クロサキ

クロサキ

最近の記事

『正欲』小説と映画に関するあれこれ

遅ればせながら映画『正欲』を観てきました。 映画鑑賞を前提に原作も読みまして、2つの作品に触れて思ったあれこれを書いていこうと思います。 ※小説・映画ともにネタバレしています。 「多様性」への筆者のスタンス 作品の重要なモチーフとなっている「多様性」。 もしくはその他にもあらゆるものを包含する「political correctness」およびネットミームとしての「ポリコレ」。 (こういう風に、人権に関わる概念や運動を略して単純化する行為は、非常に危険なことでもあると思

    • 『怪物』と『TAR』にノれない理由(わけ)

      映画ファンから熱狂的な支持を受け、今年の映画ランキングを席巻しそうな『怪物』と『TAR』だけど、個人的にはノれていない。 「実はそんなに余白のない物語を、豊かな余白(多様な解釈や味わい)があるかのように語っているのでは」というのが2作に共通して感じているモヤモヤ。 2作とも、パズル的な構成・語り口を採用しているけれども、主軸となる人物の行動原理は明快.....いっちゃえば割と単純。 もちろん「分かりやすい」行動原理を主軸に据えること自体は問題ない。むしろ映画にはそのほうが

      • デヴィッド・フィンチャーと実存主義

        デヴィッド・フィンチャーのフィルモグラフィを概観しながら、彼のストーリー的なテーマとして重要と思われる『実存主義』と各作品のあらすじとの符合を、つらつらと書いていくnoteです。映像技術の面には言及していません。 あと最初に言い訳しておきます。 雑記です!大してまとまってません! 実存主義浅学な身の上(いや謙遜でもなんでもなくマジ)であるので、非常に雑な認識であるとは思うが、実存主義とは「人間の生きる意味を、自身と世界との関係性の中で見出し、決定していく」ものであると捉えて

        • 火の運び手〜『ザ・ロード』から『悪の法則』への接続

          ※『ザ・ロード』『ノーカントリー』『悪の法則』の内容に触れています。 火 コーマック・マッカーシーの作品群における"火"とは何か。 『ザ・ロード』では、少年の無垢な心、ひいては人間の善性や希望の象徴であるように思える。 しかしマッカーシーの他作『血と暴力の国』『悪の法則』と比較すると、もう一つの象りが見えてくる。 プロメテウス マッカーシーは、ギリシア神話の"プロメテウスの火“をモチーフにしているのではないだろうか。 挿話にて、最高神ゼウスは、神々と人間を明確に区別す

        『正欲』小説と映画に関するあれこれ

          外山恒一氏への疑問・ツッコミ。『小山田圭吾問題の最終的解決』について。

          ※ 本文は他記事からへの引用も含め、13,000字ほどです。 最低限に抑えるよう務めましたが、凄惨ないじめに関する描写がございます。その点ご注意ください。 また、当方noteでの執筆は初となります。 恐れ入りますが、不備・不足があればご指摘くださいませ。 ●まえがき はじめまして。ハンドルネーム:クロサキと申します。 このノートは、外山恒一氏による『小山田圭吾問題の最終的解決』に疑義を呈するために書かれたものです。 ○筆者のスタンス まず、私の立場を書いておきます。単なる

          外山恒一氏への疑問・ツッコミ。『小山田圭吾問題の最終的解決』について。