見出し画像

統計学の社会的意義を知る 〜3〜

多種多様で膨大なデータ(情報)から本質的なことを得るには、統計学の知識が必要不可欠です。近年ではビッグデータの登場により、統計学の存在感が強まりつつあります。

そんな統計学の話の続編です。前に書いた通り、統計学は「記述統計学」「推測統計学」の2種類のアプローチがあります。前回は推測統計学の話をしました。

そして、今回は統計学の応用編で「統計力学」と呼ばれる学問に触れていきます。皆さんは聞いたことはあるでしょうか。

統計力学は「熱力学」と強い繋がりがあります。熱や温度というものは、量子力学で学ぶ運動やエネルギーという概念と密接な関係にあります。

沢山の電子や原子でできた物質の性質を理解し、相転移や化学反応、電気伝導を制御する。その際に欠かせない考え方なのです。

統計力学と熱力学の関係

そもそも物質(物体)は、アボガドロ数個(およそ10の24乗個、1兆個の1兆倍ほど)の原子で構成されています。そして、それぞれの原子は1個の原子核と数個から数十個の電子から構成されています。

こうした大規模な集団の運動を統計学の知識で理解するのが、統計力学と呼ばれる学問です。

先ほど、統計力学は熱力学と密接な関係があると言いました。実際に、熱力学で習うエントロピーは確率統計の知識を使うと、大規模な集団の運動の乱雑さと等価と考えられます。

エントロピーとは、不可逆性や不規則性を含む特殊な状態を表すときに用いられる用語です。全ての熱を伴う物質は「温度の高い方から低い方へ流れる」という方向性を持ち合わせています。

エントロピーは言うなれば「異なる原子群が不規則な配置を示す程度」を表す指標です。不規則な状態が強いほどエントロピーが高いことになります。一度でも平衡状態が破られると、異なる原子群が混ざり合いながら、次第に安定状態に落ち着きます。

こうした多量にある原子群の振る舞い(エントロピーの変化)を統計学の知識を利用して把握すること。それが統計力学の主たる内容になります。

身近な現象から統計力学に触れる

統計力学はミクロな要素とマクロな現象をつなぎ合わせる役割を持ちます。これは身近なスケールで起きている現象でも説明できます。

例えば、熱湯と冷水を混ぜるとぬるま湯になります。これは誰にでも分かることです。ところが、ゆるま湯がどれくらいの温度の熱湯と冷水を混ぜてできたのかと問われたら、おそらく誰も分からないでしょう。

偏りのある状態が均一な状態に向かうこと。均一な状態に落ち着いたら、元々はどんな状態だったかという情報が失われること。これらは、熱力学の基礎にある事実でもあります。

一方で、逆の変化はなぜ起きないのか。混ぜる前の情報は何故失われてしまうのかということは、実はまだ十分には理解されていません。

この辺の問題は原子郡の運動をどう捉えるかが鍵になります。ランダムな原子運動から一定の状態を推定するために、統計力学が用いられるのです。

ランダムな状態を解析すること

水は多くの水分子からできています。そして、個々の水分子の運動はミクロの世界を記述する量子力学のシュレディンガー方程式に従います。

つまり、水分子の集団のシュレディンガー方程式が分かれば、先ほどの混ぜる前の状態の情報が完全に失われる理由も分かりそうです。

しかしながら、現実は水分子の性質は理解できても、マクロな水の振る舞いを導くことはできないのです。

その理由は、熱湯と冷水からぬるま湯ができる現象というものが「水特有のものではない」ためです。この現象は、高温の酸素と低温の酸素を混ぜて室温の酸素ができたり、熱した鉄板を冷たい鉄板に置くと両方同じ温度になるように、構成する原子郡の種類に関係なく成り立ちます。

つまり、こうしたマクロな現象を統一的に説明しようとするときには、分子の種類をはじめとするミクロな情報のすべてが有るだけでは十分ではなく、むしろ大半のミクロな情報は捨てて、その現象に対して本質的な要素だけをうまく拾い上げることが重要になるのです。

この本質的な要素を抜き出す作業は、統計学でも出てくる考え方です。故に、統計力学として発展してきたと言えます。

おわりに

今回は統計力学について解説しました。原子の振る舞いという問題を、統計学の知識を利用して求める(推定する)ことが本質です。

統計学は私もまだ未習得の分野なので、十分な説明にはなりませんでしたが、これからも時間を見て勉強していければと思います。

-------------------------

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。実際は非定期ですが、毎日更新する気持ちで取り組んでいます。あなたの人生の新たな1ページに寄り添えたら幸いです。何卒よろしくお願いいたします。

-------------------------

⭐︎⭐︎⭐︎ プロフィール ⭐︎⭐︎⭐︎

⭐︎⭐︎⭐︎ ロードマップ ⭐︎⭐︎⭐︎


この記事が参加している募集

数学がすき

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?