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ユマに行く

今では日本のプロ野球球団が海外キャンプをすることはないのですが、昔は寒い日本を脱出して海外でキャンプをする球団もありました。野球少年だった頃、ヤクルト・スワローズがアリゾナ州のユマ市でキャンプをしていることを知り、いつかユマに行きたいと思っていました。自分にとってのアメリカへの憧れは、ニューヨークやロサンゼルスではなく、なぜかユマだったのです。


そんなことも忘れかけていた時に、「3時10分決断のとき」という西部劇映画を見ました。凶悪犯をユマ行きの列車に乗せるまでの葛藤や銃撃戦が描かれるこの映画は、元は1957年の古い映画なのですが、2007年にリメイクされた名作でした。英語の原題は、「3:10 to Yuma」だったこともあり、再びユマへの思いは募り、さらに10年以上の時間を経てやっとユマに行くことができました。


カリフォルニアのこの時期は雨季でよく雨が降り、朝晩も冷える気温ですが、アリゾナは違いました。朝晩も暖かいし、雨は降りそうにもありませんでした。MLBの多くの球団がアリゾナでキャンプをする理由がわかります。アリゾナでのカクタスリーグは、球場の前でジャズの生演奏をしていたり、お目当ての選手も近くて、勝ち負けも関係なく、居心地の良いゲーム観戦を楽しめました。

ユマは19世紀後半に鉱山が発見されたことから、蒸気船の停車場として発展した町です。誰もが知る観光地ではなく、メキシコとの国境が近い小さな町です。映画から推測できるように、昔はコロラド川沿いに州の刑務所がありましたが、今では刑務所歴史公園になっています。

ユマ駅の前には閉鎖された大型のホテルがあり、駅は無人で時々貨物列車が通り過ぎました。

かつては西部劇の映画で見たような喧騒と砂埃が舞う風景があったことを想像しながら、ゆっくりと散策しました。

西に少し走るとメキシコとの国境があり、不気味な黒い国境のフェンスを見て「分断」という言葉が浮かびました。

憧れの地には何かがあったわけではないのですが、何かすべてを満たしてくれたのでした。 


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