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『介護保険サービスのしくみ』

この本を読んで、ビジネスとしての介護施設とはというのはなんとなくわかった。

ただそもそも介護保険制度とはという疑問はそのままなのでこの本。図解で伝えようとする本が多い中、ひたすら文字で伝えようとする強気さにひかれ購入。副題で利用者、事業者必携!とうたっているものの、事業者向けかなと思う。利用者、特に家族で介護が必要になり、自分と同じように介護とはともった方は図解の多い本の方がとっつきやすいように感じた。ただこの本は介護保険の制度であったり、サービス内容ごとに2~4ページくらいにまとまっていて、事業者として制度を利用する側にとって、はじめの一冊としてはアウトラインをつかむには端的でよい本と思った。

読んでいていてまず思ったのは制度としてとてもよく考えられているなと。民間のサービスではなく、必要になったときに享受できない人がいないように、網羅できるような仕組みつくりというのはサービス内容がなんであれ非常に心が折れる作業なはず。民間サービスであれば、ターゲット層を決めて、それ以外の層は考えなくていいのだから、ある意味マーケティングとしては簡単。そういう意味では分かりにくくなってしまうのは仕方ないことなのかもとも感じる。ただでさえ難しい仕組みなのに、医療保険とのすみ分けや、生活保護をはじめとする救済措置とのすみ分けなど、ややこしいもの同士が同じような制度を持っていて、漏れてしまう人がいないように、重複してしまわないように、かつ制度が破綻しないような調整をして、運用する。

普通にすごくね?と思ってしまう。福祉事業の世界に片足突っ込んだわけだけど、利用者それぞれ事情が違って、介護度が違ったり、必要な介護の種類が違ったり、ある程度受け入れる施設で利用者のカテゴリを絞っているものの、それでも一律のサービス展開では賄いきれないはず。利用者一人一人にケアプランが作成されていて、それに従って介護なり必要に応じて看護がなされていて。食事にしろ服薬にしろ、日常生活の一部なのに一歩間違えたら大事故につながってしまう。

制度ビジネスと呼ばれて一時期新規参入が目立った業界で、確かにこれだけルールが決まっていれば、用地の広さが決まれば、建てられる建物の大きさが決まり、建物の大きさが決まれば提供できるサービス内容と受け入れ人数が決まる。サービスと受け入れ人数が決まれば、必要な人員が決まる。提供するサービスそれぞれに報酬が決まっているから、もうそれで収支が合うかどうかわかってしまう。確かにリスクの低いビジネスではある。そんなビジネスとしてはとても単純明快な計算で成り立つものの、実際運営となると体は使うわ、感情労働だわで、運営と現場の感覚がずれやすい産業だなと思う。現場としての提供するサービスが日常生活の補助という面が強く、利用者の自己負担も1割だったりすると、なんか稼ぐという感覚がわきにくいのもわかる。まあこのサービスやったからいくら!という感覚で働くのもなんか違う気がするわけで。

いろいろ読んでいて思うことが多いけれど、制度を俯瞰したり、これどういうことだっけ?と思ったりした場合、検索しやすい意味でもこの本は確かに事業者必携とは言えそう。


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