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アップリンクの映画館では年間700本以上の映画を上映するが、その編成を一体どうやっているのか教えます。

アップリンク吉祥寺については、まずスピーカー、スクリーンなど施設技術面のことを記し、次にデザイン面について述べた。

さて、今回は、運営のかなめと言える「番組編成」について述べたいと思います。

アップリンクの映画館がかつてのミニシアターとまず大きく違うところは、上映本数が多い。アップリンク渋谷・吉祥寺合わせて今のペースだと年間700本以上の作品を上映するだろう。当然、一人の人間が観ることのできる量を超えているので複数のスタッフで手分けして観て上映作品を決めている。僕も加わり、毎週、映画館にアップリンクで上映する可能性のある作品を観にいっている。

シネマライズなどのかつてのミニシアターは、その劇場がこれを観て欲しいという、劇場が推す作品を上映していた。ミニシアターの編成担当やオーナーは、観客よりも映画祭やマーケットでいち早く話題の作品を観て、配給会社と一緒に上映作品を決めていた。ところが現在はといえば、配給会社や映画館のスタッフよりも一般の映画ファンの方が、世界で話題の映画の情報を知っている。インターネットというツールがあるからだ。

IMDbを見れば正確さはどうかは置いておいて、企画途中の映画もわかる。映画を世界で売っているセールスエージェントのサイトを見れば、どの作品をどのエージェントが取り扱い、どの国に売れているのかもわかる。スクリーン・インターナショナルやヴァラエティを読めば、どの映画が、どの国のどの配給会社に売れたかがわかる。配給会社の新人スタッフなど足元に及ばないほどの情報を持っている映画ファンはたくさんいる。

そういう時代に、映画館が推す作品だけを上映していては、観客に支持されないだろう。そこで、ミニシアター・コンプレックスというコンセプトの映画館を作った。

映画館が推す作品ではなく、観客が観たい作品を上映する。基本シネコンはこの考え方で、ヒットする作品を上映する。アップリンクがシネコンと違うのは、興行収入の上から20番の作品ではなく、全国100館以上ではなく、小さな公開規模の作品で映画ファンが観たいであろうという作品を編成することだ。映画を月に何本か観る人はシネコンだけの作品では物足りない。そこのニーズに応える作品を上映するので、自然と本数は増える。

繰り返しになるが、アップリンクの映画館では、これを観て欲しいと推す作品ではなく、観客がこれを観たいだろうという作品を編成することだ。

ただインディーズの作品は積極的に推す姿勢は取る。そこには、数ではなく観たいという観客はいるし、その観客を作り出す役目も映画館にはあるからだ。ただし、これができるのは合計で8スクリーンあるからできることだ。

アップリンクの編成の仕方は、まず1スクリーンで1日5回上映を基本とするとして考える。そうすると渋谷は3スクリーンなので3X5枠で、上映枠が15枠ある。吉祥寺は5スクリーンなので、5X5枠で、上映枠が25枠ある。合計渋谷、吉祥寺合わせて8スクリーンで40枠あることになる。

理論上、1枠1作品を上映するとなると、1週間で40作品を上映できるわけだ。ただ、都内の新作のロードショー作品を渋谷、吉祥寺で公開初日を合わせて公開する作品などは、1日に2回−4回の複数回上映する編成も行うので、実際は、渋谷で10作品前後、吉祥寺で20作品前後の上映となる。新作でない、いわゆる二番館の作品の上映は、ほぼ1日1回の上映だ。

その編成会議を毎週月曜日に行う。週末に開けた作品の成績を元に、その週の金曜からの編成を行うというシネコンでやっている編成と同じサイクルで行う。シネコンでは、チケット販売は、3日前からだが、アップリンクでは1週間分を販売している。

何を上映するかが決まれば、どの作品をどのスクリーンで上映するかを二番の作品の場合は、ロードショーの動員を元に、新作の場合は、話題性を元に予測する。渋谷は41−58席とそうキャパシティが変わらないが、吉祥寺は29−98席と3倍以上の差がある。1週目は98席のスクリーン3で上映して、2週目はスクリーン1の63席で上映、通常どんな作品でも1週目から動員は下がっていく。吉祥寺では最後はスクリーン5の29席で上映する。そうすることによって座席の稼働率をあげるわけだ。

これを株式投資の分散投資に習い「ポートフォリオ編成」と名付けた。編成を決める要素は以下である。

(1)作品の動員力 (2)劇場の座席数 (3)上映回数 (4)上映時間

これら4つの要素を元にどういうポートフォリオ編成を渋谷と吉祥寺8スクリーンで行うのか、ここに一番頭を使う。売上に直結するからだ。

このポートフォリオ編成の利点は、作品数を増やすことで、作品の当たり外れを全体でならせることにある。毎週の売上の平均化、それも高稼働率で、これが実現できるのが、二番館中心の編成とスクリーン数の多さがアップリンクの特色であり、運営的には強みと言える。



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浅井隆 ASAI Takashi(UPLINK)

アップリンク代表、未来の映画館プロデューサー。1987年にアップリンクを設立。最初に配給した映画作品はデレク・ジャーマン監督の『エンジェリック・カンヴァセーション』、最新配給作品は『氷上の王、ジョン・カリー』。アップリンク渋谷・吉祥寺を運営する。

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コメント1件

フォローありがとうございます!映画館大好きなので、いつも楽しく読ませてもらってます!帰国したらアップリンクにも行きます、!
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