小説が苦手な人も読める本


前書き


小説が好きで興味がない人にも読んでもらうにはと昔考えていて、短編小説集をなるべく安い価格で出版すれば小説にまだ興味がない人にも読んでもらえるんじゃないだろうかと思っていたのですが、良い時代になったものでネット出版やnoteで簡単に販売できるようになりました。
今では無料で小説が読めるサイトがあり、ネット出版でお手ごろ価格な小説がたくさんあるのであまり意味がないかもしれませんがこの本で小説を好きになってもらえたら幸いです。

有屋 春


目次

 1. 願い事を一つだけ その1
 2. 願い事を一つだけ その2 ~生まれる時代を間違えた編~
 3. 幽霊の復讐の
 4. 浮気 その1
 5. 浮気 その2
 6. 浮気 その3
 7. 魔法のピエロ ~後悔の克服編~
 8. 何それ その1
 9. 何それ その2
10. ストーカーは怖いんです
11. 遠距離恋愛 その1 男性目線
12. 遠距離恋愛 その2 女性目線
13. 二人ぼっち
14. 無邪気なこども
15. 真実を知る術はなく起きたことを証明するのは難しく
16. 魔法のピエロ ~指パッチン編~
17. ~愛があればなんでも~
18. 息子の為なら
19. 遠距離恋愛 その3
20. 願い事を一つだけ その3 ~願いをいつでも叶えれるということ編~
21. 願い事を一つだけ その4 ~暴言と罪悪感~
22. 月女子
23. 愛がいない部屋
24. ハートに炎(今日も彼女は炎を求めるver)
25. 不老不死似薬(生きることが幸せか)
26. 不老不死薬(生きることが幸せか その2)
27. 勇敢なる戦士達の最後
28. 勇者召喚とその後
29.パンドラの匣

願い事を一つだけ その1

 今、私の隣には素敵な彼女がいる。ろくでもない親の子に産まれ貧しい生活を余儀なくされたにも関わらず必死に生き、なんとか自立をし生活を始めたという彼女に出会ったのは半年前だった。

最初に会った時、私は彼女のことを特になんとも思わなかった。裕福な家に産まれた私から見ると彼女はひどくみすぼらしい格好をしていると思った。その格好を見た瞬間に魅力がない女性だと思ったしもっといい服を着てこいよと嫌悪感を感じたほどだ。
しかし、彼女と話してみるととても楽しかった。知識は豊富だし、私の話を食い入るように聞いてくれるのも嬉しかった。さりげなく気遣いができ礼儀作法も素晴らしい。私は彼女がとても魅力的な女性だと気づいた。
ただ、服装だけはみすぼらしかったので次の休みにショッピングに誘った。             
なんでも買ってあげようとすると彼女は遠慮した。こういう服は嫌いかい?と聞くと彼女はそういうわけじゃないんだけどと言いながら子供の頃の話を聞かせてくれた。貧しかった生活。そこからなんとか自立したこと。まだお金に余裕がなくて洋服を買えないこと。

 「それでもあなたとは買ってもらえる関係とかじゃなくて対等でいたいの。私にとってあなたは特別だから、、、」
 私はそう言われ気づいたら彼女を抱きしめていた。貧しい生活をしながらもこれほど芯があって心の綺麗な人はそういない。私は彼女に告白をした。

 それから私たちは付き合うことになった。今日は公園で散歩デートをしている。 こういうデートを知ったのも彼女のおかげだ。
 私は高級な洋服店に行ったり高いレストランに行くぐらいしか知らなかったが好きな人がいればお金などいらず散歩するだけで幸せだと気づかせてくれた。  
 これほど素敵な女性を手放してはいけない。私は今日プロポーズをすることを決めていた。
 心臓がバクバクしてる。どのタイミングで指輪を渡そう、そんなことばかり考えているとふと遠目に光るものを見つける。
 彼女と一緒に近づいてみるとそれは古ぼけたランプだった。アニメで見るような魔法のランプの形をしている。
 私と彼女はもしかしたら本物の魔法のランプかもねと笑いながら二人で擦ってみた。するとランプの中からモクモクと煙が出て本当にランプの精が出てきた。

 私と彼女は驚いて声も出せずにいたがそんな私達のことなど全く気にせずランプの精は話し出した。

 「私はランプの精、キキマス。さあ願いを一つ言ってみよ。どんな願い事でも良いぞ」
 私たちは顔を見合わせた。どんな願い事でも一つだと。。

 「あの、二人で一つなんでしょうか?」
 「そうだ。本当は一人一つなんだが主らは二人で同時に擦った。故に二人で一つだけだ」

 なんともてきとうな理由である。しかし二人で一つか。私は彼女に相談しようと隣を見る。彼女はとても真剣な顔で何やら考えていたが一つ深呼吸をしてランプの精に問いかけた。

 「願い事はなんでもいいのね?」
 「ああ、どんな願い事でも良いぞ」
 「一度願い事を言ってから変更は出来る?」
 その言葉を聞くとランプの精はニチャッとした笑みを浮かべながら「出来ない。だからしっかり考えてから答えた方が良いぞ」と言った。

 彼女は一度俺を見て決心したように早口で答えた。私を大金持ちにして!と。 私は驚いた。
 「お、おい!金なら俺が持ってるだろ!なんでそんなことに願い事を使うんだ!」
 「うるさい!豚野郎が!私はずっとあんたのことを気持ち悪いと思ってたよ。親が裕福だからってだけで大した努力もせずにいい大学、いい会社に勤めて呑気に生きやがって!それに、、あんた、私を最初に見たときに軽蔑してたでしょ?私のこと何も知らないで金持ってるだけで偉そうにしやがって!あんたと結婚して玉の輿を狙おうと思ってたけどもうその必要はなくなったわ!さあ、ランプの精さん、私の願いを叶えて!」

 そう彼女が言うとランプの精はさぞおかしいと言わんばかりに高笑いを始めた。
 「ちょっと!笑ってないでさっさと願い事を叶えなさいよ!」
 ランプの精はそれでもしばらく笑っていたがなんとか笑いを我慢して話し始めた。
 「何か勘違いしているようだな。私はランプの精、キキマス(聞きます)。どんな願い事も一つだけ聞いてあげる精霊だ。なかなか面白いやり取りを見せてもらったぞ。さらばだ!」
 そう言うとキキマス(聞きます)はランプの中に戻り、戻り終わるとランプごと消えてしまった。

 ランプが消えた後、そこには何も残っていなかった。その場に残っているものは先ほどの失態をなんとか誤魔化そうとする彼女と何も信じられなくなった私だけだった。。。


願い事を一つだけ その2 ~生まれる時代を間違えた編~
 


 私はモテる。理由は綺麗だから。私が綺麗すぎるため何も言ってないのに私をモデルに制作されたものまであるぐらいである。しかもそれは大量に作られ人気であるらしい。

特に仕事ができるわけでもなく性格がいいわけでもないのに顔とスタイルがいいだけで男たちは私を神のように崇める。
いつも沢山の男たちが私に貢いでくれるため働く必要もなく私は気ままに生きていける。
だから生きていくことに不満を感じたことはない。だが、生きていくことに不満がないだけで満足するものがあるかと言ったら特になかった。
どの男も私のいいなりだが皆ブサイクで見ているだけで吐き気がする。
それから食事。どんな料理でも貢いでもらって食べることができるがどれも美味しくない。
私はこんなに完璧なのに時代だけが追いついてない感じ。きっと、私は生まれる時代を間違えたのだ。

そんなことを思いながら過ごしていた私はある日一人で散歩をしていると妙な物を見つけた。
なんだろうと触っていると急にモクモクと煙が出てきて中から人間ではない何かが出てきた。

「俺はランプの精、カナエルだ。お前の願いを一つだけ叶えてやろう」
急に出てきたカナエルとやらに驚いたがこれはもしかして神様なんだろうか?浮いてるし、願いを叶えてくれると言っているし。
「あなたは神様ですか?」
「神様ではない。俺はランプの精、カナエルだ。まあどんな願い事でも一つ叶えてやる俺の方がお前らにとっては神様かもな」
なるほど。確かにそうだ。皆、神に祈るが叶うわけじゃない。そう考えるとカナエルこそ神様だ。たった一つとは言えどんな願い事も叶えてくれると言っているのだから。

願い事かぁ、欲しいものはなんでも手に入るしなぁ、、、美味しい料理を食べたいけどせっかくの願い事に使うにはもったいない。
それじゃあイケメンを出してもらうとかどうかな。私の魅力があればすぐに好きになってもらえるし。ああ!でも美味しい料理が食べたい!そういえば、、、私はいつも思っていた、生まれる時代を間違えたと。なら適した未来に送ってもらうのはどうだろう。一つの願いで素敵な異性も美味しい料理も手に入る。私はなんて頭がいいんだろう!

「カナエル。私が魅力を感じる異性がいて料理が美味しい時代に送ってもらうことはできる?」
「そんなことか。出来るとも。私は色んな時代で願い事を叶えてきたからお前の好む時代も教えてやれるだろう。ただし、異性の顔は変身していくつか見せて選ばしてやるが料理を食べて年代を選ぶことはできぬ。それは与えることになるからだ。
私は一人に一つしか与える(願い事を叶える)ことができぬのでな。まあ口で説明するぐらいなら出来るぞ」
なるほど。言ってることはもっともだ。まあ料理は今より満足できそうであればいいかな。私はそれで構わないと伝えた。

「それではいくつか変身してみせるから選ぶがいい」
そう言うとカナエルはまず2019年のイケメンの顔に変身した。それを見た瞬間私は即決した。その時代に行こうと。

「カナエル。その時代でお願いするわ」
「ん、まだ一人目だがいいのか?まあ気に入ったのなら何も言うまい。この時代は衣食住が豊かだから美味しい料理があり安全に暮らせる。お前の願いにぴったりだろう」

ええ、本当に。こんなイケメンがいる時代なら私は幸せになれる!ああ!こんなイケメン達が私を取り合ったりするのかな、それを考えただけで顔がにやけてしまう!
私は早く行きたい気持ちを抑え、家に帰り準備を始める。帰る途中、沢山の男が私に声をかけてきたが私はそれを無視した。

家でどの服を着ていこうか悩んでいるとカナエルが話しかけてきた。
「ずいぶんモテているのだな。ここで暮らしたほうがいいんじゃないのか?」
「バカ言わないでよ!あんなブサイクしかいないのにモテたって意味ないじゃない。美人にはイケメンが必要なの!」
「んーまあ私はお前の願いを叶えるだけの存在だから何も言わないが、、、」

カナエルはそう言うと特にやることもないので私の家を物色し始めた。
「ん?これは見たことがあるな」
なんのことだろうとカナエルが見ていたものを見るとそれは私をモデルに作られたものだった。
やはりこれだけ美しいものだと神様も知っているらしい。いや、神様ではないんだけど。
「へえ、カナエル知ってるんだ。やっぱりこれだけ美しい私をモデルに作られたものだと有名なのね」
「ああ、有名だぞ。お前が行く時代で知らないものはいないだろう」

そんなに人気なのか。魅力がありすぎるというのも罪ね。本人がいなくてさぞ悲しんでいることでしょう。すぐにそっちに行くからいくらでも貢いでいいのよ、なんて考えていたら準備が終わった。

「準備できたわ。すぐに送って頂戴」
「いいだろう。ふん!」

カナエルは特に呪文なども唱えなかったが彼女はすでに消えて2019年に送られていた。

「ふぅ、一仕事終えたな。しかし人間とは面白いものよ。自分の本当の願いを理解していないものが多い。あの女は未来でどんな人生を送るんだろうな。まあ美味しい料理は食べられるだろう」

そして先ほど見たものに目を向ける。そこにはとても彼女に似たものがあった。顔はでかく、目は細い。ずんぐりした体型。これはなんと言うのだったか、、、ああ、思い出した。


これは土偶だ。


幽霊の復讐の

私は死んだ。
殺されたのだ。しかも私に非はない。
あれはストーカーだったんだろうか?名前も知らない人から急に告白され、お断りしたら私は刺された。
死ぬまでの間、そいつは愛おしむように私を触り続け、その行為に嫌悪や怒りを感じながらも私はまともに体が動かず悔しさを噛み締めながら死んだのである。

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