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最悪のクズ野郎と約2年付き合っていた話

最悪のクズ男と約2年付き合っていた話


これを書いている今は、喧嘩もするし仲もいい気の合う夫との間に二人の子供がいるが、始終胸糞が悪い話をする。
フェイクを混ぜるぞ。

始まり。


始まりは高校を卒業した後に入学したとある専門学校の入学初日。
入学式が終わり教室には30人ほどの生徒が着席していた。
中には同じ高校から進学したであろう二人組が会話してる事もあったが、ほとんどが初対面で教室は比較的静かだった。

見渡すと若干男子の方が多かったように思う。
出席番号順に並んだ席の後ろから二番目に座ってガラケーを弄っていた。

高校時代は漫画研究部の部長でBL同人誌を出したりコスプレを嗜んだりしていた私はドのつくオタクだった。
だが少々ヤンチャな年の離れた姉のおかげで、見た目だけはなんかちょっといかつかった。
その日も姉からもらったお気に入りのサテンの柄シャツを着ていたのを覚えている。
でも如何せんオタクなので、赤い眼鏡をしていた。オタクとヤンキーの雑種みたいな見た目だった。

教室の少ない女子はみんな黒髪で、大人しい服を着ていたので、なんとなくグループができていくのを横目で見ながら、恐れられているのを感じ(初日から気合いれすぎたな)とちょっと後悔する。

「成宮廣貴と玉山鉄二、どっちすき?」


突然後ろの席の男子が声をかけてきた。
なんだこいつ?コミュ障か?急になんだ?と振り返ると、玉山鉄二にクソ良く似た顔の良い男だった。私は玉山鉄二派だった。
でもオタクの血が
「え~いや別にどっちも…」と否定をかける
「どっちかっていうとだよ、ねえどっち?」
この時点で「しつけ~な」とキレておけばよかった。今なら思う。そいつの顔面をぐちゃぐちゃに殴りつけろと。
「NANAのタクミは好きだけど」
「俺も俺も~!」
NANAとか見るんだ、男子にも人気なんだな…と思った。
バッキャローーーーそいつがルパンだ!!!!殺せ!!!!

この男を仮に「タマヤマ・タクミ」と呼称する。

当時私は反抗期だったので隠れて煙草を吸っていた。
この専門学校はいろんな年齢の人間がいるので、喫煙所は誰でも出入りできる。
放課後に私は喫煙所で知り合った他の人とも連絡先を交換した。
その中の一人が5歳ほど年上で教室内の兄貴分として早くも地位を得ていた「ヤスさん」に気に入られ、ヤスさんには彼女がいるのを知っていたので、恋愛対象としては見られないはずだと安心して懐いていた。顔が良かった。
ここでは女友達のナナコとも仲良くなる。(ナナコはヤンキー)

翌日もタマヤマは話しかけてきた。
しつこくて馴れ馴れしくて嫌いだったが、拒めないほどに顔が良かった。くそが。
授業が終わると「復習しよ」とファミレスに誘ってきた。
当時から男女の垣根鳴く「友達になれる」と信じていた私は「いいよ」と了承した。
ファミレスは普通に勉強した。タマヤマが私にわからない事を聞く形だった。
幸い私は頭の回転が速い方で、人に教えるのも苦じゃなかったため、聞かれれば答えてしまう。
見極めろ。そいつのソレは演技だ。

そしてなぜかタマヤマはケータイを持っていなかった。「失くしたから解約した」と。信じてしまったが、嘘であるクソが。●んでほしい。

何度かそういう事が続いたき、タマヤマは「もっと静かなところで集中したい」と言い出した。
ウブは私は「いいよ、図書館でもいく?」と言ったが、漫画喫茶に連れていかれた。
「何考えてんだよ、真面目に勉強するぞ」と言われる。は????

入学から2週間後の帰り道、私は玉山に「付き合おっか」といわれ、断る。
前述のように私は「男女間の友情」が成立すると思っているのだ。
「そんな気はないし、これからも友達で居よう」と。
すごくしつこかった。

「OKするまで離さない」

と駅の壁際に身体で閉じ込められた。
甘い言葉でささやかれ、ティーンエイジャーの私は「顔好きだし、ここらで彼氏つくってもいいかぁ」と思ってしまった。頼むから考えなおしてくれ、私。そいつはとんでもないクズ野郎だ。
でも私は「彼氏できちゃった~」と浮かれポンチだった。若さ。若さって。

最悪の日々の始まり。


それからは最悪の日々の始まりだった。
喫煙所で他の人とモクモク会話してる時にタマヤマに見つかると「浮気か?俺の女に手だすんじゃねえぞ」と喧嘩をふっかける。
「いや意味わからんしやめてよ」と止めるとこっちがキレられ、電話帳に入っている男性のアドレスを全部消された。
ヤスさんとメールのやり取りをしているのを見て

「これは浮気だから、これからヤスと殺し合いしてくる」

とブチぎれられる。
「頼むからやめて、もう話さないから」と。
タマヤマが居ない時にヤスさんに「ごめん…」といきさつを説明したらヤスさんもキレてた。ほんと意味わかんないよな。
でも後で知ったけど、ヤスさんは彼女がいながら私の事も狙っていた。
ただタマヤマが四六時中私といるせいで手を出すスキがなかっただけだった。男って。男って!!

タマヤマは中卒だったトビをしていた。トビをやめた後は家に帰らずコンビニで食品を窃盗しながら路上生活していたという。本当かどうかは知らん。しらんけど、やっててもおかしくなかった。

そして金を持っていた。デートは全部おごりだし、なぜかいつもスーツ姿だった。
喧嘩が強いと自慢していて、鉄パイプで開いたという腹のでかいキズや、ナイフでついたという顔の傷を自慢げに見せられた。腹の傷は、たしかに「病院にいってないヤバいキズ」だった。
そして

「俺は太陽の下を堂々とあるけないんだよ」

と悲しそうに言った。
バッッツツツツカじゃね~の、●ね。早く捨てろ。
でも当時の私は「私がなんとかしてあげなきゃ」と思ってしまったのだ。思うな!!!!!!!
もちろんナナコは止めてくれた。「タマヤマさん、確かに顔はいいけどヤバいよ」でもナナコはやさしかった「でもあさやは好きなんだもんね
もっと止めてくれ~~~~~~~~

タマヤマとケータイショップにいって専用のケータイを買ってもらった。
二人で通話する分には通話料がかからない、月1000円くらいのプランが当時人気だった。

タマヤマは学校をサボってゲーセンに入り浸るようになった。

入学前から常連だったゲーセンがあり、1日中そこにたむろしているようだった。
学校に来てないなと思えばゲーセンの麻雀か対戦ゲームで台パンしてる。
早く捨ててくれ、たのむから。


デートしよう!と誘われてウキウキでめいいっぱいオシャレして、待ち合わせ場所に上下白いスウェットで現れ、そのままゲーセンに連れていかれ、

「こいつ俺の女だから」

と常連仲間に紹介され、そういう「デート」が一番多かった。そのまま最長で6時間放置されたことがある信じられん。なんで付き合ってたの?
心配した他の常連さんが「大丈夫…?」と声をかけようものなら二人になった途端に「何声かけられてんだよ、浮気だぞ」とブチギレられ、声をかけられても無視するしかなくなった。

私は洗脳されていた。
そして「私がこの人をまっとうにしないと」と思っていた。

ゲーセンの常連の中には同じクラスの「小嶋さん」がいた。大食いで太った男性だが、おおらかで男らしい人だった。
そんな私を「かわってんな」と思って見ていたそうだ。それはそう。

付き合って半年が経った頃、夕方街を歩いていたら、客引きのホストが何人かタマヤマに会釈で挨拶していく。………おまえやってんなぁ……!?と思ったが「誰かと間違えたんじゃない?」とごまかされる。は~ァ?
後で知ったが、タマヤマは20歳だったが、周囲には25歳と偽っていた。
(私は免許を確認したので、私に伝えてた住所と年齢と名前はウソじゃなかった)

暫くしてタマヤマは

「貯金がなくなった」

といい、デート代を私にださせるようになった。
バイトをしていなかった私は、父親のタンス貯金に手をつけたり、1日派遣のバイトをしてデート代を稼ぎ、タマヤマに貢いだ。

テーマパークにデートに行こうと言われた時はウキウキで早起きしてニコニコしていたのに、徹マンから直行してきたタマヤマはずっと機嫌が悪く最悪のデートだった。
その後のホテルで何もせずに爆睡され、さすがに●してやろうかなとおもったのを覚えている。

学校をサボって1日ホテルにこもっていたことも何度かある。
そのまま家に帰らずに朝帰りしたのは、生まれて初めての親への「反抗」だった。
ヤンキーの姉は「ちょっとぐらい反抗しないといつまでの親のいいなりだよ」と笑ってくれたが。

タマヤマが学校に来ていた。


「偉いじゃん!」と声をかけると「辞めてきた」とヘラヘラ笑った。
私は泣いて怒った。
真っ当になるんじゃないのかと。真っ当になりたくて学校入ったんじゃないのかと。
成績もよかったのに。そして何より「やめようかな」等の相談一切なく辞めたその日の報告だったのが何より腹立たしかった。

すぐにタマヤマは店頭販売の仕事を始めた。
仕事の面接に行くとき、私は会社の前までついて行った。
終わるまで近くの喫茶店で待っていた。
戻って来るや「仕事決まったわw」と得意げに話す。
「俺以外に5人くらい居たけど全員リクルートスーツで来てたww」と笑うタマヤマはライトグレーのピンストライプスーツに、ダブルで仕上げたスラックス、先端の鋭利な革靴を履いていた。
「俺の後にまだ人いるのに、俺が面接にはいってすぐ「任せる」って言ってもらって、後の人全員返されたwカワイソ~w
1か月の使用期間のち、タマヤマは店長になった。大丈夫かその会社。

それから土日にはタマヤマの仕事の終わる時間にあわせて、電車で1時間かかる店まで迎えに行く事が増えた。
「今日も仕事」と聞いていたので示し合わせもなくタマヤマのテナントのはいる館の通用口の前で待っていたが、館の閉館時間になってもタマヤマは出てこず、電話も出ず、メールも帰ってこなかった。

翌日そのことを話すと「一々こなくていい」とキレられる。ハァ~?

「ノルマのために買い物して、金あとで払うから」

と言われた私は二つ返事でその店舗で買い物をした。
ブースの中には私の同じタイプのヤンキーあがりっぽい可愛い女がいた。あやしい。
後で思い返しても絶対に手をだしている。確信しているのには理由がある。
そこで働きだして一か月くらいして、タマヤマはケータイが2台持ちになったのだ。
タマヤマは「仕事用」と言っていたが、そのケータイを私には絶対に見せなかった。
早く別れろよ。なんで???

そうこうしてるうちに、会う頻度が減ってきた。
それでもまともな仕事について真面目に務めてるタマヤマが更生してくれてるんだと思って尽くしていた。
タマヤマの実家の両親に挨拶にもいった。
タマヤマと、若いお母さんがそっくりだなと思った。

それでも連絡がつかない事が増え、何をしていたのか問えばキレられる。
一度限界になった私は「別れよう」と言った。偉い。良く言った。がんばったなぁ。言った瞬間の清々しさは忘れられないね。
だが次の瞬間タマヤマは、人目の多い駅だったというのに、しゃがみ込んでボロボロと泣き出したのだ。

「お前も俺を見捨てるのか」

と。
タマヤマは165ある私がヒールをはいてなお見上げるほどの高身長。
そんな男が。スーツをきた男がちいさくなってボロボロ泣いている。
私は陥落した。許してしまったのだ。バッカヤロ!!!!!

1か月くらいはマメに連絡をとってくれた。
うちに挨拶にきた。
両親には「人当たりはいいけど全然信用できない」と言われた。あたりめ~だよ。見る目があるな。

タマヤマと都内にデートにいった。

「友達の妹がそこで働いてるから挨拶してくる」

というのでついて行こうとしたら、「お前そこで待ってろ、恥ずかしいから」と。怪しい。怪しすぎる。
陰からそっと覗くと、タマヤマが好きそうなヤンキーあがりっぽいギャルと喋ってた。「お~~~~~いそれ友達の妹じゃね~~~~だろ」と思いながらニコニコ笑いながら近づいて行ったら気づいたタマヤマが【友達の妹】をつれて店の奥に入っていった。アウトだよバカ野郎。

翌年になると、私も授業で土曜の夜9時まで勉強漬けになり、また就職活動でバタバタしはじめる。日曜は寝てたい。
そんなこんなで、連絡しない日が増えていった。それでもそこまで1年つきあった情やお互いへの理解があり、ぬるい関係を続けていた。

学校での監視の目がなくなったのは幸いだった。
ゲーセンの常連の一人でありクラスメイトの「小嶋さん」は、今でもゲーセンでタマヤマと顔を合わせている。
小嶋さんとタマヤマは初対面で殴り合いした仲だという。
「まだタマヤマさんとつきあってんの?」
「うん」
おまえも大変だな
その会話を忘れることはない。「私って大変だったんだ!」と初めて自覚したのだ。そしてその会話はフラグでもあった。
そして私とタマヤマ両方を知っている小嶋さんは、私のよき理解者だった。
言葉少ない者の、タマヤマを知ってて愚痴を聞いてくれるのはナナコと小嶋さんくらいだった。
小嶋さんにも彼女がいると聞いていたので、ここでも私は気を使わなかったが、小嶋さんみたいなデブにも彼女いるんだな、と少し残念におもった。
話をちゃんと聞いてくれる人が居なかったのだ。私は小嶋さんに好意を持っていた。タマヤマが居なければあの輪に入れてもらえるのにと思っていた。

私は不真面目な態度であったものの、専門学校でも3人しか合格しなかった難関資格に合格しており、すぐに採用が決まった。
一流企業のグループSEとして就職が決まった私は、入社前から研修などで忙しくしていた。大企業だけあり、様々な部署で採用された同期が50人くらいいた。新たな出会いがうれしくてしょうがなかった。また、タマヤマとの連絡が薄くなっていた私は男性を含む同期たちとも連絡先を交換したし、タマヤマに黙って30人の同期とバスを借りて旅行にも行った。

「あいつの目を気にしない毎日って楽しい!!!!」

と、2年4か月経って初めて気づいたのだ。

そして私は1か月連絡をとっていなかったタマヤマに「別れよう。もう連絡しないし、連絡しないで。さようなら」とメールを送り、着信拒否の受信拒否にした。
ケータイ返してって言ってたぞ、と伝えられたが無視した。

その翌週私は清々しい気分で地元で買い物していた。


ある百貨店のトイレに入ったところで、ひと気のない階段にいるタマヤマに気づいた。
初めて見る女と一緒である。女泣いてるし、タマヤマはいつかの私にしてたみたいにキレてるし、私に買ってくれたのと色違いのコートきてて、鼻で笑った。タマヤマは私に気づかなかった。

後日、同級生達との飲み会で
「~ってことがあってさぁ」と小嶋さんに話したら
あの人見る度違う女つれてたぞ」と笑っていた。
フラグ回収。やっぱりね!!!!!!!
私が自覚してるだけで、タマヤマは4又をかけていた。とんだクズ野郎である。
ハゲてますように。いや、ハゲ散らかっていますように。そしてどうかどうか、●んでてくれてますように。少なくとも私の前にそのツラを見せませんように。永遠にさようなら。

私と小嶋さんが付き合うまで、更にそこから3年かかる。


おわり

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