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親が性についての子供たちと話すためのヒントfromオーストラリア

日本の性教育が足踏みしている内に、我が家での性教育を考えよう。

東京都で「性交」「避妊」を教えた中学校の性教育が「不適切」と都議会で指摘を受け、東京都教育委員会では、「課題があった」とし、学習指導要領を越える性教育は、たとえば保護者全員に説明し、許可を得た生徒にのみ個別指導で行うのがよいという発表がされました。

一方、一般市民の90%以上が中学校段階での「性交」・「避妊」を扱う性教育に賛同しているようです。中学生となれば、とっくに性情報にふれているし、だからこそ正確な知識や自分・相手を傷つけないことを学ぶことが大切、と、大多数の人が至極全うな考えをもっているようで安心しました。

そして、オンライン署名サイトChange.orgでも署名キャンペーンを展開していますので、ぜひご賛同いただけると嬉しいです!

一方、反対する意見の人を覗いてみて多かったのは、「家庭で性教育を行うべき」というもの。

しかし、内閣府の調査では、家庭で性教育をおこなっているのは、わずか23%。それも、月経の手当などが中心の内容で、セックスや避妊、交際や関係性をどうとらえるか、ということを触れるには至っていないようです。(参考:日本の中学校における性教育の現状と課題(橋本ら)より)

すべての子どもに性の学習機会が保障されるためには学校の役割が極めて重要であるとユネスコの『国際セクシュアリティ教育ガイダンス』でも示されています。

しかし、このような現状を見ていると、教育が変わるのを待っている内に今は幼い子どももとっくに成人してしまうかもしれません。保護者も、どんな性教育が子ども・若者を性的なリスクから守るために効果的か、というのをもっと知りたいはず。

ということで、今回、西オーストラリア州の保健省が作成・頒布している親向けの性教育教材を紹介します!『教科書にみる世界の性教育』にて紹介をされていました。

↓こちら、全文無料で閲覧いただけます。

「すぐ話そう、たくさん話そう」というタイトル

この教材は、西オーストラリア州健康省の委託でラ・トローブ大学のオーストラリア性・健康・社会研究センターが研究に基づき作成しているもの。分かりやすく、具体的な表現がされ、かつユーモラスなイラストや写真も豊富に使われています。2015年に親や家族を支援するガイドブックとして、西オーストラリア州だけではなく、他の州でも広く活用されているそうです。

「Talk soon. Talk often.」というタイトルで、「すぐ話そう、たくさん話そう」ということ。

日本でも親向けの性教育本が出ていますが、(拙著『マンガでわかるオトコのコの「性」』含め!笑)科学・人権に基づく正しい知識や情報は掲載されているものの、親から子どもに「どのように伝えるか」「どこから始めるか」というところまで掘り下げているものは少ないように思います。書いてあっても、「それ、著者の持論じゃね?」と根拠に乏しいと、なかなか性について踏み出す一歩につながらないこともあるかもしれません。

そこで、自治体や大学の研究機関がエビデンスに基づいて発信している情報なら、信頼がおけるのでは?ということで、全文79Pは無料で読めるものの、英文になるため、ダイジェスト版のTip Sheetのみ訳してみました。

(そしてもし違うところがあったら教えてください。)

Tips for parents talking to their kids about sex
親が性についての子供たちと話すためのヒント

1. Talk soon. Talk often. Listen too.
すぐ話そう、たくさん話そう。そして、聞くことも同様に。

2. Offer lots of little conversations over time from toddlerhood to teenhood, not one ‘big talk’.
幼児期から若者に至るまで、ひとつの「大きな話」ではなく、小さな会話をたくさん提供しましょう。

3. Start talking about bodies when your child is an infant, and use the correct names for body parts: penis, testes, scrotum, vulva, vagina, breasts.
子供が幼児のときから、身体の部分を正しい名前を使用して、身体について話すことから始めましょう。たとえば、陰茎、精巣、陰嚢、女性の外性器、膣、胸などです。

4. Sexual health is not just about having sex, it’s bodies, babies, growing up, being a girl, being a boy, love, sexual expression, feelings, personal values, decisions and relationships.
性の健康は、セックスをすることだけではなく、身体、赤ちゃん、成長、女の子になること、男の子になること、愛情、性的表現、気持ち、個人的価値観、意思決定および人間関係を示します。

FACT: Puberty can start at 8 (mostly at 10 or 11), and can continue until 18 (but can be later).
事実:思春期は8歳から始まり(ほとんど10歳または11歳)、18歳まで続くことがあります。(しかし、もっと遅くなることもあります。)

5. Do not just wait for your children to ask questions.
あなたの子供たちが質問をするのを待っているだけではいけません。

6. Take advantage of teachable moments. Use prompts from TV, magazines, experiences with friends, music and the Internet to start conversations and ‘hypotheticals’.
教えることができる瞬間を逃さずに。テレビ、雑誌、友人との経験、音楽、インターネットからのせりふを使って会話や「仮説」を立てるところから始めてみましょう。

7. Answer questions honestly and simply. Just a little bit of information is OK because you can always come back to it (and you should).
質問には、正直かつ簡単に答えましょう。ほんの少しの情報提供はOKです。いつでも質問に立ち戻れるように。(そしてそうすべきなのです。)

8. Good communication needs two-way talk, not one-way lectures
良好なコミュニケーションには一方向の講義ではなく、双方向の会話が必要です。

FACT: By the end of high school, about 50% of young people have had sex. And 50% have not had sex.
事実:高校の終わりまでに、約50%の若者がセックスをしていて、50%はしていません。

9. Be a ‘tellable’ parent — make yourself available, unshockable and listen.
「話すことができる」親でありましょう- あなた自身が、動じず、聞く姿勢をもち、いつでも話せるようにしておきましょう。

10. It’s never too late to start. If you are feeling self-conscious, avoid eye-contact and start a conversation when you’re in the car or doing the dishes.
始めるのが遅すぎることはありません。あなたが恥ずかしさを感じる時は、目をあわせるのは避け、車に乗っているときやお皿を洗っているときに会話を始めましょう。

11. Don’t assume every child is heterosexual: about 10% of the population will be same-sex attracted.
すべての子供が異性愛者であると仮定しないでください。人口の約10%が同性に惹かれるとわかっています。

12. If you don’t know how to respond to a question it is OK to say so. Say something like, ‘That’s a good question. I don’t know how to answer it. I’ll find out and get back to you,’ or ‘We can find out together’.
質問への返答方法が分からない場合は、そう言っても問題ありません。 「良い質問だね。どう答えていいか分からないから、調べてから伝えるね」、あるいは「一緒に調べてみよう」などと言ってみましょう。

Research shows: children who talk about sexuality with their parents start having sex later.
研究では、親と性について話す子供たちは、セックスデビューが遅れることが分かっています。

13. Continue to show your child affection even when they are going through puberty. Regular hugs can communicate a lot.
子供が思春期の最中でも、愛情を示し続けましょう。普段から抱きしめることでたくさんのことを伝えることができます。

14. Find out when and what your child is learning at school about sexual health so you can be prepared.
あなたの子供が性の健康について学校でいつ、何を学んでいるのかを調べることは、準備の参考になります。

15. Let your kids know about using condoms even if you disapprove of them having sex.
もしあなたの子どもがセックスすることについて反対でも、子どもにはコンドームの使用について知らせましょう。

16. Leave age-appropriate brochures and books with accurate information on sexuality around for your children to read.
性に関する正確な情報が掲載された、子どもの年齢に見合ったパンフレットや書籍を手の届くところにおいておきましょう。

という感じでしょうか?

保護者向けの性教育講演で、「性についていつ話せばいいですか?」と質問がよく来るのですが、おそらくこの教材もそれを踏まえたタイトル付けだと思います。

「すぐ話そう、たくさん話そう」です。 一度一方的に話して終わりってものではなく、性について話し合える関係性を作ることが大切だと私も思います。で、「セックスするな」と伝えること、もしくは何も伝えないことよりも、性について話すことが、子どもの性行動を慎重化させる、ということが研究でもわかっているということです。

そして本文には、どんな会話から始めるか(「ここ5年であなたはどう変わったと思う?」からの「何歳になればセックスする準備ができると思う?あなたはどう決める?」とか「何歳になれば親になる準備ができると思う?」)も載っているので、またこちらも紹介できればと!

いかがでしたか?また世界の性教育の参考情報もお届けできればと思います!


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