ふと訪れたカフェが、まさかザッハトルテの有名店だったなんて、今日のわたしは勝ち確です。ウィンナーコーヒーだけ飲んであまり長居するつもりもありませんでしたが、今日これからの予定をちょっとくらい狂わせたって、わたしはここでザッハトルテを食べるんだって、そう決めました。

　「ザッハトルテは頼まないんですか？ここのは、ウィーンでも評判の美味しさなんですよ」
注文をとりに来たお兄さんにそう言われたわたしに「いいえ」なんて選択肢はもちろんありません。そっかあ、ウィーンといえばザッハトルテだ！すっかり忘れていました。甘党のわたしったら、なんてことだ。

　注文したザッハトルテが席に運ばれたあと、その艶やかな造形・色を目の当たりにして、写真も撮らずにしばらくじーっと眺めていました。

　かと思えば、カフェのそばを通る道ゆく人々を窓越しに見ては、「いいだろー？わたしこれから、ザッハトルテ食べるんだぞお？羨ましいだろー！」って、意味不明なドヤ顔えっへん。

　ほっぺの落ちるほろ甘さと絶妙な酸味、そしてこのねっとりした食感。こんなの食べちゃったら、ねえ？

ありあのひとり旅日記より抜粋

in Wien, Österreich Dec.2022
CONTAX Aria × Kodak Portra 400