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苦労の拡散と、魅力の拡散

安易な飼育(=不幸なペット)を防ぐため「ペット飼育ってこんなに大変。お金、時間、手間、老化や病気…etc」とはよく言われます。これはある意味ネガキャンの一種で、こうしてハードルを上げれば基本的にペットを飼う人は絞り込まれて減るはずなのですが、それでもペット人気というのは根強いものです。禁欲的で正しい飼育啓蒙よりも、可愛さなどの魅力の拡散の方が勝っているからです。

似たようなネガキャンは人間の子供にも見られます。「親の苦労」や「子の不幸」を訴える投稿やニュースを挙げれば、それはもうキリがありません。一方で人間の子供にはペットと違って「人権」があり、プライバシー保護など以前よりもずっとガッチリと守られています。ですから、遠慮なく写真をバンバン載せられているペットに比べるとその魅力については大きく拡散されません。ネガキャン側が有利な作りになっています。

2023年の出生数予測は前年比5.5%減の72万人ほどになるといいます。少子化への問題意識は広く共有されて久しいですが、歯止めがかかるどころかどんどん加速していっています。

出産や子育てに関する「親の大変さ」「子の不幸」などのネガティブなストーリーは、世論を動かす交渉材料として優遇策を引き出すため特にネットでは頻繁に使われてきました。その甲斐もあってかここ数年は保育園や育休制度など色々な手が打たれたものの、成果は出ていません。それどころか「実は効果が薄いのではないか?」ということに気づきつつある人も徐々に目立ち始めてきたように思えます。

仕組みづくりとしてまだ発展途上なのだと言えばそうですが、繰り返される「まだ足りない」という要求に対する不信感も以前より随分と強まっています。SNSを初めとした近年の主要メディアが与えた影響を鑑みると、短期的には政策などの物事が動いたように見えて、同時に長期的にはこれから親になる後進世代を心理的に萎縮させてしまっているのではないかと思います。

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