岡本真/Makoto Okamoto@arg

アカデミック・リソース・ガイド株式会社(arg)代表取締役/プロデューサー 公共的建築…

岡本真/Makoto Okamoto@arg

アカデミック・リソース・ガイド株式会社(arg)代表取締役/プロデューサー 公共的建築の設計者選定プロポーザルについての模索を綴っています。 Chief Proposal Officer (CPO) を目指しています。本気で変革する自治体、ご相談ください。

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設計(者)プロポーザルをリ・デザインする#000:前口上

 ようこそ。そして、こんにちは。アカデミック・リソース・ガイド株式会社(arg)の代表の岡本真(おかもと・まこと)と言います。主に図書館等の文化機関をプロデュースする仕事をしています。  ですが、ここでは、図書館の話ではなく、「設計(者)プロポーザルをリ・デザインする」ことを記していきます。  記し伝え広めていくのは、設計(者)プロポーザルについて「忘れてはいけないこと」と「覚えておきたいこと」です。つまり、「設計(者)プロポーザルをリ・デザインする」ための注意書きのような

    • 設計(者)プロポーザルをリ・デザインする#021:一次提案で求めるもの-多様な職能への要求を明記すべきか

      前回、チーム体制について述べましたが、情報設計、コミュニケーション、防災・減災、専門アドバイザーといった従来はあまり見られなかった職能を含むことを要項に含めるべきでしょうか。 基本的には求める職能は要項に明記すべきと思いますが、重要な前提条件があります。それはその職能が求められてしかるべきプロポーザルであるということです。つまり、そのプロポーザルで求める設計者チームの業務が、そうした新たな職能の必要性を実感させるものである必要があります。たとえば、以前実施した「佐川町新文化

      • 設計(者)プロポーザルをリ・デザインする#020:一次提案で求めるもの-なぜそのチーム体制か

        一次、二次と二段階の選考・審査をするのが一般的ですが、では一次提案では何を求めるのがいいでしょうか。この話題を数回つづっていこうと思います。 一次提案で求めるものの第一要素を私はチーム体制であるべきと考えます。設計(者)プロポーザルは案ではなく、人を選ぶものです。であれば当然、まず聞きたいのはどのような体制でプロポーザルに臨むのか、この一点です。 この際、往々に設計者の体制しか記述を求めない要項を見かけますが、それは避けましょう。いまや、設計は建築設計だけに留まらない仕事

        • 設計(者)プロポーザルをリ・デザインする#019:参加表明を求める是非

          公告と同時に参加表明の受付を始めるプロポーザルは少なくありません。ですが、そもそもこの参加表明の受付に意味はあるでしょうか。あらためて考えてみましょう。 参加表明を求める理由は主に2点と思います。1点目はプロポーザルが無事成立する保障を得るため、いわば安心感のためです。最低でも数者(複数者)、できれば10者以上の参加表明があれば、競争性がある形でプロポーザルが行われることが保障される見込みが高く、担当者としては安心でしょう。その心理はよくわかります。 2点目は参加表明の受付

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        設計(者)プロポーザルをリ・デザインする#000:前口上

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        • プロポーザルのリ・デザイン
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          設計(者)プロポーザルをリ・デザインする#018:第1回委員会の議事録を公開する

          久しぶりの連載再開です。前回は質疑回答について述べましたが、門真市庁舎エリア整備に係るPDO事業プロポーザル方式で関心する取り組みを見たので、議事録の公開について考えていきましょう。 プロポーザル審査にあたっては、通算3回程度の選定・審査委員会が開催されます。1回目はプロポーザル公告の前に行われるのが一般的で、基本的には委員同士の顔合わせと公告内容の読み合わせが主目的です。2回目は一次選考の審査、3回目は二次選考(最終選考)の審査です。 この委員会の議事録は審査結果が公表

          設計(者)プロポーザルをリ・デザインする#018:第1回委員会の議事録を公開する

          設計(者)プロポーザルをリ・デザインする<番外編07>「性善説のプロポーザル改革で、行政の「無駄」をなくす」

          昨夏以降、自分が参加するプロポーザルに追われ、まったく記事更新ができませんでした。相変わらずプロポーザルへの挑戦は続いているのですが、この間のプロポーザルの悲喜こもごもを踏まえて、2024年はもう少し持続的に更新していこうと思います。 さて、再開1回目が番外編で恐縮ですが、私へのインタビュー記事が公開されたので先に紹介します。 新・公民連携最前線インタビュー 「性善説のプロポーザル改革で、行政の「無駄」をなくす」 https://project.nikkeibp.co.jp

          設計(者)プロポーザルをリ・デザインする<番外編07>「性善説のプロポーザル改革で、行政の「無駄」をなくす」

          設計(者)プロポーザルをリ・デザインする<番外編06>国立環境研究所の競争不参加に関するアンケート

          プロポーザルへの参加をさまざまな理由で見送ることがありますが、感心する事例がありました。 ・国立環境研究所 - 令和5年度国立研究開発法人国立環境研究所新研究本館新築基本設計業務[企画競争方式] https://www.nies.go.jp/osirase/chotatsu/kokoku/20230703I1.html では、競争不参加に関するアンケートを行っており、「不参加とされた理由」「本調達についてどのような点を改善すべきと考えますか」という設問をしています。記録の

          設計(者)プロポーザルをリ・デザインする<番外編06>国立環境研究所の競争不参加に関するアンケート

          設計(者)プロポーザルをリ・デザインする#017:質疑回答をどう行うか

          プロポーザルを公告した後、最初の大きなステップが質疑回答(質問回答)ではないでしょうか。公表した書類の記載内容を中心に提案を考える事業者が不明点を質問し、行政サイドは回答するものです。今回はこの質疑回答のあり方を考えます。 例によって最初に、私が望ましいと考えるポイントを示します。 質疑回答は必ずウェブで公開する(メールで個別、あるいは質問者全員に同報で通知しない) 見解をあらためる勇気をもち、あらためるべき点はあらためる(事業者サイドはより開かれた方向への改善を評価す

          設計(者)プロポーザルをリ・デザインする#017:質疑回答をどう行うか

          設計(者)プロポーザルをリ・デザインする#016:提案書の枚数は何枚か

          最近、自分自身が提案書を出す側のプロポーザルが立て込んでおり、ついつい更新できずにいました……。 さて、これから何回か求める提案について述べていきます。 まず最初に提案書の分量の最適値を考えましょう。あくまで私見ですが、A3片面で3枚まで(A4なら5、6枚)が提案書の最適値と考えています。なお、あくまで提案書の話です。実績調書や担当者調書は別勘定ですが、体制図については私は提案書に含むべきだと考えています。なぜなら、プロポーザルが設計者らを選ぶものであるなら、体制は提案内

          設計(者)プロポーザルをリ・デザインする#016:提案書の枚数は何枚か

          設計(者)プロポーザルをリ・デザインする<番外編06>平川市 尾上分庁舎改修工事設計業者選定プロポーザル

          私が選定委員を務める設計者プロポーザルが始まっています。 ・平川市 尾上分庁舎改修工事設計業者選定プロポーザル https://www.city.hirakawa.lg.jp/shigoto/keiyaku/2023-0511-1140-13.html 選定委員会の委員長は北原啓司さん(弘前大学)です。北原さんはこれまでも数多くのプロポーザルを手掛けており、私がプロポーザルのリ・デザインを試みるうえでも常に多大な刺激を受けています。 今回のプロポーザルも参加資格や委員会

          設計(者)プロポーザルをリ・デザインする<番外編06>平川市 尾上分庁舎改修工事設計業者選定プロポーザル

          設計(者)プロポーザルをリ・デザインする#015:参照したい国のガイドライン等と地方自治の原則

          ここから設計(者)プロポーザルの各種書類の書き方に入っていきますが、その前に参照しておきたい国のガイドライン等を紹介します。 ・国土交通省 - 入札・契約手法 https://www.mlit.go.jp/gobuild/gobuild_tk6_000085.html 関係書類はおおむねここに揃っています。特に見ておきたいのは、以下の5点です。 この5点は非常に参考になります。プロポーザルの実施にあたっては、必ず目を通し、常に振り返りましょう。私はプロポーザルのリ・デザ

          設計(者)プロポーザルをリ・デザインする#015:参照したい国のガイドライン等と地方自治の原則

          設計(者)プロポーザルをリ・デザインする#014:提案者は匿名か顕名か

          前回は審査委員会の匿名・顕名を話題にしましたが、今回は提案者の匿名・顕名を論じましょう。 これも先に結論を述べると、提案者名は絶対に顕名であるべきで、公平性の観点からも匿名にするのは避けるべきでしょう。これは審査委員も複数回務めた経験からも言い切れます。よく提案者名が明かされていると情実が働いてしまうという懸念を耳にします。ですが、本当にそうなるでしょうか。 審査委員経験者として言えば、他の審査員と提案者の関係はおおむね推量がつきます。大学の研究室での接点、職歴上の接点、

          設計(者)プロポーザルをリ・デザインする#014:提案者は匿名か顕名か

          設計(者)プロポーザルをリ・デザインする#013:審査委員会は匿名か顕名か

          自分が提案する側のプロポーザルの準備があったり、審査委員を務めるプロポーザルがあったりと少し余裕がなく、前回から日が空いてしまいました。 さて、人選等を述べた審査委員会ですが、委員を匿名とするか、顕名とするかについて述べていませんでした。結論から言うと、プロポーザルをリ・デザインする場合は当然顕名にします。これは絶対です。 そもそも従前のプロポーザルで顕名にせず匿名にする理由がわかりません。よく耳にする説明に選考の公平性を担保し、不正な事前接触を避けるためというものがあり

          設計(者)プロポーザルをリ・デザインする#013:審査委員会は匿名か顕名か

          設計(者)プロポーザルをリ・デザインする#012:行政の無謬性から脱却する

          プロポーザルとは行政が一方的に設計者を選ぶのではなく、実はそのプロポーザルに参加するかという時点で行政も選ばれているのだと前回、書きました。だから、互いに選び合うマッチングという意識が重要なのですが、もう1つ、大事にしたいことがあります。 それはプロポーザルを実施中に規定や解釈に不確かさや誤りがあった場合、勇気を出して誤りを詫びて行いを正すことです。行政としては誤りを認めるのは非常に難しいことでしょう。いわゆる行政の無謬性という伝統もあります。ですが、謝らないことで誤りを正

          設計(者)プロポーザルをリ・デザインする#012:行政の無謬性から脱却する

          設計(者)プロポーザルをリ・デザインする#011:互いに選び合うマッチングという意識

          さて、ゴールデンウィークでも、いやゴールデンウィークだからこそ、時間を確保して書き進めていきたいと思います。ここからしばらくは提案書類についてふれていきますが、その前にプロポーザルとはなにであり、なにでないか、私の原点的な立場を示しておきます。 プロポーザルとは、設計者や設計チームを選ぶものであって設計案を選ぶものではありません。 プロポーザルとは、実施する自治体側が設計者や設計チームを一方的に選ぶものではなく、自治体もまた設計者や設計チームに選ばれるものです。 互いに

          設計(者)プロポーザルをリ・デザインする#011:互いに選び合うマッチングという意識

          設計(者)プロポーザルをリ・デザインする<番外編05>2023年日本建築学会文化賞に新井久敏さん(元 群馬県庁)

          番外編をもう1本、公開します。2023年日本建築学会文化賞が発表されました。 ・日本建築学会 - 2023 年大賞・学会賞・教育賞・著作賞・作品選奨・奨励賞・作品選集新人賞・文化賞 https://www.aij.or.jp/2023/2023prize.html 新井久敏さん(元 群馬県庁)が「設計者選定方式の改善・革新の先導・実践を通じた魅力的な公共建築・まちの創造に資する貢献」で受賞しています。 新井さんとは面識がないのですが、その活動は存じ上げており、影響を受け

          設計(者)プロポーザルをリ・デザインする<番外編05>2023年日本建築学会文化賞に新井久敏さん(元 群馬県庁)