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『椿姫』の『乾杯の歌』を結婚式で採用する是非を問う

椿姫と言えば娼婦の悲恋小説であり、ヴェルディの歌劇、とりわけ豪華絢爛な『乾杯の歌』が有名である。

この曲は、娼婦であるマルグリット(劇中ではヴィオレッタ)が、治らぬ病の苦しみを紛らわせるため、なかば自暴自棄で開催した徹夜の乱痴気パーティを表現したものだ。
※上の動画は、最も小説のイメージを再現しているものをチョイスした。

当時のパリでは貴族社会にあって、平民と一度でも体の関係を持ってしまった女性は、貴族に相手にされなかった。
したがって美貌と知識ある若い処女は、最初は何人かの貴族に ❝囲われる❝ 所謂、愛人となる。
マルグリットもその手の高級娼婦と言われる類の女性であった。

彼女が行きつけの劇場桟敷にはいつも白椿を、月に一度は紅椿を活けさせていた。
このように椿の花をこよなく愛することから、『椿姫』と呼ばれていた。

だが彼女は、当時の医療では不治の病とされる肺結核を患っており、先の短い我が身の ❝今❝ を楽しもうと、割り切っていたのだ。

この小説の中では、アベ・プレヴォー著『マノン・レスコー』という酷似の小説を読むよう暗示をかけられる。

どちらも娼婦と青年の悲恋の話である。
そしてどちらの女性像もツンデレ感があるし、いつの時代も男性はツンデレ女性を追いかける傾向があるように思う。
そして実らない。(だから小説になるのだろうが)

娼婦の悲恋を描いた歌劇の歌を、結婚式で採用しているケースが意外とあるように思うのだが、一昔前までは禁忌だったかもしれない。
しかし現代では、男性は娼婦と関係を持っても良いのに、女性には姦通罪が適用されるような理不尽な時代ではなくなったので、好きな曲を採用しても良いのだろう。

ちなみに、新潮文庫よりも光文社の方が新訳となっており、セリフまわしに違和感がなく馴染みが良いのでお勧め。


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