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個人的くるりアルバムランキング

つい先日くるりの最新作「天才の愛」がリリースされましたね。

みなさんは聴いてみていかがでしたか?

個人的にはぼちぼちといった感じです笑。

新作も発表されたことだし、当noteの名物?企画こと独断と偏見しかない『脳筋!アルバムランキング』企画を久しぶりにやりたいと思います。お題はもちろんくるりです。

くるりに対する雑感

ランキング発表の前にくるりに対する個人的な見解というか雑感について述べさせてください。

先日の「天才の愛」リリースに際して、Twitterをエゴサしてたらくるりは過大評価みたいな意見がチラホラ挙がってて、軽く音楽好き界隈で論争が巻き起こってたみたいなんですよね。(僕はアカウント凍結されたんでちょっとしかその様相を見ることしか出来なかったが...)

僕自身くるりに関しては日本のバンドの中でもトップクラスに好きなバンドの一つなんですけど、でもこのくるりは過大評価とか権威化しているみたいな意見わからなくもない、いやむしろわかる気がするんですよね。結構前の記事でも話したことある内容だけど、高校生の時友人たちとロックインジャパンフェスに行った時くるりのステージ見たんですよ。びっくりしたよね、あんなガラガラのグラスステージを見たのは笑。

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キャリア的にも既にピークアウトしたアーティストがフェスでガラガラだったとかなら全然分かりますよ。でもこの時ばかりは状況が全く違うわけで、なぜならキャリアがピークアウトしてないし、むしろ前年には各音楽媒体から大絶賛され年間ベストアルバム級の評価を受けた傑作「THE PIER」を発表し、翌年には10年代邦楽シーン屈指のアンセム「琥珀色の街、上海蟹の朝」をリリースという、並のバンドでも到底辿り着かないような充実した時期の最中であのガラガラ具合なんですよ!

あとこれは初出しのエピソードでロッキン2019に別の友達とまたくるりを見たんですよ。この時はさすがにレイクステージで演奏してて人もかなり埋めてた印象はあったかな。その時に友達がどうやらこのライブで初めてくるりを聴いたみたいで「くるりって凄くいいね」って言ってきたので、「昔はグラスのヘッドライナーやってたりしたんだよねぇ」ってボヤいたらめちゃくちゃ驚かれたんですよね。そんくらいで驚いてたら中村一義の立場どうなるんだよ...と心の中で思ったのは秘密です。

とはいえ上記のエピソードってなんとなくくるりというバンドの性質を端的に表してる気がしてて、まさに音楽好きの中でもオタク気質な人や評論家にはめちゃくちゃ評価されてるけど、ライトな音楽好きからしたら上海蟹が食べたいメガネって印象で止まってると思うんですよ。小難しいイメージを持たれたバンドの宿命と言いますか、こういうリスナー間の断絶が大きいバンドっていうのがくるりなんだと思うんですよね。

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ここから暴論です。くるりってなにかと取っ付きづらいバンドの代表格みたいな扱いを受けることが多いと思うんですけど、それはアルバム単位で見るとフェイバリットに挙げるには少々敷居が高く感じられることが断絶を生み出している要因なのかなと思ったんですよね。

原因は2つあります。1つ目はよく耳にすると思うけど、アルバムに絶対捨て曲が一つはあること。

恐らくアルバム全体の流れを整える一環で入れてるのかもしれないけど、なんでそれ入れちゃったかなぁって感じの曲が必ずあるんですよね。とはいえこの問題の厄介なところは具体的に例を挙げろってなった時、100%背後からくるりファンに包丁で思っきしブシャーっと刺されるところなんですよね。多様な音楽性を持つバンドなだけに、様々なアプローチからくるりを好きなファンがいるわけで、各々思い浮かべる捨て曲も違えばそもそも捨て曲なんて無いだろうとなるわけなんですよね。というわけで今回はあえて例を挙げないでおきます。あー、ハム食べt...あれ...パトラッシュ...綺麗な絵だね...なんだか...眠くn...

さてもう一つの原因です。これも中々センシティブな問題です。それは岸田繁がボーカリストとして請求力が弱いことです。

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岸田繁といえばくるりの頭脳にして天才メロディメイカー、向井秀徳、片桐仁らとともに00年代初頭のサブカルシーンを代表する日本三大メガネの一角であり、ブラック企業くるりの代表取締役として数多くの人員整理を行なってきた気難しい天才音楽家ですね。(褒めてます)

しかしそんな岸田繁の弱点というのがめちゃくちゃ声質が普通、またはボーカリストとしてのキャッチーさに欠けているところなんですよね。同世代のナンバーガールとかスーパーカーなんかと比較するとわかりやすいんですけど、元の声質がかなり良い上でシャウトとか捻った感じのボーカルをする向井秀徳や、絶望的な声量を透明感と心地の良い低音(フルカワミキのコーラスとかいうチート)でカバーするナカコーなんかと比べると、岸田繁のボーカルは良い意味で言えば素朴、暴言レベルまで行くと無個性と言われてもおかしくない危うさがあります。初期の「さよならストレンジャー」とか「図鑑」なんかのシャウトした歌唱とかも、同じメガネの向井秀徳やアジカン後藤なんかと比べたらパワー不足感は否めません。

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しかし岸田繁は賢いので多分そのウィークポイントを理解しています。そしてそれを補おうとしたことがくるり音楽性の多様化の一つの要因になったと思っていて、元々研究熱心なバンドだからそれだけが要因になったとは限らないけど、間違いなく要因の一つではあるだろうし結果として今に至るくるりのクリエイティブなバンドとしてのイメージへと繋がります。また岸田繁の描く内省的な詩世界が00年代以降の日本の大衆芸術の持つ空気感(「ジョゼと虎と魚たち」、「天然コケッコー」)とバッチリハマったこと、そして岸田繁の声質と親和性が高い「ばらの花」、「奇跡」などの普遍性を持った名曲を多く生み出したこともこのバンドの評価を高めた要因ではありますよね。

前置きはここら辺にしといて、ランキングを発表したいと思います。


16位 坩堝の電圧

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記念すべき最下位は2012年発表のこの作品です。前年まで岸田・佐藤の二人体制でやっていたところに、突如新メンバーを3人加入させるという人事異動を発動するも瞬速でドラムの田中佑司が脱退というブラック企業ぶりを発揮して制作されたのが本作。個人的にくるりっていう大まかに4つの時期に分けることが出来ると思っていて、デビュー時から「NIKKI」までをオルタナ期、「ワルツを踊れ」から「言葉にならない~」までを牧歌期、「坩堝の電圧」以降をプログレ期といった具合に。そして今作がプログレ期の始まりともいえる作品なのですが、いかんせんいろんな試行錯誤を重ねた結果収録時間も長く取っ散らかった印象は否めなく、それに比例するように捨て曲率も上昇することに。今作から参加したファンファンのトランペットだけを聴いても、その後の作品群と比べてもまだ興味半分で導入した感があるのも順位を低くした要因ですね。

<有名な収録曲>
「everybody feels the same」


15位 ジョゼと虎と魚たち

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00年代日本映画の金字塔のサントラです。ところであの時代の日本映画って日常の些細な出来事をオレンジ色っぽい色彩で撮影したエモエモな作風の奴が多いんでしょうね?妻夫木聡、宮崎あおいなんかはそういった時代を象徴するスターって感じがするし、この時代の狭間から出てきて現代に適応したスターは上野樹里、長澤まさみ、綾瀬はるかって感じはあります。余談は置いといて今作はサントラってこともあって、ほとんどの楽曲がインストで締められてるわけですけど、それでも随所の彼ららしさは出ていて十分鑑賞に値する一枚なんですよね。それに「ハイウェイ<Alternative>」っていう名曲もありますしね、くるりというバンドをたった一曲で説明できるぐらい普遍の名曲です。

<有名な収録曲>
「ハイウェイ」


14位 ワルツを踊れ Tanz Walzer

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くるりの実験性がよく表れた一枚ともいえる作品で、クラシックの本場ウィーンで録音されたアルバムですね。何かとその実験精神の高さと彼らのキャリアの中でも重要な曲が収録されていることから名盤ランキングでは上位にいることが多いけど、個人的にはいい曲とそうでもない曲でばらつきがあるなと思ってしまったんですよね。今作収録の「ジュビリー」からチオビタドリンクのCMと長い歴史が始まり、くるり=チオビタのほにゃいBGMのバンドというイメージが付いた感。

<有名な収録曲>
「ジュビリー」


13位 図鑑

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一部界隈ではカルト的人気がある作品で、下手すればこれをフェイバリットに挙げる奴こそが真のくるりファンみたいな風潮すらある作品という印象があります。しかしこの作品はボーカリスト岸田繁の弱点がいかんなく発揮されたアルバムであり、聴いていてもあぁここの部分岸田じゃなくてアジカン後藤あたりが歌えば爽快感ありそうなのになぁと思ったりすることもしばしば。曲の構成の方も変にひねった感じのものも多く、ベンジー風に言えば要は突き抜けるあの感じが欠けている印象でした。

<有名な収録曲>
「青い空」


12位 魂のゆくえ

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2008年発表の作品ですね。前作「ワルツを踊れ」がガチガチにコンセプトを固めたうえで、ウィーンにまで飛んで制作された作品となっていたのに対し、今作はコンセプトを決めずにやりたいことをその場で掘り起こしていって作られたようだ。そんな事情もあってか今作はくるりの全作品の中でもレイドバックな印象が見受けられます。あと曲の方も全体的にみても飛びぬけて捨て曲っぽいものも見られないし、「太陽のブルース」という牧歌期のくるりを代表するような非常に泥臭く美しい曲も収録されている。ただその分アルバム全体が平坦な印象があり、収録時間に比べて体感長く感じてしまうことがこの順位に落ち着いた要因ですね。

<有名な収録曲>
「さよならリグレット」



11位 言葉にならない、笑顔を見せてくれよ

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前作「魂のゆくえ」と似通った作風ではあるものの、こちらの方が聴きやすい印象があったため順位を上にしました。今作の要注目ポイントとしてはアルバム中盤の部分ですよね。シングルとしてリリースされた「魔法のじゅうたん」でくるりらしいグッドメロディを聴かせ、ユーミンとの掛け合いが最高な「シャツを洗えば」でルーズなロックンロールを聴かせ、ダンサブルなビートが印象的な「コンバット・ダンス」で空気を締める構成はさすがの一言。欲を言えばこのアルバムに「奇跡」が収録されていれば、今のような地味な扱いは受けなかったのではと邪推。

<有名な収録曲>
「魔法のじゅうたん」


10位 天才の愛

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最新作はこの位置に落ち着かせることにしました。理由としてはやはり岸田・佐藤・ファンファン体制の中では曲のクオリティは少し見劣りしてしまうかなと感じたことが大きいでしょうね。とはいえ問題作としてそこそこ話題になった「野球」や「大阪万博」など、岸田繁が標榜していた日本の大衆文化への郷愁を、10年代のくるりが築き上げた豊潤なサウンドと奏でているという意味ではある意味一つの総括のように感じるし、なんなら次のアルバムは全く予想できないものになるのではないかと予想しています。

<有名な収録曲>
「I Love You」


9位 アンテナ

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くるりの全アルバムの中でもかなり人気のある作品で、泥臭いロックを展開している一枚です。岸田・佐藤に達身という布陣に、その屈強なドラミングでファン人気の高いクリストファーマグワイアが唯一参加したこと、当時武道館公演を成功させ人気的にもピークにあった時期だったことなどが人気の理由だと思います。一方でいい曲とそうでもない曲のギャップが一番開いてる作品という印象がありまして、なまじ人気もあるためくるり入門としてこの作品を聴いて付いていけなかったファンって実はかなりいるのでは?と感じています。「ロックンロール」とか「HOW TO GO」なんかはくっそ名曲ですけど、個人的にはライブ化けする曲が多いからこの時期の武道館公演の映像を見たりした方がいいかなと思っています。クリストファーのパワフルなドラミングと岸田の気持ち悪いダンスダンダンダっパンパンむぉんも見れますしね。

<有名な収録曲>
「ロックンロール」


8位 ファンデリア

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現時点でサブスクで聴けるオリジナルアルバムとしては多分一番古い作品で、インディーズ時代にリリースされた作品となっています。「図鑑」よりも爽やかな荒々しさがあって、それでいてボーカルもそこまで曲に負けてない印象があります。それ以上にインディーズの時点でソングライティングの完成度の高さに驚かされますし、ハイライトでもある「坂道」なんかを聴くとこのバンドのベーシックな部分は変わらないのだなろ思わされる一枚となっていますね。

<有名な収録曲>
「続きのない夢の中」


7位 thaw

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新型コロナの影響でツアーが中止、それに対応するかのように急遽リリースされることが決まった未発表音源のみで構成された作品。こういう長いキャリアの中で様々な音楽性に挑戦してきたアーティストって、未発表曲の中にも普通にいい曲がゴロっと存在してたりすることが多くて、それこそレディオヘッドの「Lift」なんかはそういった例として一番有名ですけど、くるりもまた未発表音源なのに良曲揃いということをこのアルバムで証明しちゃったわけなんです。傑作「TEAM ROCK」と牧歌期に制作された楽曲が多く収録され、くるりのオルタナティブ性を上手く内包した一枚だと思っています。

<有名な収録曲>
「心のなかの悪魔」



6位 さよならストレンジャー

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記念すべきデビューアルバムで、90年代にサニーデイサービスが「東京」で再構築したはっぴぃえんど的日本語フォークロックのフォーマットを、オルタナティブロックの質感で鳴らしたことで日本のロックシーンをまた一段上へと推し進めた記念碑的作品としての意味合いも強いアルバムです。大名曲「東京」に関しては言わずもがな素晴らしいの一言に尽きるし、ダレそうなところも粗い音像のギターで鳴らすことで空気を締めているところなんかも上手いなぁと思います。個人的には「葡萄園」や「ブルース」なんかのシューゲイザーを想起させるような楽曲は一押しです。

<有名な収録曲>
「東京」


5位 THE WORLD IS MINE

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エレクトロニカに傾倒していた時期の作品として知名度の高い作品です。とはいえ同期のスーパーカーみたいに完全にエレクトロニカにどっぷりといったわけでは無く、あくまでエフェクティブに使うことで曲に落とし込むのがくるりというバンドの性質を表している感じはします。またギターの達身が加入したということもあり、その後の「アンテナ」なんかでも垣間見れる泥臭いロックの曲もちらほらあったりと、エレクトロニカだからと構えなくてもすんなりと聴けるポップな作品も多いなと感じました。そして今作最大のハイライトはダンスダンダンダっパンパンむぉんこと「WORLD'S END SUPERNOVA」が収録されていること。どこか達観したような詩世界に乗っかる煮え切らないビートが心地いい彼らの代表曲です。

<有名な収録曲>
「ワールドエンド・スーパーノヴァ」


4位 NIKKI

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「アンテナ」の陰に隠れがちですが、自分はこっちの方が好きです。くるり流ロックンロールにUKロックの要素が加わった作品で、派手さこそ感じられないもののそれがいい感じに作品をマイルドな空気感で包み、こうなったことで普段の作品でなら捨て曲扱いされそうな「お祭りわっしょい」なんかがアクセントとして効きまくっているんですよね。またくるりの作品の中でも素直な印象を受ける曲が多く、「虹色の天使」や「Superstar」などのストレートなメロディはどこまでも聴きやすく、そして「赤い電車」は楽し気なリフと相反するどこか寂し気なメロディなど、全アルバムの中でも繊細さという意味ではピカイチだと思う一枚です。

<有名な収録曲>
「赤い電車」


3位 ソングライン

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くるりの作品の中では最もリリース期間が開いた作品となったが、近年の代表曲「琥珀色の街、上海蟹の朝」を収録しなくてもこの満足感の高い作品が出来上がったことこそ彼らの近年のキャリアの充実具合がわかる気がします。4位の「NIKKI」同様ストレートかつ素直な曲が多く、ドライな質感のバンドサウンドにファンファンのトランペットが潤いの水の如く入っているのが印象的です。オープニングの「その線は水平線」の胸を打つ感じや、屈指のポップナンバー「忘れないように」、そしてプログレッシブで独創的な「Tokyo OP」などといった良曲揃いの一枚。

<有名な収録曲>
「その線は水平線」


2位 THE PIER

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岸田・佐藤・ファンファンの三人態勢になってから初めての作品で、くるりが10年代においてもクリエイティビティなバンドとしてのポジションを死守することが出来たのは間違いなくこの作品によるところが大きい。前作「坩堝の電圧」ではギミック的にしか使われていなかったファンファンのトランペットがより前面に出たこと、今までくるりが築き上げてきたサウンドの上澄みがワールドミュージック的な混雑さを見せる今作の音楽性とがっちりハマったことで、様々なサウンドが飛び交う楽しい一枚となっています。基本的に変なギミックだらけなんだけど不思議なことにどれもポップにまとまっていて、聴きやすさという観点においても好きな一枚です。

<有名な収録曲>
「Liberty & Gravity」


1位 TEAM ROCK

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や っ ぱ こ れ な ん よ

明らかにこの作品だけ名盤の佇まいと言いますか、醸し出す風格が違うわけなんですよ。これまでオルタナティブロックのアプローチを行っていたくるりが、大胆にもエレクトロニカを導入したことでくるり=クリエイティビティなバンドのイメージを確立した一枚なんですけど、個人的にはくるりの全作品の中で最も普遍性を持った作品という印象が強いです。特にこの作品以前の「図鑑」までなんかは岸田繁の内向的な世界観が色濃く反映されていることが一つの特徴だったんですけど、今作の楽曲はより普遍的なトピックを描くことに切り替わり、そして彼らなりにポジティブな見解を示したものが多いんですよね。言わずもがなそんな特性がより顕著なのが「ワンダーフォーゲル」と「ばらの花」という超名曲にして、00年代のロックシーンを代表する2曲なんですよね。ありふれたテーマ性と挑戦する姿勢が多くの人の心をつかんだという意味でも、このアルバムは1位になるべくしてなったという結論にたどり着きました。

<有名な収録曲>
「ばらの花」、「ワンダーフォーゲル」


いかがだったでしょうか。これはあくまでも一個人の作ったランキングで、くるりは多様な音楽性を作品ごとに展開してるんで、あなたの思い描く最強のランキングを作ってみてください(投げやり)

では今日はここらへんで


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