《ふわふわショートストーリー》モジャネコ

ここは。

ねこの落ち葉屋さん。

お店をしているのはモジャネコ。
風呂敷包みひとつでやっている。
いつどこでオープンするかは分からない。

モジャネコは色々な落ち葉が混ざったようなとても素敵な色の毛並みで、こだわりのもじゃもじゃ。
いつも地面に寝転がっては丁度よく、もじゃつかせて、お気に入りのもじゃつき具合があるらしい。たまに落ち葉をアクセサリーにする。

今日は公園の芝生の上が暖かいからかな、
そこでオープンしているみたい。

「わぁ、ねこちゃん、もじゃもじゃ!」

やってきたのは、若い女性。ランチ休憩なのか制服姿で小さなバッグ。

モジャネコは風呂敷を前に座っている。
チラッとお客さまを見て、しっぽをふわっとさせた。

お気に入りの紫の風呂敷はくたびれているけれど、今日も選りすぐりの落ち葉が8枚並べてある。

モジャネコが今朝拾ったもの。
全部フィーリング、大好きと思ったもの。
紅いの、黄色の、茶色の、緑の、形も様々。

「これは選んでいいの?あなたのお店?
全部可愛い〜!きゃー可愛いすぎ。
えー、ねこちゃんもめちゃくちゃ可愛い!」

モジャネコはまたチラッとお客さまを見て、
ちょっと笑ったような顔をした。

「えー、どれも可愛いなぁ。これはー。」

お客さまが1枚の落ち葉を手に取ろうとしたそのとき、

はたっ!

モジャネコのまんまるな手に押さえられた。

「え…、なに…、きゃわいいー!」

モジャネコはすっと手をひっこめる。
また何もなかったかのように座っている。

「え、じゃ、これ、」

お客さまはまた違う落ち葉を手に取ろうとしつつモジャネコをみつめた。

はたっ!

モジャネコのまんまるの手がやはり飛んでくる。

「!」

お客さまは瞳が輝いて猫みたいになっている。

そのやり取り、はたはた、8回。

「はぁ、はぁ、うふふふふ。」

お客さまは紅葉した落ち葉のように顔が赤くなり、幸せそう。
ちょっと興奮した猫みたい。

モジャネコはしっぽをふわふわ振って、
おもむろに風呂敷を畳みはじめた。

「え。もう、しまっちゃうの?」

すると、モジャネコはお客さまに近寄り背を向ける。

「どうしたの?撫でていいの?」

ゆっくりゆっくりとお客さまはモジャネコの頭からしっぽまで、すぅっとすぅっと撫でた。
モジャネコはとても気持ちよさげ。

「ふわふわだね。本当可愛いね。」

すると、モジャネコはなんともいえず、艶々な綺麗な猫になった。

「あら、あなた、なんだかイメージ変わるのね!今も、とても素敵!」

その言葉を聞くと、モジャネコは満足気に
ギャアと鳴いた。

「え、声はワイルドなのね、ふふ。」

モジャネコはすっと風呂敷をかつぐと、その場を離れていく。

「あ、ありがとう!とても楽しかった!」

お客さまはモジャネコの後ろ姿に向かって呼びかけた。

モジャネコは今はなんだかすっきり綺麗な猫姿で、振り返り、ギャと鳴いて笑った。

え、落ち葉屋さんじゃなかったのかって?

どうなんでしょう?

落ち葉遊び屋さんだったのかなぁ。

           お し ま い


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