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[推し本]矛盾と創造(小坂井敏晶)/問うべき問いを模索し続ける

これまでの「答えのない世界を生きる」や虚構シリーズでは、ガツンと常識を覆す読書体験をしました。

前作「格差という虚構」では、格差は確実にあり原理的になくならないものの、最終章で未来は開けているとあるのが希望でもあり、ただし一種の賭けのようにも思えた点、小坂井さん自身が深く突き詰め直してさらに問うべき問いから思索と論点を洗い直しています。

過去の自著を批判的に振り返って、一旦は解決したと思っていたことのさらに奥底にある問題にたどりつくという粘り強さはどこから来るのか。

本書を読むと、自伝的要素も織り交ぜて、フランスに長く住む日本人として、なぜこのような問いに格闘するのか、も曝け出され、小坂井さんは人生を賭して切実に個人的な問題を解こうとしているとわかります。

読んで何かがわかったふりをするな、お前が人生を賭して取り組むべき問いは何なのだ、と大きな宿題を渡された気がします。

「本を読んで有益な情報を得ようとする態度が、そもそも躓きの元だ。読書は覚悟と決断だとわかっていない。」(あとがきより)

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