく、車も少数だが走っているのが見受けられる。
なんなら歩行者もいて、すごいなと感心していたくらいだ。
そうこうしてランニング道中の小さな公園に差し掛かったとき、突然の尿意に襲われた。
都心といえど深夜3時の公園は不気味なので、どうしようかと思ったが、人間尿意には勝てない。意を決してトイレに入った。
小さい公園のトイレにしては意外と綺麗だったので一安心し、用を済ませていると、耳に微かな音が聴こえてきた。
「あぅあぅあぅ・・・ あぁぅあぅぅ。」
びっくりして手元が狂い、少しおしっこを手にかけてしまったが、その事で少し冷静になれた。
よくよく聴くと、この微かな声、まるで子どもの泣き声のようにも聞こえる。しかも個室の方から聞こえてくる。
脳裏によぎったのは、捨て子。トイレで産み落とされた赤ちゃんが残されているのではないか。そうおもった。
普通に考えればトイレで産み落としたにしても、男子トイレで産むわけないだろうと思うが、その時の私は結構パニック状態でそこまで考えが及ばなかった。
勇気を振りしぼり、声が聞こえてくる個室を覗く。
中には蓋の落とされた便座。確実に声は中から聴こえてきていた。
恐怖もあるが、もしも赤ちゃんだったらもっと大変である。
私は蓋を開けた。
そこにいたのは、猫であった。
「何見てんだよ。」っと言ってきそうなくらい無愛想な顔をした黒猫であった。
その猫はのっそりと中から出てきて、ぺたぺたと音を立てて個室を去っていった。
ぺたぺた音がしているのは、後ろ足が便器の水で濡れていたからである。
私は手を洗ってランニングに戻った。

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