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文豪も愛した山の上ホテル コーヒーパーラーヒルトップ×水出しコーヒーゼリーを堪能【東京御茶ノ水】

私達の身の回りに当たり前にあって、日々の生活を豊かにしてくれるもの、それは建築と甘いもの。
このnoteでは建築好きのやま菜がおすすめしたい建築と甘いものを紹介していきます。

今回訪れたのは、学生街としても賑わい、多くの出版社がひしめき合うことでも知られる東京御茶ノ水。
そんな御茶ノ水駅をでた丘の先に、とっておきの建築と甘いものスポットがある。


1.多くの人々を虜にしたコーヒーパーラーで頂く甘いもの

駅から歩いて約5分。明治大学の大きなタワー建築の横に伸びる坂道を上がった先に今回紹介する山の上ホテルがある。

坂に囲まれた東京らしい地形の上に、まさに山のように立体的に立ち上がる建物は、川端康成や三島由紀夫、松本清張、池波正太郎など様々な作家や文化人が足しげく通い、時にはホテルに缶詰になって執筆活動に勤しんだことで知られるホテルだ。

幾何学図形や直線をモチーフにしたアール・デコ調の建物は、この建物が建てられた1937年に流行していた様式で、建物のデザインは宣教師・実業家であり建築家でもあったウィリアム・メレル・ヴォーリズが手掛けている。

派手さはないが、直線的な特有のデザインや微妙な凹凸に浮かび上がる陰影がとても豊かな表情を見せてくれる建築だ。

昭和初期に建てられた建物は、元々は佐藤新興生活館という欧米の生活様式やマナーを啓蒙するための研修施設 として建設されたものだったが、戦時中は帝国海軍に徴用されたり、戦後には連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)に接収されたりと歴史の渦の中で様々な使われ方をした歴史がある。

そんな建物が現在のホテルに近いた形になったのは、接収解除後の1954年のこと。当時は西洋的なホテルというものは東京にもほとんどなかったが、元々宿舎の機能も備えていた建物を改修してホテルとなったのだ。
GHQに接収されていた時代にHILLTOPという名で呼ばれていたことにちなんで、山の上ホテルという名となったのもこの時だ。

そんな山の上ホテルの地下にあるのが、今日の目的地であるコーヒーパーラーヒルトップだ。

ホテルの中からは地下にあたるが、敷地には大きな高低差があるので、北側の入口からは地上階にみえる、光あふれるパーラーとなっている。

鬼平犯科帳などの著作でも知られ、大のグルメでもあった池波正太郎もこのパーラーヒルトップの常連だったそうで、店内には池波正太郎の描いた絵がいくつも飾られている。

2024年の閉館が発表されてからは、連日朝早くから行列ができるほどの人気ぶりで、私も朝9時過ぎから万全の体制で訪れた。
それでも順番は20番前後で、開店から約1時間半後の13:00ごろの入店となった。

自然光がたっぷり降り注ぎ、シャンデリアや間接照明による豊かな陰影が店内を彩る素敵な空間が広がる。

席につき、ふとテーブルに惹かれたレースマットに目にやると、さりげなくhilltop hotelの文字があしらわれていたりと、細かなデザインもとても素敵だ。

そんなコーヒーパーラーヒルトップでいただいたのは、こちらの水出しコーヒーゼリー アイスクリーム添え。

数量限定で提供される山の上ホテルの隠れ人気デザートだ。
山の上ホテルの水出しコーヒーは、氷を入れた冷水で10時間以上かけて一滴一滴抽出したこだわりで知られるが、そんなこだわりのコーヒーを贅沢に使った至高の逸品だ。

濃厚だけれどクリアで深い味わいのコーヒーゼリーと、甘いバニラアイスの相性も抜群で、まさに至高の一品といっていい味わいだ。

メニューはパフェやケーキなどどれもこだわりの品々を揃えているが、もう一つを欠かせないのがこちらのプリンアラモードだ。

白鳥を形どったシュークリームがトレードマークのプリンアラモードは、山の上ホテルらしい気品あふれる姿で私達を魅了する。

濃厚なバニラアイスと季節のフルーツがたっぷりと盛り付けられた豪華なプリンアラモードは、水出しコーヒーゼリーと合わせて山の上ホテルの看板メニューとなっている。

2.モダンだけれど年月が積み重なった建築を堪能

甘いものを堪能した後は、少しだけ建物を見学。
コーヒーパーラーヒルトップに向かう地下の廊下には、山の上ホテルの足跡を記した本型のボードがあり興味深かった。

タイルなどの素材の使い方も面白く、例えば階段では透かし風のデザインで重厚さと軽やかさを対比させていたり、長い廊下では導くようなライン状のタイルが設えられていたりと見どころが満載だ。

また、場所場所のポイントとなるスポットは、必ずアイキャッチとなるような異なるデザインのタイルが施されているのも素敵だ。

かつての文豪達のように通い詰めたわけではないけれど、どこか懐かしく居心地の良い空間は、建物のデザインに加えそれを守り受け継いできた人々の努力と愛情が感じられる。

モダンだけれど、長い年月の積み重ねによって蓄積された風格が山の上ホテルの魅了なのだと改めて実感する。

【山の上ホテル 施設情報】
住所:東京都千代田区神田駿河台1-1
行き方:御茶ノ水駅より歩いて約5分、神保町駅より歩いて約6分
竣工:昭和12年
原設計:ウィリアム・メレル・ヴォーリズ
改修設計:アトリエアイ(昭和55年)、一粒社ヴォーリズ建築事務所(令和元年)
コーヒーパーラーヒルトップ営業時間:11:30~21:00
その他:2024年の2月13日より建物の老朽化への対応のため長期休館
公式Webサイト:https://www.yamanoue-hotel.co.jp/

3.あわせて訪れたいおススメのグルメ建築

せっかくなので、山の上ホテルとあわせて訪れたい御茶ノ水近辺の建築についても紹介したい。
(御茶ノ水には本当に素敵な建築が多いが、ここでは食事もできるおススメ建築として2建築を紹介する)

まずはじめに紹介するmAAch マーチ エキュート 神田万世橋は1912年(明治45年)に開業した旧万世橋駅の鉄道遺構をコンバージョンした商業空間だ。
近代遺構を活かし、新旧が対比されるようにデザインされた商空間も魅力的だが、「2013プラットホーム」と呼ばれるプラットフォーム跡のスペースも注目だ。

このプラットフォーム跡につくられたプラチナフィッシュは、世界で一番電車に近いレストラン・カフェと呼ばれるちょっと変わったスポットだ。
2つの線路に挟まれたカフェスペースでは、間近で電車の通り過ぎるのを感じながら食事を堪能できて、電車好きでなくとも興奮すること間違いなしのおススメのレストランとなっている。
マーチ エキュート 神田万世橋では他にも、生姜正油ラーメン専門店たかのクラフトビアバー常陸野ブルーイング・ラボなどバラエティに富んだラインナップのお店があるので、気分や目的に応じて使い分けられるのも嬉しい。

【マーチ エキュート 神田万世橋 施設情報】
住所:東京都千代田区神田須田町1-25-4
行き方:御茶ノ水駅より歩いて約7分
竣工:平成25年
設計:JR東日本建築設計事務所+みかんぐみ
営業時間:
 月曜日~土曜日 11:00~23:00
 日曜日・祝日 11:00~21:00
公式Webサイト:https://platinumfish.jp/

続いて紹介する神田明神は江戸城の表鬼門に位置し、730年創建の由緒ある神社だ。

「仕事運」や「商売繁昌」のご利益からビジネスマンや企業の初詣スポットとしても有名なので、ニュースなどでその名を聞いたことがあるかもしれないが建築も中々見応えがある。
社殿の設計は伊東忠太、大江新太郎、佐藤功一といった日本建築史に残る重鎮たちによるもので、当時は最新の技術であった鉄筋コンクリートでつくられつつも見事なデザインとなった神社建築を体験できる。

また、2018年に境内に建てられた神田明神文化交流館(鹿島建設+乃村工藝社)では伝統の技法や空間モチーフとスタイリッシュで現代的なデザインが交錯する隠れた注目スポットだ。
館内のEDOCCO CAFÉ MASU MASUではうどんやカレーといった定番フードメニューから、神社声援(ジンジャエール)などのちょっと変わったメニューが楽しめるオススメのカフェだ。

【神田明神 施設情報】
住所:東京都千代田区外神田2-16
行き方:御茶ノ水駅より歩いて約6分
竣工:1934年
社殿設計:伊東忠太+大江新太郎+佐藤功一
文化交流館設計:鹿島建設+乃村工藝社
公式Webサイト:https://www.kandamyoujin.or.jp/

2024年はじめての投稿となる今回は、御茶ノ水エリアの建築と甘いものを紹介しました。
どの建築も素晴らしい体験をもたらしてくれる名建築なので、皆さんも機会があれば是非訪れてみて下さいね。

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