詩 _ 「春を迎えるとき」
冬と春の境目に立ち
遠くを見ている
その先にはきっと開き始めただろう扉
冬のなごりのひんやりとした空気のなか
新鮮な緑のにおいが過ぎてゆく
数センチほど開いたのだろう
やがて風に揺らされた花の気配が
ふんわりとやってくる
そうしたら溜め息をついてもいい
黄色い蝶が片付けてくれる
春の入り口にコートのすそをひっかけた冬が
ぼくらの憂いを抱えて
春の分量が増えたら扉を閉める
そのときにはもう目を凝らさなくても春が見えている
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