読書感想文(369)青柳碧人『むかしむかしあるところに、やっぱり死体がありました。』

はじめに

こんにちは、笛の人です。
読んでくださってありがとうございます。

今回は、以前読んで面白かったシリーズです。
本屋さんで文庫化したのを知り、即購入して即読みました。

感想

今回も面白かったです。
が、順位をつけるなら前作、前々作の方が好きだったなぁと思います。
今回も5篇の短編が収録されていますが、目次は次のとおりです。

竹取探偵物語
七回目のおむすびころりん
わらしべ多重殺人
真相・猿蟹合戦
猿六とぶんぶく交換犯罪

巻末解説では「七回目のおむすびころりん」が「本書の中でも白眉と言うべき出来映えの一篇」と評されていましたが、個人的にはこれが一番しっくりきませんでした。
ミステリ×タイムループは相性が良いと聞きつつ、(多分)読んだことがなかったのですが、今回のこの作品はそれほどタイムループが利いているようには思えませんでした。
てっきり、別の話で何か伏線が回収されるのだろうと思っていたのですが、そういうわけでもなく……。
正直、何が良かったのかあまりわかりません。

ただ、他の四つは結構面白かったです。
「竹取探偵物語」は推理がある程度できるのが面白く、「わらしべ多重殺人」は謎もオチも面白く、「真相・猿蟹合戦」は謎もオチも面白いのに加えてストーリーも面白く、「猿六とぶんぶく交換犯罪」は猿六がシャーロックのもじりで、ホームズのパロディも面白かったです。

こうやって書くとやっぱり今作も面白かったのですが、前作や前々作の方が好みだったのはなぜでしょう?
一作目は初めてという面白さもあったのと、ある程度推理ができたからかもしれません。
二作目は赤ずきんのキャラクターが良かったのもある気がします。
三作目に当たる今作は、シリーズ化による複雑化、差別化がかえって煩わしく感じてしまったのでしょうか。

でも、巻末解説で紹介されている「僕はどちらかというと、ミステリ要素のある昔話を書きたいというスタンスです」という作者の言葉は、いいなと思いました。
確かに、このシリーズはそういう姿勢で書かれているように思います。
今作では「真相・猿蟹合戦」が最も顕著で、栗や臼が意思を持っているのに、柿は何故ただの果物なんだ、と作中キャラクターに語らせています。そういった細かな綻びから「真相はこうだった」という昔話は本当に面白かったです。
そういう意味では、今作で一番好きだったのは「真相・猿蟹合戦」ですかね。

おわりに

このシリーズはあと二冊残っていますが、単行本を買う余裕が無いので文庫化したら買おうと思います。楽しみです。

ということで、最後まで読んでくださってありがとうございました。


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