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Chips|アンティーク・コレクター2級を取得しました!

一般社団法人 西洋アンティーク鑑定検定試験協会が主催するアンティーク検定2級を取得しました! 3級については前回を参照ください。

2級は講習でのみ取得できます。講習費87,000円に驚きつつ、「まあ、昼食費やお茶代(?)、場所代、鑑定品代(?)もあるし、協会の収入源だろうし、何より講習を受ければ漏れなく取得できるんだし」と受講しました(疑念満点)。

4日間のアンティーク検定講習

10〜11月の4日間、東京芸術劇場 会議室で講義が行われ、建物見学として赤坂迎賓館と東京都庭園美術館を訪問しました。
今回2級の講習を受けたのはアンティークを販売している方やコレクターさんなど6名、なんと福岡から来た方もいました。私が一番アンティークに染まっていない素人でしたが、ゴリゴリのセレブの集まりといった雰囲気はなく、和やかに講習を受けることができました。安堵の思い。

教科書2冊とルーペ・白手袋を用意

10月14-15日 講習前半

10月14日

テーブルウェアや西洋美術史の講義、鑑定について、1級に向けての対策を行いました。

テーブルウェアの歴史を学ぶ機会はなかったので、その種類や時代背景は興味深かったです。ヨーロッパの宮廷を描いた映画や美術館の再現展示では、テーブルの中心に置き物や燭台が置かれていたり、大皿に料理が盛られたり、お菓子がモリモリになっていますよね。あれは賓客を招いた晩餐会などで権力を示すためで、高さを出して華やかに見せているのだそう。
西洋美術史は学生時代のおさらいという感じで聞いていました。まかせろ。

実際に鑑定にも挑戦! それぞれ品を選んで産地や用途を答えます。現代の生活では使わないものもあり、材質しか判別できなくて難しかったです。
流石に鑑定は一朝一夕ではできませんね。

鑑定の定義とディスクリプションの作り方では、コレクターさんに向けて鑑定品の情報を伝えるテキストについて学びました。買ってもらうためのテキストなので、時代や産地といった基本情報だけでなく、信用性をもたせる来歴(過去の所有者・美術館といった経歴)、貴重さや状態の良さのような購買意欲につながる情報も入れます。同じ言葉でも、美術史でのディスクリプション(作品の見た目を言葉で描写する)とは違うのですね。

充実のレジュメ

10月15日

午前中はzoomにてアンティークマーケットや建築・家具について学び、午後からは迎賓館赤坂離宮を見学しました!

アンティークというよりアートマーケットについての講義で、アメリカ・イギリス・中国がアートマーケットの8割を締める(2022年時点)というのが意外でした。かつてはフランスも活況だったらしいのですが。
日本はマーケットが小さく、建築的に飾る場所がないことや鑑賞する層と購入する層が一致していないこと、消費行動の変化など、その理由は複合的なものと考えられます。

迎賓館赤坂離宮には何年か前にも、友人たちと見学に行きました。その時は建築や家具、アンティークの知識はなかったので、豪華な部屋を淡々とみていった印象と条約締結のポーズで写真を撮ったことくらいしか覚えていませんでした。
けれど、様式について学んでから見学すると「ネオ・ゴシックと紹介されているけれど内装はアンピール様式(ナポレオンが好んだ古典・エジプト・軍事の意匠が使われたスタイル)だな」「壁面や天井のレリーフにはコテ絵や欄間彫刻の技術も生かされているのだろうか」と、たくさんの気付きがありました。

協会の公式ブログにもレポートがあります。

11月11-12日 講習後半

11月11日

後半は、ジュエリーの歴史やモード史、複製芸術(版画・写真)、銀器と盛りだくさんの講習から始まります。

ジュエリーの歴史に関して、卒論でデザインの変遷はさらったものの、素材の産地や供給、宝石のカット技術については大変勉強になりました。インド人の宝石商が多いのは経済的に好調だからと思っていたのですが、古くから宝石の産地で高い技術力もあったようです。
講義では、ジュエリーやカットした宝石・原石を実際に手にとって観察でき、貴重な体験をさせていただきました。

銀器の講義でも、ルーペで刻印を探す実習をしました。
銀器には純分(純度)やメーカーが、数字やイニシャル、ワシの頭などのマークで押されています。決まったところに押されているわけでもない上に、小さく摩耗していることもあって、ルーペで食い入るようにみながら「これか?」「何だ?」と揃って首を傾げておりました。

複製芸術でも、版画の技法を学んだ後に作品を鑑賞しました。版画の技法は、何度説明を読んでも図解をみても覚えられなくて、いい加減覚えたい。

プレゼントの銀器とポスター

この日は鑑定品のプレゼントがあり、銀製のナイフ&フォークをいただきました!
銀器を販売している受講者さんがいらっしゃったので、お手入れ方法もお聞きできました。うっかり洗剤で洗うところでした。優雅なパンケーキタイムに使うぞ!

11月12日

この日は午前中にアール・ヌーヴォー&アール・デコのzoom講義、午後から東京都庭園美術館を見学しました。

アール・ヌーヴォーもアール・デコ短い期間に流行した様式ですが、幅広いジャンルや国に波及しました。ミュシャやガレといった名前の知られた作家が多く華やかなアール・ヌーヴォーにくらべ、産業の発展を背景とした幾何学的なモチーフのアール・デコは、人気はあれど、代表的な作家というとパッとは思いつきません。
講義で挙げられた作家について、少しずつ知っていこうと思いました。

そして東京都庭園美術館は、本協会の監修もされている美術評論家の岡部昌幸さんのガイドで周りました! 岡部さんは90年代の展覧会にも関わっていたそうで、美術館の歴史や建築、庭園(実は日本庭園と茶室があります)について、隅々まで解説いただきました。

正面入口側
庭園から

美術館には何度も訪れていますが、岡部さんの解説で初めて知ること・気付くことばかりで、知らないとみえてこないものだと痛感しました。
当時最先端だったアール・デコ様式の建築ですが、古典様式である柱の多用や天井付近の装飾(パルテノン神殿のイメージ)、またアーチやモザイクなどの過去の様式を踏襲することで、クラシカルで堂々としたものになっています。

展覧会「装飾の庭 朝香宮邸のアール・デコと庭園芸術」では、アール・デコ博で芸術分野のひとつに庭園が取り上げられていたことに着目し、自然や植物をモチーフにした工芸・絵画・版画作品、アール・デコ博に関する資料や朝香宮邸(現・東京都庭園美術館)の資料などが展示されていました。

この美術館の内装を手掛けたのは、フランスの美術装飾家アンリ・ラパン。森のなかの邸宅と聞いて、応接室の壁に森の絵を描きました。そこから庭に出られる仕様になっていて、森と建物をつなぐイメージだったのかもしれません。
ラパンは絵画作品も展示されていましたが、温かみのある鮮やかな色彩は、どこか南国のような雰囲気もあります。この時代にスピードや硬質さを表現した絵画がある一方、このような絵画があるのは、機械文明への賛美と同時に反動もあったのだろうと思います。

協会ブログの後編です。

ディプロマ授与

見学の後は、美術館のカフェでケーキとお茶をいただきながら、いよいよ修了認定証の授与式です。ディプロマと言うと大層な響きですね。

こうして4日間の講習を経て、アンティーク・コレクター2級を取得しました。
ですが、多少知識がついたくらいで、アンティーク業界に詳しくなったわけでも、アンティークの鑑定ができるわけでもありません。何しろアンティークの幅は広く、美術も工芸もそうですが、鑑賞眼・観察眼を養うには経験の積み重ねが必要です。

なかなかアンティーク・ショップや骨董店に入るのは勇気が入りますが、アンティークに触れる機会を増やして、自分はどんなものが好きか探っていきたいです。

1級も頑張ればいけそうな気がするので、受験も考えています。

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