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◆わたしが六花亭を推す理由

ショッキングなことがあった。
会社に、帯広出身の同僚がいる。
わたしが他の同僚に向かって『わたしはガチで六花亭のファンなんだ』と話していた時のことである。帯広出身の同僚がぽつりと言ったのだ。

六花亭って……そんなにイイすかねえ?

瞬時に六花亭disの気配を嗅ぎ取ったわたしは、んー?と言いながら彼の方を振り向いた。
もしかすると花山薫みたいな顔になりかけた内心が表情に出ていたのかもしれない。ただならぬ気配に慄いたのか、同僚は小さな声で『いや…帯広いると子供の頃から何かってーと六花亭だから…有難みがなくて…』と宣ったのだった。

有り難がれよ!!!

と、声を大にして言いたかった。
言わなかったけど。
あぁ~そうだよねえ~生まれたときから街に六花亭があるんだもんねえ~そりゃそっかあ飽きもするかあ~でも羨ましいなあ~えへへへへ~しか言えなかったけど。
ひとつだけきっぱりと伝えたことがある。

『とにかく、一度でいいから中札内村の六花亭アートヴィレッジに行ってごらんなさい』

これだけは、絶対に言わなければならなかったのだ。
同僚はわたしの猛プッシュが気色悪かったのか、やはり小さな声で『あ…へえ…今度行ってみようかな…』と答えたのだった。
ごめんね。今度もっとちゃんとソフトに説明するからね。

で、だ。
実際のところわたしに言わせれば、六花亭アートヴィレッジを知らずして六花亭を知ったことにはならんとまで思っている。
いや、嘘。北からマウントにも程があるねごめんね。ちがうの。行って欲しいの。
マルセイバターサンドが好きなだけのあなたも、そんなに好きじゃないあなたも、あの場所だけは行って欲しい。

わたしは、マルセイバターサンドがそんなに好きじゃなかったけど、あそこに行ってから大好きになった女なのです。

ここからは少し長くなるので、興味のある方だけ読んでくだされば幸い。

さて。
あれは2023年の5月のことでした。
その頃わたしと夫は子供がいないゆえについつい余りがちになる時間を有効活用するべく、道の駅めぐりにハマっていた。
どうせあちら方面に行くなら、と、大樹・忠類・中札内の3つを制覇してしまおうかという話になり、案外早くにスタンプを押し終わってしまった春先の午後。
何しろ土地勘もないのでGoogleさんを頼らなければ何ひとつわからん。
とりあえず近場に何かないかなーと検索してみた結果、一番上にあったのが

【六花亭アートヴィレッジ 中札内美術村】

だったのである。

幸い夫婦共にたまに美術館めぐりする程度にはアート系の展示が好きだったので、どうせ時間もあるしと直行した。
道の駅ではご飯も食べ損ねていたので、そこに行けば何かあるかねー、ぐらいの軽い気持ちで。
そしたら『は?こんなとこにそんなご大層なものがあるの?』みたいな田舎道に、信じられないくらい美しい世界が広がっていたのでした。

駐車場付近の野原に点在する彫刻たち

まず広々とした駐車場に車を停め、美術館???的な何かがあるのかな??と思しき建物や林の方へ向かって歩いて行くと、芝生の中に彫刻がいくつか点在していた。
この時点では『おお~雰囲気ある~』なんつってね。
『今時、駐車料金も取らないなんて良心的な企業だねえ』なんて言いながらぶらぶら、優しい春の陽射しが注ぐ道をてくてく歩いてるくらいの感じ。
ただ、彫刻がかなり立派だったので『チョロ見せはここまでかな…いくらぐらいすんのかな…』と地味に入場料が気になってはいたのでした。

次に目に入ったのは

時期になったらさぞ様々な花が咲くであろう庭園

すんげえ広くて立派な庭園。
人よさそうなおじさんが道ゆく人に会釈しながらニコニコとお庭を手入れしてる。
ファンタジー漫画に出てくる中世のお金持ちの庭みたいな風景に、ちょうど庭いじりにハマり始めていた夫のテンションは爆上がり。
とりあえず受付みたいなところに行って、入場料払ったりパンフレットもらったりしよーと、どんどん進んで行ったのだが。

受付っぽい人が見当たらん。
途中、何か『全部の美術館を回ったら賞品が当たるよ!』みたいなぺらチラシはもらったが、行けども行けども【入場料○○円】みたいな看板が見当たらないのである。
この辺で『え…?まさかこの見事な石畳の林の中の散歩道が無料で歩けちゃうの?』と驚き始めていたのだが、だいたい今のアミューズメントパークだの何だのはさ、中でも施設ごとにべらぼうにお金がかかるじゃない。
ましてやここは敷地内に6つだか7つだかもっとだかの美術館がひしめきあう施設。それなら美術館ごとに多少の入場料がかかるんだろうねー、なんつってあちこちの美術館に足を踏み入れてみたら。

ない。どこにも。
入場料を払う受付が。

それどころか『広くてお疲れになったでしょう』とか言いながらお茶とお菓子まで出してくれた。タダで。

え?何で?

施設のあちこちには、どこからか移設してきたのだという歴史的建造物が美術館となって大切に保存されていた。
それも、ただ保存するのではなく、訪れた人の誰もが見られるような形で。
美術館のひとつでは、全国の高校生たちから募集したのだという自画像がところ狭しと飾られていた。
小さな林の中には石畳の道が敷かれ、綺麗な小川が流れ、すずらんまで咲いていた。
恥ずかしながら不勉強でよく知らない人ばかりだったけど、何人ものアーティストたちの作品が納められている美術館は、どれも手入れが行き届いていて塵ひとつもなかった。

最後にたどり着いた茅葺き屋根の美術館で、緻密なタッチで描かれた水彩画を目にした時、気づいたら後から後から涙が出てきて止まらなくなってしまった。

だってさ。
今どき、日本にこんな企業ある?
文化財を買い取って保存して、全国の子供たちのために美術展まで開催して表彰して、外から来る誰も彼もを無料で受け入れるなんて、少なくともわたしは物心ついてからこっち、そんな観光施設にはお目にかかったことがない。
六花亭さんの文化貢献、教育貢献、地域貢献の姿勢を目の当たりにして、わたしはすっかり『日本にもまだこんな企業があるんだ…!』と感動してしまったのだ。

六花亭のほうじ茶と焼き菓子を振る舞われたとき、係のお兄さんに引かれるかな?と思いつつも、涙ながらに(キモいな)上記のような想いを伝えたところ
『わたし、実はこういう部署じゃなくて、経理とかデスクワークの方で採用されたんです。でも、お客様と触れあって来なさいということで、今日はこちらに居たんですが、今、お客様のお声を頂いて、その意味がわかりました』って。

完璧すぎるだろ!!!!!

帰りに寄った建物の中に、やっとのことで『もし、当施設をお気に召して頂けたら、ご寄付を頂けたら幸いです』みたいな慎ましい看板があるオブジェを見つけたので、心ばかりの感謝料を入れてきた。
それだけでは飽きたらなくて、帰りは【六花の森】に寄ってしこたまお菓子を買い込んできました。

そういえば、朝から道の駅で食べた焼き鳥1本とさっきのお菓子しか食べてない、と気づいたので敷地内にあるレストランに行ってみたら、ランチタイムの終わりかけ。
『申し訳ございません、あいにくともうカレーしかお出しできるものがなくて…』と言われて出されたカレーがこれまたべらぼうにうめえ!!!

いやーほんとに。
大袈裟でなくあの場所はすべての自然とアートと六花亭を愛する皆さまに行って頂きたい場所なのでした。

長くなったけど、六花亭は北海道神宮の中にも支店があり、そこで食べられるお餅も絶品です。
行ってみて欲しい。

六花亭神宮茶屋でしか食べられない判官さま

あとマルセイバターサンドファンの方は、ぜひ六花の森や本店で食べられるマルセイバターサンドアイスも食べてみて欲しい。飛ぶぞ。
あとお菓子はだいたい全部美味しいんだけど、六花亭は地味に冷凍のおこわや中華まんも美味しいのです。
でも今見たら公式サイトにお気に入りの【ほたてまん】がなかった。冬季限定なのかな?
お菓子はマルセイバターサンドは当然として【大平原】もやべえうまさだからぜひ食べてみてください。わたしの中のキングオブマドレーヌ。

https://www.rokkatei-eshop.com/store/ProductDetail.aspx?sku=10072

それでは、このたびはこの辺で。

※この記事は、2023年5月に六花亭アートヴィレッジ中札内美術村に行った際の情報を基に書かれています。現在の入場料や施設概要についての詳細と差異がある場合がございますのでご注意ください。

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