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「たったひとつのお気に入り」のアートを見つける方法

今回は、恋の話から♪(o^^o)

たったひとりの人を好きになる…つまり「恋に落ちる」という経験があるかないかでは、社会の見え方というのは随分と違うものになるんじゃないかな〜なんて思います。
ひとりの人を好きになるという経験があれば、その後の人生においても人と出会うことに希望を持てる。人生そのものを楽しめる。そんな気がします。

そして、アートの話。
このコラムを読んでいただいている方はアート好きの方が多いのではないかと思いますが、そんな方は,何かしら、印象深い作品と出会った経験、というのがあるかもしれません。

ふらりと美術館に足を踏み入れ、ひとつの作品に衝撃を受けるという体験をしたことのある人は、幸せです。

自分自身振り返ると、子どもの頃にまったく美術館に行ったことがなかった、というわけではないのですが、残念ながらそこで深い感銘を受け、アート好きになる、ということはありませんでした。せいぜい「きれいだな」「上手だな」と思う程度。きっと、今でも世の中の大多数の人にとって、アートとはその程度のものではないかと思うのです。

福岡市美術館で、『物・語ー近代日本の静物画』(2016年)という展覧会を開催した際、「ものを語る」という、静物画に描かれた「物」についての詩をつくる、というワークショップがありました。展示されている作品の中から、各自、ひとつの作品を選び、即興で原稿用紙に詩を書く、というものです。参加者が少なかったので私も一般参加者に混ざって参加してみたのですが、これがなかなかおもしろかったんですよ!

たくさんの展示作品の中から、ひとつの作品を選ぶ。そして、しばし、その作品とじっくり対峙する。詩を書くために、その絵が描かれた背景をいろいろ想像してみる。そうすると、不思議なことに今まで見えなかったものが次々と見えてくる。作品を通して、作家がこの作品を描いた時の思いと、少しだけシンクロしたような気分になれたのです。

このような工程をひとりでできるようになれば、立派なアートファンなのでしょうが、多くの人には、このような「イベント」という器がなければ、ひとつの作品に入り込むことはできないでしょう。

そうそう、福岡アジア美術館でも5月のミュージアムウィークの期間、観覧者にひとつの作品をじっくり観るよう促すイベント「あじコレ絵日記」がありました。ちょうど,以前noteでご紹介したザオ・ウーキーの作品を描いたものが公式ツイッターで紹介されていました。

この「絵日記」に対する,学芸員のコメントもステキです(^^)

美術館では、このような「自分でお気に入りの作品を見つける」という類のイベントが、時折、ひっそりと、開催されています。そう,この手の地味なイベントは,残念ながら本当に届けたい「アートファンではない大多数の人」には気づいてもらえないことが多いような気がします。恥ずかしながら先に紹介した「ものを語る」というワークショップも,参加者はわずか数人…。美術館は、本当に届けたい人に確実に届けるために、もっとプランニング力とプロモーション力に磨きをかけなくてはいけませんね

みなさん,そんなイベントを見つけたら、どうぞ参加してみましょう。そして、「たったひとつの、お気に入りの作品」を見つけてみませんか。

できれば、家から近い、あなたのまちの美術館の、いつも展示されているようなコレクションの中のひとつがいいですね。「たったひとつのお気に入り」を見つけたら、「お気に入り」に会うために、美術館に行くのが楽しみになりますよ。

そんな「たったひとつのお気に入り」ができれば,きっと,今までただの公共建築物だった美術館が,「わたしのまちの美術館」になります♪