天文学者のひとり言

天文学者です。 キーワードは銀河、銀河中心核(超大質量ブラックホール)、ダークマター、…

天文学者のひとり言

天文学者です。 キーワードは銀河、銀河中心核(超大質量ブラックホール)、ダークマター、宇宙論です。 銀河の誕生と進化、そして超大質量ブラックホールの誕生と進化。 宇宙史の中でこれらの出来事がどのように起こったのか調べています。 趣味は読書と園芸です。

記事一覧

バルコニアン(9) バルコニアンが気をつけること

バルコニアンもなかなか大変ルーフ・バルコニーで園芸を楽しむ。それはバルコニアンの喜びです。ただし、いくつか注意すべきことがあります。それをまとめてみました(図1…

「宮沢賢治の宇宙」(51) イーハトーブへの旅で「天気輪の柱」の正体はわかったのか?

「天気輪の柱」を探して花巻と盛岡へ今回、一泊二日のタイトな日程で花巻と盛岡を訪れたのは、賢治の生まれ故郷、イーハトーブを久々に見て、賢治の見た光景を追体験したい…

「宮沢賢治の宇宙」(50) 「天気輪の柱」を探して盛岡へ ― 番外編 金沢で『津軽』

「天気輪の柱」を探して盛岡へ『銀河鉄道の夜』に出てくる「天気輪の柱」のモチーフになったと考えられるものが盛岡にある。清養院だというお寺には「お天気柱」と呼ばれて…

「宮沢賢治の宇宙」(49) 胡四王の北参道を駆け上り身体「どかどか」初恋の道

「天気輪の柱」の舞台は胡四王山「天気輪の柱」の舞台は胡四王山である。これが『note「宮沢賢治の宇宙」(48)「天気輪の柱」を探して花巻へ』の結論だった。 その根拠…

「宮沢賢治の宇宙」(48) 「天気輪の柱」を探して花巻へ

「天気輪の柱」を探して「天気輪の柱」を探して 『銀河鉄道の夜』に出てくる「天気輪の柱」。これはいったい何か? これまで、note「宮沢賢治の宇宙」でこの謎を話題にし…

「宮沢賢治の宇宙」(47) 「天気輪の柱」を探して盛岡へ

「天気輪の柱」を探して『銀河鉄道の夜』に出てくる「天気輪の柱」。これはいったい何か? これまで、note「宮沢賢治の宇宙」でこの謎を話題にしてきた。 「宮沢賢治の宇…

「宮沢賢治の宇宙」(46) 「天気輪の柱」を探して

「天気輪の柱」を探して『銀河鉄道の夜』に出てくる「天気輪の柱」。これはいったい何か? これまで、note「宮沢賢治の宇宙」でこの謎を話題にしてきた。 「宮沢賢治の宇…

天文俳句 (18)万葉の時代、なぜか星は歌に詠まれない!

万葉の時代の和歌『万葉集』に、星をうたった歌は大変少ない。 (『宇宙をうたう 天文学者が訪ねる歌びとの世界』海部宣男、中公新書、1999年、7頁) 私はこの文章に出会…

宮沢賢治の宇宙(45) 「ごそごそ」する土星の謎

「ごそごそ」する土星『春と修羅 第二集』に収められている賢治の詩「暁穹への嫉妬」には土星に関する面白い話が出てくる。この詩のタイトルにある「暁穹」は、明け方に見…

バルコニアン(8) 宮沢賢治に背中を押され、今度は「桔梗色」の空

花が少ないバルコニーに潤いを我が家のルーフ・バルコニーの庭には、花が少ないという特徴があるという話を前回のnoteでしました。そんなとき、宮沢賢治の童話『おきなぐさ…

バルコニアン(7) 宮沢賢治に背中を押され「うずのしゅげ」

花が少ないバルコニー我が家のルーフ・バルコニーの庭には、花が少ないという特徴があります。「つつじ」は春に美しい花を見せてくれますが、あとは「紅葉・楓」や「松」な…

バルコニアン(6) 万葉の時代の園芸はどうだった?

園芸好きの日本人マンションの大規模改修で大変でした。その後、少しずつですが、ルーフ・バルコニーの庭も復活しつつあります。 ガーデニングといえば、イングリッシュ・…

「宮沢賢治の宇宙」(44) 「天気輪の柱」は自然現象なのか?

天気輪の柱『銀河鉄道の夜』にはいろいろな謎があるが、その中でも“天気輪の柱”は最大級の謎とされる。問題はこの言葉の説明がほとんどないことだ。実際、『銀河鉄道の夜…

「宮沢賢治の宇宙」(43) 「天気輪の柱」の謎に挑む

天気輪の柱宮沢賢治の童話 『銀河鉄道の夜』にはいろいろな謎があるが、その中でも“天気輪の柱”は最大級の謎とされる。そもそも実在するものなのかどうかも分かっていな…

バルコニアン(5) 新たなルーフ・バルコニー庭園へ

バルコニアンに降りかかった試練前回の noteでは「バルコニアンに降りかかる試練」ということで、マンションの大規模改修のために、ルーフ・バルコニーの庭を一旦リセット…

バルコニアン(4) バルコニアンに降りかかる試練

「枯山水」は、さておいて前回までの noteでは「ルーフ・バルコニーでどんな園芸を楽しむか」を考えるヒントを紹介しました。その際、春を迎えて美しさを増してきた日本庭…

バルコニアン(9) バルコニアンが気をつけること

バルコニアン(9) バルコニアンが気をつけること

バルコニアンもなかなか大変ルーフ・バルコニーで園芸を楽しむ。それはバルコニアンの喜びです。ただし、いくつか注意すべきことがあります。それをまとめてみました(図1)。

重いものを持ち込まないnote「バルコニアン」(4)でお話ししたように、マンションの場合、約10年で大規模修繕が入ります。その場合、バルコニーを片付けないといけません。敷石やレンガなど、重いものをたくさん入れてしまうと、片付けがとて

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「宮沢賢治の宇宙」(51) イーハトーブへの旅で「天気輪の柱」の正体はわかったのか?

「宮沢賢治の宇宙」(51) イーハトーブへの旅で「天気輪の柱」の正体はわかったのか?

「天気輪の柱」を探して花巻と盛岡へ今回、一泊二日のタイトな日程で花巻と盛岡を訪れたのは、賢治の生まれ故郷、イーハトーブを久々に見て、賢治の見た光景を追体験したいと思ったからだ。もちろん、賢治の生きていた時代は今から百年も前のこと。同じ風景を見ることができるとは思わない。しかし、何かしら感じ取れることはある。それを期待しての旅だった。

『銀河鉄道の夜』に出てくる「天気輪の柱」のモチーフになったと考

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「宮沢賢治の宇宙」(50) 「天気輪の柱」を探して盛岡へ ― 番外編 金沢で『津軽』

「宮沢賢治の宇宙」(50) 「天気輪の柱」を探して盛岡へ ― 番外編 金沢で『津軽』

「天気輪の柱」を探して盛岡へ『銀河鉄道の夜』に出てくる「天気輪の柱」のモチーフになったと考えられるものが盛岡にある。清養院だというお寺には「お天気柱」と呼ばれていた「後生塔」がある(図1)。

「後生塔」は津軽にもある清養院の「後生塔」については萩原昌好による詳しい解説がある(「天気輪の柱―小沢俊郎氏の説を承けて」萩原昌好『宮沢賢治』1 創刊号、洋々社、1981年、59-71頁;図2)。

この解

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「宮沢賢治の宇宙」(49) 胡四王の北参道を駆け上り身体「どかどか」初恋の道

「宮沢賢治の宇宙」(49) 胡四王の北参道を駆け上り身体「どかどか」初恋の道

「天気輪の柱」の舞台は胡四王山「天気輪の柱」の舞台は胡四王山である。これが『note「宮沢賢治の宇宙」(48)「天気輪の柱」を探して花巻へ』の結論だった。

その根拠となったのが『宮沢賢治の詩の世界 ー 胡四王山』に出ていた次の文章である。

花巻の街からは、見通しさえよければ、だいたいどこからでもこの山の姿を見ることができます。山頂にある数本の大きな杉の木が、まるで「トサカ」のように立っていて、

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「宮沢賢治の宇宙」(48) 「天気輪の柱」を探して花巻へ

「宮沢賢治の宇宙」(48) 「天気輪の柱」を探して花巻へ

「天気輪の柱」を探して「天気輪の柱」を探して

『銀河鉄道の夜』に出てくる「天気輪の柱」。これはいったい何か? これまで、note「宮沢賢治の宇宙」でこの謎を話題にしてきた。

「宮沢賢治の宇宙」(41)「天気輪の柱」はどこにある?
「宮沢賢治の宇宙」(43)「天気輪の柱」の謎に挑む
「宮沢賢治の宇宙」(44)「天気輪の柱」は自然現象なのか?
「宮沢賢治の宇宙」(46)「天気輪の柱」を探して
「宮

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「宮沢賢治の宇宙」(47) 「天気輪の柱」を探して盛岡へ

「宮沢賢治の宇宙」(47) 「天気輪の柱」を探して盛岡へ

「天気輪の柱」を探して『銀河鉄道の夜』に出てくる「天気輪の柱」。これはいったい何か? これまで、note「宮沢賢治の宇宙」でこの謎を話題にしてきた。

「宮沢賢治の宇宙」(41)「天気輪の柱」はどこにある?
「宮沢賢治の宇宙」(43)「天気輪の柱」の謎に挑む
「宮沢賢治の宇宙」(44)「天気輪の柱」は自然現象なのか?
「宮沢賢治の宇宙」(46)「天気輪の柱」を探して

第46話でお話ししたように、

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「宮沢賢治の宇宙」(46) 「天気輪の柱」を探して

「宮沢賢治の宇宙」(46) 「天気輪の柱」を探して

「天気輪の柱」を探して『銀河鉄道の夜』に出てくる「天気輪の柱」。これはいったい何か? これまで、note「宮沢賢治の宇宙」でこの謎を話題にしてきた。

「宮沢賢治の宇宙」(41)「天気輪の柱」はどこにある?
「宮沢賢治の宇宙」(43)「天気輪の柱」の謎に挑む
「宮沢賢治の宇宙」(44)「天気輪の柱」は自然現象なのか?

いろいろ候補を考えることはできる。しかし、なかなか納得できる候補に至ることは難

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天文俳句 (18)万葉の時代、なぜか星は歌に詠まれない!

天文俳句 (18)万葉の時代、なぜか星は歌に詠まれない!

万葉の時代の和歌『万葉集』に、星をうたった歌は大変少ない。 (『宇宙をうたう 天文学者が訪ねる歌びとの世界』海部宣男、中公新書、1999年、7頁)

私はこの文章に出会って大変驚いた。万葉の時代、星空は現代に比べて圧倒的に綺麗に見えたはずだ。何しろ、街灯がひとつもない時代だ。それなのに、星を歌わないとは! なんということだろう。

最近、『古代万葉の歳時記』(東茂美、海鳥社、2021年)という興味

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宮沢賢治の宇宙(45) 「ごそごそ」する土星の謎

宮沢賢治の宇宙(45) 「ごそごそ」する土星の謎

「ごそごそ」する土星『春と修羅 第二集』に収められている賢治の詩「暁穹への嫉妬」には土星に関する面白い話が出てくる。この詩のタイトルにある「暁穹」は、明け方に見える暁(あかつき)の空のことだ。

まず、賢治は土星のことを「清麗なサファイア風の惑星」と称している。暁穹が徐々に明るさを増し、賢治の好きな土星を見えにくくなっていく。そこで、賢治は暁穹に嫉妬する心象を語る。

草刈りをしている人(近くにい

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バルコニアン(8) 宮沢賢治に背中を押され、今度は「桔梗色」の空

バルコニアン(8) 宮沢賢治に背中を押され、今度は「桔梗色」の空

花が少ないバルコニーに潤いを我が家のルーフ・バルコニーの庭には、花が少ないという特徴があるという話を前回のnoteでしました。そんなとき、宮沢賢治の童話『おきなぐさ』を読み、オキナグサという花に巡り会いました。まったく知らなかった花でしたが、園芸店で見つけ、買うことができました。花が終わりしばらくすると、花のあった部分には白く長い髭状の構造が残りました。

「なるほど、これが「うずのしゅげ」か!」

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バルコニアン(7) 宮沢賢治に背中を押され「うずのしゅげ」

バルコニアン(7) 宮沢賢治に背中を押され「うずのしゅげ」

花が少ないバルコニー我が家のルーフ・バルコニーの庭には、花が少ないという特徴があります。「つつじ」は春に美しい花を見せてくれますが、あとは「紅葉・楓」や「松」などの樹木が多いので、花とは無縁です。一時期、冬場はパンジー・ビオラの寄せ植えを作ったりしていましたが、今はしていません。特に意識しているわけではないのですが、なぜか花が少ないということです。

宮沢賢治の童話『おきなぐさ』ところが、ある時期

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バルコニアン(6) 万葉の時代の園芸はどうだった?

バルコニアン(6) 万葉の時代の園芸はどうだった?

園芸好きの日本人マンションの大規模改修で大変でした。その後、少しずつですが、ルーフ・バルコニーの庭も復活しつつあります。

ガーデニングといえば、イングリッシュ・ガーデンが思い浮か日ます。しかし、日本人もかなりの園芸好きな国民ではないでしょうか。

たとえば、江戸時代なら「あさがお」や「ほおずき」を売る市がたち、多くの庶民が買い求めたといいます。もうだいぶ前のことですが、私の町でも、「あさがお」市

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「宮沢賢治の宇宙」(44) 「天気輪の柱」は自然現象なのか?

「宮沢賢治の宇宙」(44) 「天気輪の柱」は自然現象なのか?

天気輪の柱『銀河鉄道の夜』にはいろいろな謎があるが、その中でも“天気輪の柱”は最大級の謎とされる。問題はこの言葉の説明がほとんどないことだ。実際、『銀河鉄道の夜』に出てくる記述はわずか二つである(図1)。

説明不足のため、天気輪の柱については、賢治研究者はさまざまな説を提案してきている。個別に紹介するのは大変なので、ここでは主として次の三つの文献に準拠して行う。

1. 中地文「天気輪の柱」『國

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「宮沢賢治の宇宙」(43) 「天気輪の柱」の謎に挑む

「宮沢賢治の宇宙」(43) 「天気輪の柱」の謎に挑む

天気輪の柱宮沢賢治の童話 『銀河鉄道の夜』にはいろいろな謎があるが、その中でも“天気輪の柱”は最大級の謎とされる。そもそも実在するものなのかどうかも分かっていない。実際、原子朗の『定本 宮澤賢治語彙辞典』を紐解いてみると、まずこう書かれている。

おそらくは賢治の造語。賢治の描写が具体性を欠くため諸説ある。 (496頁)

そして、もう一言。

天気輪の柱の設定は実に巧妙で、この童話の要の役割を果

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バルコニアン(5) 新たなルーフ・バルコニー庭園へ

バルコニアン(5) 新たなルーフ・バルコニー庭園へ

バルコニアンに降りかかった試練前回の noteでは「バルコニアンに降りかかる試練」ということで、マンションの大規模改修のために、ルーフ・バルコニーの庭を一旦リセットする話をしました。

バルコニAは和風庭園にしたかったので、大理石の飛び石や玉砂利、レンガを敷き詰めて庭をレイアウトしました。「枯山水」とまではいかなくとも、それなりの雰囲気は出るものです。

植物はバルコニーなので鉢植えを並べることに

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バルコニアン(4) バルコニアンに降りかかる試練

バルコニアン(4) バルコニアンに降りかかる試練

「枯山水」は、さておいて前回までの noteでは「ルーフ・バルコニーでどんな園芸を楽しむか」を考えるヒントを紹介しました。その際、春を迎えて美しさを増してきた日本庭園の紹介も行いました。

庭園を散歩しながら思うことは、「無理せず楽しむ」ことが大切なんだろうということです。「枯山水」はもとより、粋な和風庭園を園芸素人の私が簡単に作れるようなものではありません。

「千里の道も一歩から」これを座右の

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