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ハウスメイトはアフガン人②ーアフガン料理を食す

アフガン人のBeheshta、Zuhalと一緒に住むことが決まった。

一軒家のリビング、キッチン、バスルームを私を含む3人でシェアする。自分専用のベッドルームには、大きなクイーンサイズのベッドにデスク、キャビネット、小さなウォークインクローゼットがある。洗濯機・乾燥機は地下にあるコイン式のものを使う。 

ハウスメイトは2人。

BeheshtaはSyracuse Universityのロースクールを卒業したばかり。アフガニスタンでも弁護士として働き、アメリカ以外にドイツに留学する選択肢もあったという才女だ。卒業後は帰国したかったが、タリバンが掌握したアフガニスタンには帰れなかった。シラキューズで働く傍ら、アフガンの10代の女の子たちが学べるようにオンライン学習システムを立ち上げるなど、母国、そして女の子たちへの支援と努力を惜しまない。デニム姿でも常にヒジャブをかぶりお祈りを欠かさない敬虔な姿の一方で、チャンスがあればどこでも歌い出し踊り出し、おしゃべりも大好き。明るくて社交的な人柄で、彼女のおかげで私もさまざまな人と知り合うことができた。

 Zuhalは同じくSUで情報学を学ぶ学生。自称インドア派で、部屋の中でネットフリックスを見たり、歌を歌ったり。カナダにいるという婚約者とも、電話でしょっちゅうおしゃべりしている。好奇心旺盛で、リビングで顔を合わせるたびに「日本ではどんなメイクをするの?」「日本ではやっている音楽ってどんなの?」と質問が止まらない。

 ある日、キッチンで自分用のランチを作っていると、Zuhalがベッドルームから出てきた。よく見ると、眉毛がものすごく太い、濃い!

「ど、どうしたの、それ?」

するとZuhalはすまーした顔で、「トルコ女性の太い眉って素敵じゃない?ああいう風にしてみたいなと思ったけど、うまく描けない!」と言う。

そして、「これはきっと化粧品のせいだわ!トルコにはあの素敵な眉毛を描く専用のメーク道具があるらしいのよ。今度、モールに探しに行かなきゃ!」と叫ぶ。

また別の日には、「日本人はなぜみんな肌がきれいなの?どういうお手入れをしているの?」とまじまじと聞いてくる。そこで私は、自室から基礎化粧品を一式、持ってきてリビングで即席のお手入れ講座を始める。

「洗顔したらローションでしょ、美容液でしょ、乳液でしょ…」と話していると、「わあ、そんなにたくさん使っているからきれいなのね!」と叫ぶ。聞けばZuhalは、ローションをぴちゃぴちゃとはたくだけとか。へえ、国によってそんな違いもあるんだな。

こんな風に、女性同士って世界共通なんだな、という感じの会話をしょっちゅう。

 ところで、皆さんアフガン料理はご存じでしょうか。

インドやバングラデシュなど南アジア系の友人たちに言わせると、「世界一おいしいのはアフガン料理!」だという。
私がアフガン人と一緒に住むと決まったとたん、みんなが「うらやましい!アフガン料理が食べられるじゃん!」と叫んだぐらい。

へえー、そんな風にみんなが言うなんて、いったいどれほどおいしいのだろう…と思っていたある日。

 キッチンに行くと、Zuhalが何かを作っていた。
「何作っているの?」とのぞき込むと、大きな豆をトマトで煮込んでいる。ガーリックやハーブを使っているらしく、とてもいい匂い。

「うわあ、おいしそう!どうやって食べるの?」

するとZuhalは、ゆでたショートパスタを指さして「これにかけるのよ。あなたも少しどう?」と聞いてくれた。

やった!アフガン料理を食べるチャンスだ。

「ぜひ、いただきます!」

Zuhalはお皿にパスタをよそり、上に豆のトマト煮込みをかける。
そしてさらに、「これが大事なの」といって、そのうえにヨーグルトソースをかけてくれた。
ソースをよく混ぜ合わせて口に入れると、ガーリックやハーブのスパイスが効いているもののまろやかな味で、
「うーん、おいしい!」


Zuhalお手製のアフガン料理。左が私のためによそってくれたお皿

今まで食べたことがないような、でも懐かしいような。辛味など刺激はないが、深い味わいで本当においしかった。

Zuhalには、炊飯器で炊いた白米をおすそ分けした(他に食べられそうなものがなかった)。アフガンでも米は食べるという。2人でキッチンテーブルに向き合い、おしゃべりしながらそれぞれの国の料理を食べていると、「地球は広いしそれぞれ違う文化だけど、人間はみな同じだな…」なんてしみじみとした思いがこみ上げてきた。

 


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