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『川のほとりに立つ者は』を読んでみた

こんにちは!読んでいただきありがとうございます。
『川のほとりに立つ者は』(寺地はるな著)を読んだので、感想を書いていきます。ネタバレはしません。

この小説は2023年本屋大賞ノミネート作品の中の第9位に選ばれたものです。

あらすじを読んでみて、「意識不明の恋人のノートから思いもよらない事実が発覚する」ということが書いてあり、こういう、人の本性にダイレクトに触れる系の小説は私の好みとベストマッチだったため、迷わず読みました!!

この物語は、主人公の原田清瀬と、意識不明になってしまった清瀬の恋人・松木の両者の視点での物語が交互に書かれています。お互いの視点から事実を見ることができて共感、驚き、切なさ、愛情深さ、不安、心のぬくもりなど種々雑多な感情を一度に体験できる、雑穀米のような小説でした。

謎を解き明かすという点ではミステリー小説とも言えそうだけど、物語の中でそれぞれの登場人物の人生ドラマを知ることができる点では人間ドラマ系小説(こんな呼び方でいいのか?)とも捉えられる。

こんな感じで、1冊でいくつもの側面を持った小説でした。

読んだ後の感想

好きだなあ、この本。

主人公の原田清瀬ちゃんが私とほぼ同い年なのもあって共感力がそこまで高くない私でも共感しちゃった。

清瀬のまじめでまっすぐな性格が良い方向に働く場面と、悪い方向に働く場面があり、清瀬が抱える一つ一つの葛藤を味わいながら読むのがとても味わい深かったです。

一方で、恋人の松木も清瀬には言えない様々な葛藤を抱えていつつ、彼なりの正義感から清瀬にさえ打ち明けることができないという状況で、その繊細な心の動きを追っていくのもまた面白かったです。

この小説は、読み終わった後に “人のことをもっと理解すべきだ” とか、“大切な人とちゃんとコミュニケーションすべきだ” などの明確な教訓が湧き上がってくるようなものではなく、読者である私自身も “こういう場合、どうするべきなんだろうなあ、、、” と葛藤を感じたまま終わる小説でした。

こんな風に、特に人間関係においては、明確に“どうすべき”と言い切ることができない場面っていっぱいあるよなあと改めて思いなおしました。

あと、葛藤しているときって、なんとなく信頼できる誰かに相談してみるものの、答えを求めていなかったりするよね。なんなら、大好きな人が私と一緒に葛藤してくれたらうれしい///

結論を急がず、大切な人と一緒にゆっくりと葛藤できることが、愛情深さの印なのかもなあとも思ってしまいました。

ここまでは主人公視点で書いたのですが、この物語には他にも様々な登場人物がいて、その人達もまた、葛藤を抱えています。

松木の幼なじみ・いっちゃんは、小学生の頃からとあることがものすごく苦手でそれを克服するために松木を頼っていました。彼は何度も諦めたにもかかわらず、あることをきっかけとして克服することに決めたのです。このことについて様々な葛藤があったことでしょう。

加えて、松木はそんな彼を応援したい気持ちと克服できなくてもありのままを受け入れたい気持ちの両方を抱えていました。

さらに、いっちゃんの恋人である天音さんも、いろいろな苦しい状況を乗り越える中で苦渋の決断を繰り返してきた人のように見えました。

ネタバレになるので詳細が書けないのが悔しいですが、後から冷静に見てみれば “おかしい”と思うことでも、その時の自分だったらその判断が一番良かったということってすごくたくさんあるよな、、と読者の私自身も内省を始めてしまう小説でした。

どんな人におすすめ?

まじめでまっすぐな人(こういう人にそんな自覚はないだろうけど)におすすめしたいです。

正義感や責任感は強いけど、時に正しさにとらわれすぎて窮屈な思いをしている人には強くおすすめしたい。

そういわれても、こういう人ほど自覚はなさそうなので、言いかたを変えると、“誰かを愛したい欲求が強い人”におすすめしたいです。

物語の途中で落ち込む清瀬を慰める親友が出てくるのですが、その親友の言葉が心の緊張感をしっかりとほどいてくれて気持ちが楽になるんです!ホッとしつつ、心の中がぽかーっと温かくなります///

完璧な愛なんてないのかもしれない、でも、あなたなりに大切な人と精一杯向き合っていけばいいよ。という気持ちになれる。(←説明下手すぎ)

おわりに

読み終わった後に、主人公の清瀬が何度も私の脳内に浮かぶ。
何んとなく、自分と重ねたくなってしまう。
今の自分にしっくりくる小説でした。



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