アラブとイスラエル サルトルのインタビュー2

サルトルのシチュアシオン8巻にはアラブとイスラエルについてのインタビュー2つ収められており、今日は2件目。A. シュヴァルツとのインタビューである。1969年10月25日 pp254

・イスラエルとアラブの紛争においては、まさしくどちらの側にも全面的な真理はなく、どちらの側の立場も完全に理解されうるものなのです。
・それはイスラエルが、現在のところアメリカ在住ユダヤ人の援助を必要としていることです。
・当初からイギリスの策謀がアラブ諸国をしてイスラエルに対して否定的な態度を取らざるをえなくさせたのだということです。
・イスラエルは、まず社会主義的領域に、市場経済に、だんだんと多くの力をそそぐようになっています。
・(A.シュワルツ)中近東における少数民族の問題は賞められたものではありません。トルコ人によるアルメニア人の迫害、イラクによるクルド人、シリアによるドルード人、エジプトによるヌビア人、スーダンによる南部黒人たちの迫害・・・
・少数派の虐殺や個人の自由の抑圧という手段を用いると、ただちに目的も変質してしまいます。スターリニスムから出発して、社会主義に到達することは不可能です。
・わたしは一日一杯のお茶で暮らしている小村の農民と、それより少し豊かかもしれませんが政治的権利を奪われているコプト教徒との間に違いがあるとは思いません。ただ、中近東では、少数民族の問題はしばしば大量虐殺によって解決されるということはありますが。。。。
・イスラエルのアラブ人たちは石工以上の身分にはなれなかったし、・・・
彼らはユダヤ人であって、迫害されたのだから、永久迫害という一種の遺産を持っていて、それによって偉大な価値を有しているのだと考えるのか、ということです。
ソ連はアラブ諸国に武器を供給してそそのかしたのですが、それもアラブ諸国が勝つためにではなく、敗北するためであったのです。その結果、アラブ諸国は敗北したので、現在ソ連の手中にあるわけです。
・このような戦略から、地球のほとんどあらゆる場所に、紛争地点を維持しておこうという意志が出てくるのです。・・・全く犯罪的・・・
・アラブとイスラエル両国民の平等が必要です。
・イスラエルの主権とは、すべてのイスラエル人が、欲するならばイスラエルに帰り、イスラエル国民になることができるという権利です。

引用ここまで。

この時代、ソビエトは優良な共産国ではなくスターリニズムによって大殺戮が行われたことが明らかになってきてマルクス主義とスターリニズムについて議論が行われていた。マルクス主義が凋落し始めたころだろう。それに変わるかのように中国の文化大革命が称揚されフランスにも毛派と言われる一派が活躍していた。また、フランスはアルジェリア、ベトナムの植民地の問題を抱えていた。
 そのような状況での実存主義、弁証法的理性批判であり、それに対してのレヴィ=ストロースからの回答があった。
 ボーヴォワールが「別れの儀式」p141で「現代」誌の発案でイスラエル・パレスチナ問題シンポジウムのために1979年3月フーコーがサルトルにアパルトマンを貸したことが書かれている。Dエリボンはフーコーの伝記の中でボーヴォワールを引用している(ミシェル・フーコー伝、新潮社、p380上)。この頃になるとエドワード・サイードも絡んできている。内容は未確認であるがボーヴォワールもサイードも「ひどい失敗」と。
 なので、少なくとサルトルやフーコーにとっての思想とは現実の問題を論じるためのコアの思想であって、思想のための思想ではなかったと考えられる。
 サルトルにとってのアラブーイスラエルについてまとめた本を探していないし、フーコーのイランについても意外とまとまった本はないが(思考集成くらいか)、また入手したらレポートします。


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