見出し画像

建築設計者の職能とは。 (後編)

ファーストキャリアで建築設計を選ぶメリットは何か?
前編に引き続き、後編へお付き合いください。

前編はこちら。


C.コンセプト構築力

=Dの提案力と近い部分もあるが、Cはよりクリエイティブなデザイン思考に寄った内容、Dは実務的な論理的思考力を中心に分類した。

①ビジョンを描く力、構想力。
 =曖昧な与件に形を与えるスキル。施主は建築の専門家ではないので、
  与件を曖昧だったり、要望が纏まり切れていなかったりし、
  プロジェクトが右往左往してしまうことが多々ある。  
  迷子にならないために、何のために建築をつくるのか、
  何を実現したいのか、  
  メインキャッチフレーズ1つ、サブキャッチフレーズ3つくらいに
  纏められるスキルがあると強い。施主の性格にもよるが、
  なるべくキャッチーで、ワクワクするフレーズがよい。
  コスト削減や役員の思いつきなどで計画の変更を余儀なくされた時に、
  立ち戻り、優先順位を決める指針になる。

②発注者の置かれているビジネスへの想像力・好奇心・ミーハー力。 
 =ヒューマンスキルに近い部分ではあるが、世の中全般の出来事や、
  施主のビジネスの仕組みに関心をもち、施主の事業にとって、
  建築でどのように貢献できるかを想像する力。  
  施主のビジネスの仕組みのリ・デザインまで踏み込むと、  
  面白いプロジェクトとなる可能性が高まる。

③対話力=ブレスト力。
 =相手とざっくばらんに対話をしながら、可能性を広げていける力。
  意匠設計者は、エスキスの際にブレストに慣れ親しんでいるが、
   意外と周りにはできない人が多い。
  新しい取り組みをする時に、様々な得意分野を持つメンバーを集めて、
  幅広い意見を引き出しながら、一人では思いつかないアイデアへ
  昇華させるスキル。
   また、互いに対等に意見を出し合う中で、  
   実現したいビジョンを生み出すスキルは、
   時代の転換期の今、必要とされるスキル。  
   この能力により、発注者・受注者という関係性から、  
   専門家同士の協業による価値創造が可能な関係性へ昇華できる。

D.提案力

=ビジネス書に出てくるような一般的ビジネススキルなので、
 詳細は割愛する。
  ④のプレゼンテーションスキルは、意匠設計者の中では平均的な
  レベルであっても、社会一般の人よりはかなり上位で戦えると
  思えるというくらいに汎用性のある武器になる。  

①問題把握スキル

②課題設定スキル

③課題解決スキル

④プレゼンテーションスキル


E.ヒューマンスキル


①リーダーシップ・関係構築力 
=当たり前ですが、社会の多くの仕事は人との関係性により成立している。
 意匠設計者は、プロジェクトマネンジメントを担う中で、  
 リーダーシップを求められる立場になることが多いため、
 失敗を経ながら、関係構築の改善に努め、スキルを上げることができる。

②共感力・交渉力 
=相手の立場に理解を示しつつ、信頼関係が壊れないギリギリのラインで
 交渉する力。
 施工会社見積の価格交渉、施主からの追加要望受け入れの攻防線など
 により鍛えられる。

④場を読む力・場をつくる力
 =前に出た項目と重複している気もしますが・・・  
  会議でポジティブな雰囲気をつくったり、不機嫌な相手を
   刺激しない言い方をしたり・・・  
  多くの関係者を巻き込みながら、前向きにプロジェクトを進める力。

⑤教養力 
=経営層など、多様な顧客・関係者と対等に会話をするための教養力。
 歴史・芸術・科学など幅広い知識。
 これに関しては、私は全く十分だという自信はありませんが・・・
  多少は意識できたという意味で。
 建築プロジェクトというのは、経営方針に大きく関わる事業ため、
 経営層と話をする機会が多い。
 若い頃から異なる業界で成果を上げてきた人と仕事をする機会を得られ、
 立ち振る舞いや判断基準など、他の業種ではできづらい経験を
 積むことができる。

⑥本人のキャラクターの魅力・信頼力
=本人が魅力的と感じるかどうか。一緒に仕事をしたいと感じるか。  
  この人に億単位のお金を預け、プロジェクトを成功に導いてくれる、
  と思わせるかどうか。 これは本当に大切なスキルと感じる。
 会社という信頼性の高いバックがあったとしても、  
 建築の仕事のクオリティは、結局は担当者次第。  
 A〜Dまでの個々のスキルを誠実に、修羅場の経験と共に
 積み上げていけば、信頼力は30代〜40代に掛けて、急上昇するはず。


最後に

建築業界は、この新型コロナウィルスの世界的な流行により、2〜5年は打撃を受けるだろう。

しかし建築学生の若者たち、
建築の世界はこれだけ幅広い能力が身につく業界だ。
そのうえ、目の前の誰かに直接喜んでもらうことができる仕事だし、苦しい思いを経て完成したときには、施主・設計チーム・施工者が一丸となって達成感を得ることもできる。完成した先に、新たな事業や生活が始まり、社会に貢献できるとい実感ももてる素晴らしい仕事だ。

だから、この先縮小するかもと怯まずに、
全力で建築設計の世界に浸りながら、
建築設計で得られる様々なスキルを武器として手に入れた後、
次のキャリアを考えてもいいのではないだろうか。

思いつくままに書き出すうちに、ついつい長いnoteとなっていまったけれど、読んでくださった方々、ありがとうございました!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?